NEC、NECパーソナルプロダクツおよび日立製作所は30日、デスクトップPC向けの新水冷システムを共同開発したことを発表した。同システムの最大の特徴は、CPUとHDDの両方を冷却する「マルチヒートソース冷却」の採用により、最大稼働時においても25db程度までの静音化を実現していること。「AV機器並み」(ECパーソナルプロダクツ PC事業本部 開発生産事業部 統括マネージャ 小野寺忠司氏)の高音質を実現するという同システムは、さっそくNECの年末個人向け製品(一体型)に採用される予定だという。

最近の個人向けデスクトップPCは、ほとんどにDVDやテレビ機能が搭載されており、中には「テレビ機能付きのパソコン」ではなく、「パソコン機能付きのテレビ」として利用しているユーザも多い。小野寺氏は、「お客様のPC利用スタイルが変化するに従って、PCにもAV並みの静音性が要求されるようになっている。すでに静音化の比較対象は他のPCではなく家電に移っている」とし、今回実現した「25db」という高い静音性は、「両社の技術者が、DVDレコーダーなどのAV機器の駆動音を参考に、新システム搭載PCの騒音レベルターゲットを設定、開発した」という。なお、従来の一般的な水冷システム搭載PCの静音レベルは30db程度(ささやき声程度)で、聞き比べるとはっきりと違いがわかる。

NECと日立が共同開発した新水冷システム。ユニットの重量は約2kg(HDDは含まない)

マルチヒートソース冷却

新水冷システムでは、日立が開発した第4世代水冷技術「CPU水冷ジャケット」「HDD水冷ジャケット」が採用されている。

CPU水冷ジャケットは、冷却水の水路となるギャップ(微細な溝)幅がわずか0.09mmというマイクロチャネルが採用されている。また、CPUダイサイズを考慮した「ピンポイント冷却方式」、冷却水が流れる際の抵抗が少ない(低流路抵抗)「ダウンフロー方式」が新たに設計され、従来品に比べ約2倍以上の受熱効率を実現しているという。

日立の第4世代水冷技術のひとつである「ギャップ0.09mmのマイクロチャネル」。髪の毛とほぼ同じ太さだという。第3世代のマイクロチャネルはギャップ0.15mmだった。このギャップ内を冷却水(不凍液が流れることでCPUが冷却される。ギャップが細ければ細いほど冷却効果は高くなる)

CPU水冷ジャケット。真ん中の出っ張っている部分がフィンの頂点にある入り口ポートで、ここに冷却水が流れ込む(ダウンフロー方式)。ケース内にはゲルシートが敷かれている

HDD水冷ジャケットのPCへの採用は「世界初」(日立)の試み。インナーフィン付き水冷ジャケットでHDDを冷却し、さらに全体を断熱効果の高い吸音材で包み込むことによってHDD稼働音を大幅に低減している(遮音BOX)。

こちらも日立の第4世代水冷技術「HDD水冷ジャケット」。右側の網状の部分がインナーフィン。高さは4mmで、冷却能力は15 - 30wだという

HDDの上にジャケットとサーマルシートを重ね、さらに遮音BOXでくるむことで、10db以上の低減に成功したいう。「一般的な家庭用DVDレコーダー以上に静かなAVパソコンが実現可能になった」(NEC)

その他、ラジエータ、マイクロポンプなどにも高性能な吸音材が使われており、水冷システム全体の駆動音も低減することに成功している。

NECは年末商戦に向けて、次期個人向けデスクトップPCに同水冷システムを採用する予定だという。また、両社は「静音PCブランドの構築」(NEC)、「静かな高性能の実現」(日立)を目標に、今後も協力して水冷システムを開発していく予定。ノートPCやサーバ製品など、デスクトップPC以外にも適用を拡げていきたいという。