日本では既に2011年7月に終了することが決定している地上アナログ放送だが、このたび韓国でも2012年いっぱいで終了することが決定し、その旨が発表された。


2012年いっぱいでアナログ放送が終了

韓国政府の情報通信部は、2012年12月31日以前に地上波アナログテレビ放送を終了する旨を盛り込んだ「地上波テレビジョン放送のデジタル転換とデジタル放送の活性化に関する特別法(案)」(以下、特別法案)を審議、確定したと発表した。

特別法案には、6つの主要内容が盛り込まれている。

  1. 地上波テレビジョン放送事業者は、アナログ放送を2012年12月31日以前の範囲で、大統領命令により決定する日まで終了すること。
  2. テレビジョン受像機および関連電子製品には、デジタル放送受信装置(チューナー)を内蔵すること。
  3. テレビジョン受像機および関連電子製品には、アナログ放送終了日とデジタル放送受信可能有無について案内文を付着すること。
  4. 国民基礎生活保障法に基づいた受給権者など、低所得層がテレビジョン放送サービスを円滑に受けられるよう対応策を用意すること。
  5. 地上波放送事業者のデジタル転換による費用負担を考慮し、テレビジョン放送受信料の調整や放送広告制度改善等、支援方案を用意し国会など関連機関に建議すること。
  6. 視聴が困難な地域を解消するため、デジタル放送受信環境改善方案を用意し施行すること。

つまり、アナログ放送は遅くとも2012年末までに終了し、テレビなどの受像機器にはデジタル放送用のチューナーを内蔵したり、デジタル放送受信の可否を知らせる案内文をつけたりする。低所得者層や視聴が困難な場所に住む人など、幅広い層がデジタル放送を楽しめるよう環境改善に努める。一方で放送局のためには広告制度や受信料制度などを検討し、負担を減らす対策を用意するという内容だ。

またテレビにチューナーを内蔵する時期についても、これを義務化する時期が画面の大きさ別に決定している。

韓国における、デジタル放送用チューナーの内蔵義務化時期

この特別法案が国会で確定さえすれば、デジタル放送への転換作業が急速に進むと見られている。情報通信部ではこの特別法案が、2007年以内に国会で確定することを目標としている。


遅れをとったデジタル放送転換

韓国におけるデジタル放送への転換は、諸外国に比べて一歩遅れている。情報通信部の資料によると、2006年12月時点での韓国のデジタル放送用テレビの普及台数は442万台、普及率は24.4%だ。

普及台数は情報通信部が当初予想していた数値(915万台)と比べると、半分以下という不本意な結果になっている。また普及率を同時期の他国と比べて見ると、英国が77.2%、米国が60.1%、日本が51.5%(いずれも情報通信部の資料による)ということで、韓国以外の3国で比べた場合では最下位の日本にも、2倍以上の差をつけられている。

韓国のデジタル放送用テレビの普及率(情報通信部提供の資料による)

この理由は、韓国がデジタル放送への転換を開始した時期が世界の中でも遅い方だったから、というわけでは決してない。韓国は2001年10月にデジタル放送への転換を開始している。これは1998年9月に開始した英国や、同11月に開始した米国には遅れをとっているものの、2003年12月に開始した日本と比べれば2年近く早い計算となる。

各国のデジタル放送開始およびアナログ放送終了時期(情報通信部提供の資料による)。 ※英国の場合は、デジタル放送用テレビの普及率や周辺国家の電波干渉を考慮し、アナログ放送の終了を地域別に順次行っていく予定

韓国でデジタル放送への転換が遅れているのは「放送局の投資不振やデジタルテレビジョン受像機の普及が低調だった」(情報通信部)ことが大きな理由となっているようだ。

そこで情報通信部と、放送関連政策などを管理する国家機関の放送委員会は2006年8月、円滑なデジタル放送への転換のため覚書を締結。これにより市民団体や学会、放送局、メーカー、政府関連部署などから19人が選出され「デジタル放送活性化委員会」を結成した。この同委員会が8カ月の間、12回にわたる話し合いやワークショップなどを持つことで、今回の特別法案が確定したというわけだ。

デジタル放送が開始されれば、視聴者は画質、音質の改善、双方向サービスなどの恩恵を受けられるだけではなく、「関連産業にも波及効果が見込める」(情報通信部)として期待が膨らむ。デジタル放送の本格的な開始により、遅れ気味だった端末供給やサービス開発が急速に進むものと見られる。