映像や音楽、脚本などの権利者団体で構成する「デジタル私的録画問題に関する権利者会議」は17日、東京都千代田区で「コピーワンス問題と補償金制度に関する緊急声明」を発表した。デジタルコンテンツの複数回コピーを10回まで認めるとした総務省の検討委員会の合意に関し、「あくまで私的録音録画補償金制度が前提」とし、文化庁の委員会で同制度の廃止を唱えた電子情報技術産業協会(JEITA)を批判した。

東京都千代田区で行われた映像・音楽などの権利者団体による「コピーワンス問題と補償金制度に関する緊急声明」

コピーワンスは、デジタル放送番組の録画・複製を1回限りとし、その後のコピーを禁じるもの。総務省では、コピーワンスの緩和について、「デジタルコンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」を2006年に設置した。機器メーカーや消費者、権利者らが参加し、同年9月から検討を開始。19回目となる今年7月12日の検討委員会で、複製回数を10回まで増やすことで合意した。

緊急声明は、この合意に合わせたもので、実演家著作隣接権センターの椎名和夫氏や日本作編曲家協会のすぎやまこういち氏、日本映画製作者連盟の華頂尚隆氏、日本映像ソフト協会の酒井信義氏ら10人が、権利者会議に加盟する86団体を代表して参加。このうち椎名氏が、声明を読み上げた。

声明では、総務省検討委員会でのコピーワンス緩和に関する合意は、ユーザ、JEITA、放送事業者、権利者らが一堂に会して努力した結果到達したもので、その前提となる「コンテンツへのリスペクト」と「クリエータに対する適正な対価の還元」を実現する制度は、私的録音録画補償金制度をおいてほかにはないと説明。こうした状況にもかかわらず、同制度を審議している文化庁文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会において、JEITAが同制度廃止を主張したのは、極めて遺憾と強調した。

緊急声明に至った経緯などについて説明する椎名和夫氏

「コンテンツ製作での努力を考えてほしい」と訴える服部克久氏

椎名氏は声明に続き、コピーワンス緩和に関する総務省の検討委員会での経緯も説明。同委員会の冒頭で、権利者として、JEITAが主張するEPN方式でのコピーはネットに送出できない以外は事実上のコピーフリーであるとして反対したことや、EPN以外の方式を採用する場合、コンテンツ保護規格であるDTCP(Digital Transmission Content Protection)ルールの変更が必要になるとのJEITAの主張に対しても、チューナー・ハードディスク・DVD一体の筐体内でのコピーであれば同ルールに縛られないことがヒアリングにより判明したことなどを述べた。

椎名氏はこうした経緯も踏まえ、コピーワンス緩和の合意に関し、その前提となる私的録音録画制度補償金制度が守られないなら、同合意に大きな影響がある可能性を示唆。また、声明発表に参加した日本音楽作家団体協議会の服部克久氏は「音楽や映像を作る際、その過程でどれだけ多くの人が努力しているかを考えてほしい。コンテンツに対する尊敬の念を守る制度として、私的録音録画補償金制度が必要」と訴えた。