インテルは、Itanium系列のプロセッサのロードマップと製品戦略を示した。マルチコア化、キャッシュのいっそうの大容量化、インターコネクトの高速化、仮想化技術の洗練化などを加速し、独自アーキテクチャーのRISCプロセッサや大型汎用機が担っている、企業の基幹/中枢システムの領域への浸透をさらに推進することを図る。また、企業のクライアント向けパソコンの基盤技術では、セキュリティーに特に注力していく方針を明らかにした。

インテル インテル技術本部 本間康弘 スペシャリスト・マネージャー

デュアルコア化されたItanium2の後を継ぐTukwila(開発コード)は、回路線幅が65nmの微細加工技術により製造される予定で、いよいよクアッドコアの世代へと移行する。統合メモリコントローラーをプロセッサに内蔵するとともに、新たに開発した高速インターコネクトなどにより「デュアルコアのItanium2に比べ最大で約2倍性能を向上させている」(インテル インテル技術本部 本間康弘 スペシャリスト・マネージャー)という。

大型汎用機などの置き換えも視野に入れたTukwilaでは、耐障害性を改善したことも、大きな特徴だ。今回、導入された「DDDC(Double Device Data Correction)」では、DIMM上のDRAM素子、二つに何らかの障害が発生した場合でも、システム側で修復することが可能になる。現行のエラー訂正機能では、一つのDRAM素子が故障した際には、修正ができるが、連続エラーで二つの故障があると対処できない。同社は「DDDCは、システムのランタイムを延ばし、DIMMの交換頻度を下げ、コスト削減につながる」(同)としている。

Tukwilaのさらに先に位置するPoulson(開発コード)は、32nmの微細加工技術で製造されるが、Tukwilaとのプラットフォームとしての互換性は維持される。スレッドの実行効率の向上が図られるほか、大型汎用機並みのRAS(信頼性・可用性・保守性)機能が備えられる。命令レベルでの拡張を実行、同じ実効命令の組み合わせを増やし、高い水準の並列処理を実現させる。また、詳細はまだ明らかになっていないが、Poulsonの次にはKittson(同)が控えている。

インテル プロダクト&プラットフォーム マーケティング本部の徳永貴士 デジタル・エンタープライズ・グループ統括部長

同社 プロダクト&プラットフォーム マーケティング本部の徳永貴士 デジタル・エンタープライズ・グループ統括部長は、この5年余りの間に、Itaniumが順調に伸長していると述べ「国内市場のサーバー出荷金額でみると、2006年には、Itaniumは、サン・マイクロシステムズのSPARCの1.5倍、IBMのPOWERの1.1倍にまで達している」と話す。2002年には、これらのアーキテクチャーの1-2%程度だった(IDC調べ)。また、Itaniumは「HP-UX、Windows、Linuxなど10を超えるOSをサポートしており、さまざまな選択肢がある」と指摘、対応アプリケーションが1万2,000以上に上るなど「エコシステムが確立している」ことが、Itanium拡大の背景にあるとする。

Itanium出荷金額の推移

また、Xeon系では、2007年第3四半期にTigerton(開発コード)が投入される。ハイエンド向けでは初めてのクアッドコアだ。インターコネクトは帯域幅を2倍にしているほか、消費電力あたりの性能を向上化させ、150/130/80/50Wの消費電力ごとに製品が提供される予定だ。同じく第4四半期にはHarpertown(同)が登場する。これについて同社はパフォーマンス推測値を示し、Javaのワークロードは25%改善される、としている。

一方、いわゆるビジネスPCの基盤技術では、デスクトップ向けのvProとノートブック向けのCentrinoがあるわけだが、これらの第2世代では、セキュリティー面での機能向上が重視される。安全性確保の中核となるのは、仮想化技術を活用した、システム防御の手法「TXT(Trusted Execution Technology)」だ。TXTは、仮想化技術により、クライアントPCをパーティションで分離、それぞれを独立した環境として稼動させることができる。ハードの上に載る、「VMM(Virtual Machine Monitor」が監視する仮想マシンでOSとアプリケーションが走るという構造で、単一のハードで複数のOSが稼動することになる。

インテル プロダクト&プラットフォーム マーケティング本部の廣田洋一 ビジネス・クライアント・マーケティング部長

同社 プロダクト&プラットフォーム マーケティング本部の廣田洋一 ビジネス・クライアント・マーケティング部長は「金融業界などでは、メールや表計算といった一般業務用のパソコンと、基幹業務用のパソコンを使い分けている状況がある」と話す。これらを1台で統合しようとすれば、OS、アプリケーションを分離し、一方へのウイルスなどの脅威は、他方の環境には影響しないようにしたり、一方から他方のメモリなどを閲覧できないようにしたりするというような条件が求められるが「これまではハードの完全分離が十分とはいえなかった」。これがTXTでは「VMM上で基本的に完全分離」(廣田部長)ができ、複数のクライアント機の統合化が実現する。

インテル 及川芳雄インテル技術本部長

65nmの微細加工技術の次には、45nmが主流に就くことになる。米インテルの共同設立者であるゴードン・ムーア氏は「45nm技術は、1960年代後半のMOSトランジスタ開発以来の最大のブレイクスルー」と評している。65nmのプロセッサと比べ、トランジスター集積度は2倍に、トランジスター・スイッチング速度は20%向上、トランジスター・スイッチング電力は30%削減されたという。同社の及川芳雄インテル技術本部長は「2008年は、45nm製品の普及が始まる」と語る。同社は、2008年の第3四半期には45nm製品が、65nm製品を出荷比率で上回ると予想している。

2008Q3に45nmが65nmが追い抜くと予想されている