ソニーは2007年度第1四半期の連結決算を発表した。売上高は対前年同期比13.3%増の1兆9,765億円、営業利益は同3.67倍の993億円、税引前利益は同55%増の838億円、当期純利益は同2.05倍の665億円の増収増益で、売上高、営業利益とも、第1四半期としては過去最高となった。主軸のエレクトロニクス部門はデジタルカメラ/ビデオカメラが好調に推移するなど営業利益が前年同期に比べ77.3%増加しており、全体の牽引車になっているが、課題である液晶テレビは増収だったものの、価格下落のあおりを受け減益、一方、PS3が苦戦しているゲーム部門は赤字幅が拡大した。

エレクトロニクス部門の売上高は同11.6%増の1兆4,293億円、営業利益は同77.3%増の841億円だった。増収に貢献したのは、全地域で販売が好調であったデジタルカメラ「サイバーショット」、海外での売り上げ台数を伸ばした液晶テレビの「BRAVIA」、ビデオカメラ「ハンディーカム」。減収要因となったのは、市場自体が縮小してきている、液晶リアプロジェクションテレビ、ブラウン管テレビだ。増益の推進力となったのは、「サイバーショット」、PS3向けの半導体売り上げが実績を向上させたシステムLSI、「ハンディーカム」など。

エレクトロニクスの営業利益は77.3%の伸び

ソニー 執行役EVP兼CFOの大根田伸行

同社のエレクトロニクス分野復活の鍵を握るテレビ事業は、売上高が同10%減の2,350億円、営業損益は390億円の赤字で、前年同期と比べ280億円悪化した。中核である液晶テレビは売り上げが2割伸び、2,000億円だったが、価格の低落傾向の荒波には抗えなかった。大根田伸行執行役EVP兼CFOは「年間での値下がり幅は、大型で25-30%、小型で20-25%とみていたが、想定以上に落ちたのは欧州だ。5-6%あるいは7-8%程度、予想より早めに下がった。通年ではわからないが、第1四半期は特に欧州での下落が大きかった」と話す。また、液晶テレビは「(この四半期は)競争力のある製品ラインアップではなかった競合他社は、フルHD(High Definition)を前面に据えたラインアップで、ソニーは若干遅れており、価格を下げないと戦えなかった。夏以降には、フルHDの製品を出すので、下期には液晶テレビは十分戦える」(大根田執行役)とみている。

エレクトロニクスの営業利益は77.3%の伸び

大根田氏は目標としているテレビ事業の黒字化について「けっこう厳しい」との見解を示した。その背景として「第1四半期が厳しい状況で、秋以降に出す、競争力のある製品ラインアップが、下期にどれだけリカバリーできるかにかかっている」としている。ただ「液晶テレビは年間で黒字」と見込んでいる。

苦戦続くPS3、国内値下げは不透明

ゲーム部門は、売上高は同60.5%増の1,966億円、営業損益は292億円の損失で、赤字幅は対前年同期比で24億円拡大した。2006年度下半期に投入したPS3はこの分野の売り上げ増は果たしたが、「製造コストを下回る戦略的な価格設定による損失が発生」(同)したことにより、全体の赤字につながった。

PS3の通期売上目標は1,100万台だが、第1四半期の売り上げ台数は71万台だった。「ゲーム機の売り上げは11-12月に集中するので、第1四半期はもともとの予想値はそれほど高くない」(同)が「期初の計画より若干下回った。ただ、想定していた数字の半分とか、それほど低いわけではなく」(同)、「危険水域ではない」(同)としている。目標達成のための施策としては「2008年3月までには、新規のソフトを200タイトル程度投入する計画だ。これくらいになれば、競争力はつく。また、ネットワーク上で双方向的なゲームが楽しめる、『PSホーム』といったようなアプリケーションも考えている」(同)という。

北米では、すでにPS3は値下げを実施している。大根田氏は「大手の販社によると、値下げ以前と以後では、2倍ほど数量が違う」と述べ、効果が出てきていることを強調した。だが、国内での値下げについては「戦略上大きな問題」だとして言及しなかった。

値下げは、やはりそんなに容易なことではない。販売価格が製造コストを下回る、いわゆる逆ザヤが「いまも続いている」(同)からだ。もし、同社が国内でのPS3値下げに踏み切るとしたら、かなりのコスト削減を成し遂げなければならない。「昨年に比べれば、コストダウンは進んでいる。ドラスティックに相当下げられるのは、Cellなどのサイズ(回路線幅)が90nmから65nmになるなど、半導体の微細化の度合いが進行すること」であり、「もうすこし先になる」(同)見通しだ。

ソニー IR部統括部長の園田達幸

そのほか、PS2は同16%増の270万台、PSPは同52%増の214万台だった。ソフトはPS2用が同5%減の3,110万本、PSP用は同6%減の990万本、PS3用は470万本だった。「PS2は発売以来8年目になるが、増収だ。PSPも欧州での価格改定の効果もあり売り上げが増えた。PS3の販売も寄与して、ハード全体では増収で、それにともないソフトは増益」(園田達幸IR部統括部長)となった。同社は今四半期から、ゲームのハード/ソフト製品の数量の開示については、従来の生産出荷台数から、売り上げ台数/本数に変更した。

ゲーム分野は赤字が続いている

第1四半期としては過去最高の実績だったわけだが、同社は、2007年度通期の連結業績予想は、2006年度通期の連結決算発表時に示した数値を変更しなかった。売上高は同6%増の8兆7,800億円、営業利益は同6.13倍の4,400億円、税引前利益は同4.12倍の4,200億円、当期純利益は同2.53倍の3,200億円としている。同社は「この四半期は、テレビは残念だったが、他のカテゴリーはけっこう力がついている。エレクトロニクスの利益は当初の読みより上に行くのでは」(同)とみている。さらに、円安が進んでいることも追い風だが、「若干ゲームが厳しい」(同)ことから、全体の見通しについては慎重な姿勢だ。