北海道宇宙科学技術創成センター(HASTIC)は11日、北海道大学・植松電機らが開発している「CAMUI型ハイブリッドロケット」(以下: CAMUIロケット)の打上げを8月4日早朝に実施すると発表した。CAMUIロケットとしては初めて、到達高度10kmと音速超えを目指す。

CAMUIロケットは、推進剤にポリエチレンと液体酸素を利用するハイブリッド型のロケットだ。火薬類を使わないので安全な上、燃料となるポリエチレンは安価(火薬に比べて運用・管理コストも削減できる)。また、高価な液体酸素用バルブを不要とした構造を実現しており、機体の製造コストも安くできる。

昨年、推力400kgf級の機体の開発を目指していたが、エンジンの異常燃焼のために、3月と7月に相次いで打上げを延期。その後、原因が燃料の極低温冷却だったことが明らかになり、無冷却方式に変更した推力80kgf機「CAMUI-80P」を開発、12月の打上げに成功した(到達高度は1km)。今回のエンジンは基本的にこれをスケールアップしたもので、推力は250kgfまで強化された。

新型ロケット「CAMUI-250S」の全長は3.6m、外径は160mm(打上げ時重量は38kg)。今回の打上げは、(1)超音速飛行環境における詳細な飛行データの取得、(2)推力250kgf級ハイブリッドロケットの打上げ技術の実証--という実験目的で行われるもので、高度10kmまで達した後、洋上で機体を回収し、データを分析する。

高度10kmで減速用のストリーマを放出、沖合5kmの海上に着水させる。機体にはGPSと送信機が搭載されており、その位置情報をもとに船で回収に向かう

打上げ日時は8月4日(土)の7時30分頃、場所は大樹町(北海道広尾郡)・多目的航空公園から海寄りの町有地となる(一般の見学も可)。航空管制との調整により、8時までには実験を終了する必要があり、打上げのリミットは7時50分頃まで。5m/s以上の風速、霧などによる視界不良、海上が荒れた場合などは実験を中止する。翌日が予備日として確保されているが、この日も延期になった場合は、再度調整の上、日程を決める。

CAMUIロケットとしては初めての洋上回収となる。射場の半径500mは保安区域として立ち入りは制限されるが、一般の見学も可能ということだ

今回のCAMUI-250Sもエンジンは無冷却モデルだが、これは燃焼時間が10秒程度と短いためで、今後、更なる大型化を進めるには、冷却モデルの開発が必要になると見られている。開発担当の北海道大学・永田晴紀教授は、CAMUIロケットについて「2~3年を目途に推力数トンクラスまで大型化したい」としている。