次世代グリッドストレージ「iStorage HS8」

NECは、次世代グリッドストレージ「iStorage HSシリーズ」を発売した。11月に出荷を開始する。無停止で、容量/性能を自由に拡張できる「自動最適構成」、容量効率を大幅に向上させ低コスト化を推進する「重複排除」、高信頼性、耐同時障害性を実現する「分散冗長配置」の採用により、テープドライブ並みの価格で、ディスクと同等の性能を実現している。新製品は、9月にまず米国で出荷を始め、順次、欧州、アジア/太平洋州でも販売に着手するなど、世界的な展開を図る。同社はこの新シリーズを含めたストレージ事業の売り上げを、今後3年間で1,500億円にすることを目指す。

今回の製品は、同社が開発した次世代グリッドストレージ「HYDRAstor(北米での製品名)」を基盤としている。グリッドストレージは、グリッド技術により複数のノードをメッシュ状に連結する。ノードは、データを保管する「ストレージノード」と、Gigabit Ethernetを使用して通信処理をする「アクセラレータノード」から構成される。

「アクセラレータノード」はバックアップサーバと接続され、スループット性能は100MB/秒で、プロトコルはNFS、CIFS。キャッシュ容量は4GBだ。性能を向上させたいときは、これを追加する。「ストレージノード」は、SATA 500GBのディスクを搭載、論理容量は非圧縮時で1.7TB、20倍圧縮時で34TB、キャッシュ容量は6GBだ。容量を拡張させたい場合、これを追加する。

赤で囲んだ部分が「アクセラレータノード」、オレンジの部分には、保守用のパソコンが収められる。青の部分は「ストレージノード」で、黄の部分は内部LANスイッチ

今回の「iStorage HS8」の基本構成は、「アクセラレータノード」が2基、「ストレージノード」が4基で、バックアップデータ転送性能は200MB/秒で、論理容量は非圧縮時で6.8TB、20倍圧縮時には136TBだ。最大構成では、バックアップデータ転送性能は5.4GB/秒、「アクセラレータノード」は160基、「ストレージノード」は162基、論理容量は非圧縮時で224TB、20倍圧縮時で4.5PB(ペタバイト)となる。ノード間は、内部のLANスイッチにより、独自プロトコルで結ばれる。

これらのノードは仮想のストレージプールに統合され、単一のストレージとして利用できる。「iStorage HS8」は、このような構造を背景に、自律分散システムとして、常に最適構成で動作する。複数に分散配置された記憶域を仮想化し、これも単一のストレージプールとして捕捉される。また、データの格納方法、データの保護レベル、保存期限のポリシーを設定することができ、データは、これに準拠して自律的に運用することが可能となる。追加されるノードは自動認識され、負荷分散、データ再配置を自動実行、システムを止めずに、ノードの追加/削除ができる。

圧縮の点では「DataRedux技術」を採用、データを一定のブロックに分割して、バックアップデータから重複するデータを検出し、重複しないデータだけを圧縮/格納するため、ストレージの格納容量を効率的に利用することが可能となる。北米では、すでにベータ版製品が実運用環境で稼動しており、格納容量は1/20 - 1/50にまで抑えることができたという。NECコンピュータソフトウェア事業本部長の山元正人氏は「データ圧縮の技術により、従来のテープ並みのコストで、ディスク級の効果が得られる」と話す。また、ディスクベースの利点として、バックアップリストア時間の短縮も実現した。

また、信頼性をさらに高くするため「Distributed Resilient技術」を導入している。これは、重複を排除したことにより、障害発生時のデータ消失の影響する範囲は逆に拡大してしまうため、バックアップデータを複数に分割し、データに冗長用コードを付加、複数のノードに分割保管するとの手法を用い、データ保全性を高めるための策だ。この技術により、複数の保管場所で障害が起こってもデータ復元ができるという。2008年第2四半期には、レプリケーション機能にも対応する予定だ。

NEC執行役員常務の丸山好一氏は「最近、ストレージをとりまく課題は3つある。インターネットが社会インフラになるとともに、企業が新たなビジネスモデルを展開する際にも基盤となることから、デジタルデータが急増、保管のための容量も膨大になっている。また企業は、グローバルに活動するようになり、24時間365日、システムをとめられない。さらには、内部統制が求められ、暦年データの保存と、過去にさかのぼったデータのトレースも必要になる。ストレージの問題は、企業の経営課題に直結するような要因になっている」と指摘、「iStorage HSシリーズ」は、企業の抱えるこのような課題への解決策と位置づけられている。

NECコンピュータソフトウェア事業本部長の山元正人氏

NEC執行役員常務の丸山好一氏

同社では、ストレージ事業については、全世界の市場を射程に入れている。「保管データストレージの領域の世界市場の規模は、2010年で86億ドルほどになるとの予想がある」(丸山常務)が、同社では「2010年頃、この市場の10%くらいを獲得することを目標としていく」(同)意向だ。