電子情報技術産業協会(JEITA)は、2006年度(平成18年度)の国内パソコン出荷実績を発表した。台数は歴代2番目ながら、対前年同期比6%減の1,208万9,000台、金額は同9%減の1兆4,653億円、台数では2002年度以来4年ぶり、金額では2期連続の前年割れとなった。国内経済全体は回復基調にあり、企業向けは堅調だったものの、個人向けは消費の多様化などにより、伸び悩んだ。さらに、期待された新OS、Windows Vistaの効果も十分ではなかった。

この5年の出荷実績推移

Vistaの影響

2006年度第4四半期(2007年1~3月期)の実績は、同7%減の352万3,000台だが、前年同期(2006年1~3月期)が四半期として過去最高の376万8,000台だったことにより、下げ幅が大きくみえており、前四半期比では、およそ36%増えている。しかし、逆にいえば、同四半期(2006年10~12月期)の259万1,000台との実績は、この2年間では、四半期として最も低い数字であり、これは、2007年1月末に発売されたWindows Vistaを待つ買い控えの影響とみられる。

JEITAパーソナルコンピュータ事業委員会の小林一司委員長(日立製作所)は、2006年度通期の実績について「ビジネス市場は、景気拡大により、投資が増加、セキュリティー需要などが伸び、年度全体では堅調と考えている。コンシューマ市場は、消費支出が分散し、年度の後半には、新OS搭載モデルを見込んだ買い控えの影響があったが、FTTHなどブロードバンドサービスによるデジタル動画配信や、双方向のネットワーク通信など、新しい市場も広がってきた」としている。

JEITAパーソナルコンピュータ事業委員会の小林一司委員長(日立製作所)

2006年度は、同3%減の296万5,000台との実績で第1四半期が始まった。四半期で前年度割れとなったのは、2002年度第4四半期以来のことだった。価格下落で買いやすくなった薄型テレビに需要を取られたのではないかなどと、さまざまなマイナス要因が指摘されたが、業界内ではWindows Vista効果に大きな期待がよせられた。

四半期ごとの出荷実績推移

しかし「これまでの新OSの投入時よりも、需要は少なかった」(小林委員長)わけだが、JEITAは「従来、新OSが登場した際には、イベント的な盛り上がりがあったが、最近では、それぞれの事情に応じて、買い時を決めるユーザーが多くなった。新OSの登場により、急激に需要が拡大するのではなく、徐々に良さが浸透していき、売れていくことになる。Windows Vistaはこれから本格的な普及に向かうだろう」とみている。また、パソコンへの需要の「ハードル」となった要因については「薄型テレビだけでなく、他の商品、サービスも含めて、消費が分散した。薄型テレビだけに食われたとみてはいない」とした。

一方、企業向け市場でのWindows Vistaの状況については「ビジネス市場は、コンシューマー向けに比べ、新OSの導入時期は遅れる。これまでと同様の傾向」とみている。

形状別実績、出荷単価の動き

今回の実績を、形状別にみると、全体の57%となる689万8,000台がノート型だった。比率では2002年度と並ぶ過去最高で、台数では2005年度に次ぐ、歴代2番目となる。「A4型のノートが好調で、前年度比では4%増。ノート型全体を押し上げた」(同)。一方、モバイルノートは、前年度比21%減だった。

2006年度は、ノート型が57%に

出荷単価の動きとしては「単価の下落幅は縮小している」(同)という。2006年度はデスクトップが対前年同期比4,000円減の11万2,000円、ノート型は同5,000円減の12万8,000円、全体では同4,000円減の12万1,000円だ。2006年度第4四半期には、デスクトップが同4%減の11万円、ノート型は同3%減の12万4,000円、全体では同3%減の11万8,000円だった。2006年度第2四半期以降はほぼ横ばいで推移している。これは「Windows Vista搭載で、基本機能が向上した製品が出てきたこと」(同)が背景にあるという。今後の単価傾向についてJEITAは「次世代DVDモデル、リビングPCや、A4ノート型では、地上デジタル放送対応機、薄型、軽量など、付加価値のある製品を各社とも出してきており、効果が上がる」と見込んでおり、「今後も価格下落幅はゆるやかなものとなる」との見通しだ。

四半期ごとの出荷単価推移

2007年度、デルと日本ヒューレットパッカードの影響は?

2007年度の需要拡大キーワードとして、JEITAは「景気拡大継続」「ユーザ層拡大」「ユビキタス環境普及」を挙げ、ビジネス市場では、セキュリティ強化の需要、中小企業、SOHOからの需要拡大、コンシューマー市場では、1世帯1台から、複数台所有への移行、Windows Vista需要の拡大--などを期待、今年度の出荷を1,030万台と予測している。

この数値だと、前年度より180万台近くも落ち込むことになるが、これには、特殊な理由がある。今年度から、JEITAの出荷実績統計の調査に参加しているメーカーが16社から14社に減る。抜けるのは、デルと日本ヒューレットパッカード(日本HP)だ。2006年暦年のパソコン出荷実績でのシェアは、デルが14.2%、日本HPは6.5%であり(IDC Japanの調査による)、この2社分がなくなると、JEITAの出荷統計は全体の8割程度を捕捉することになるとみられ、1,030万台との値は、これらの要因を織り込んだものだ。JEITAでは、2007年度の実際の市場規模は「前年度比で5%増」と推定している。