コグノス 岡本克司社長

コグノスは、CPM(Corporate Performance Management: 企業パフォーマンス管理)製品を国内市場に投入する意向を明らかにした。9月に「Cognos 8 Planning」を発売、大手企業向けを中心に浸透を図り、従来の「BI(Business Intelligence)専業」の事業体制を転換させ、サービス、サポートを強化「ツールベンダからソリューションベンダへ」(岡本克司社長)の変貌を目指す。同社は、今回の新たな戦略を推進し、今後3年間で売上高を倍増させる計画だ。

CPMは、新たな経営思想のひとつ。企業がパフォーマンス(業績)を測定、監視、管理するための、プロセス、方法論、評価基準、技術などを統合し、企業全体で包括的に導入、実行していくことにより、経営戦略を進める上で、放置しておけば、失策につながるような要因/問題点を、早期に発見し、迅速に対策を講じることができるようにする。

「Cognos 8 Planning」は、経営戦略を具体的な計画、予算に変換、戦略の下にある計画値と実績をモニタリング、全体の工程を管理する。経費、人事給与、固定資産などの業務別、また、金融、公共、製造、小売など業種別、あわせて40のテンプレートを用意しているという。技術面での拠点としてイノベーションセンターを国内に新設し、「ソリューションの雛形を示す」(岡本社長)などの策により、新製品を支える。

同社は、国内での新たな展開のため、まず組織を整備、従業員数を20%増やし、戦略構築の専門部隊を設置、他社との連携で新機軸をうちだす。岡本社長は「当社は従来、ツールの販売が中心であったため、パートナーも販社が多かったが、これからは、インテグレータを開拓していきたい」と話す。さらに、同社が世界的に、各産業分野でのリーダー的な企業175社を選定している「GMA(Global Major Accounts)」と呼ぶ顧客に焦点を当てた営業体制を整える。GMAは日本企業では12社あるほか、GMAで日本に拠点をもつ企業は110社以上あり、関係強化を図る。

さらに、ソリューションを供給する体制の確立を目指し、システムの導入前の段階からの、サポートと検証を行い、技術面、製品の適切な使い方、必要な機能の確認などを実行する。また、導入後の窓口を一本化するとともに、情報提供や技術援助などによる、パートナー企業の支援策を強化するなど、「顧客が何を求めているかという期待値をいかにしっかり把握するかという点にフォーカスする」(同)意向だ。

同社の親会社である加コグノスでは、すでに「CPMベンダとして高い評価を受けており、BIツールベンダの域を脱している」(同)という。加コグノスの2007会計年度の年間平均成長率は15%だが、部門ごとに見ると、サービスは18%、サポートは19%である一方、ライセンスは11%で、売上構成比でも、ライセンスが38%であるのに対し、サポートは44%、プロフェッショナルサービスは18%となっており、ソリューションベンダへの転進を遂げたことの指標といえる。これまで国内にCPMを投入しなかったのは「日本語化、ローカライズが遅れた」(同)ことと、「日本市場への本格参入のための準備に時間をかけたため」だとしている。

大手進出で変わる業界地図、対策求められる専業ベンダ

BIはいまや、ITでの激戦区のひとつになってきており、米Oracle、米Microsoftといった巨大企業が続々と土俵に上っている。これら各社は、企業買収を繰り返し、自社にない要素を次々と取り揃え、総合ソフトウェアベンダーへの道をひた走っており、それぞれ、もともと保有していた中核製品を基盤に、多様な製品を配置、市場での優位性を確保しようとしている。また、彼らがこの領域に足を踏み入れたのは、企業の経営改善の有力な武器として、BIの価値が向上しているからでもある。

このような、いわば「外部」からの大手の攻勢に、これまでの専業事業者が手を拱いていれば、市場の主導権を握られてしまうことになる。何らかの独自性や付加価値が求められる。「転進」はごく自然な流れともいえるだろう。岡本社長は「パフォーマンス管理製品が売れることにより、BIも売れる。シナジーに期待している。BIは企業全体で使ってこそ効果があがる」と語る。企業内のさまざまな情報を分析、活用するBIは、CPMの概念を実現するための有力な構成要素となる。同社はBIとCPM製品の有機的な組み合わせを考えている。また、「CPMのエリアでERPのスイートと同じような製品が出てくるのでは」(同)とみている。

「3年で売上2倍」とは、今後3年間、年率25%の成長率を連続で達成することが必要になる。市場での競争はさらに激化することも見込まれるが、強力な競合が増えたことについて、岡本社長は「Welcomeだ。ユーザーの選択肢が広がることになる」と述べた。