KDDIの小野寺正社長兼会長

KDDIは、2006年度通期の連結決算を発表した。売上高は対前年同期比9%増の3兆3,353億円、営業利益は同16.2%増の3,447億円、経常利益は同19.4%増の3,509億円、当期純利益は同2%減の1,867億円で、増収増益だった。2006年10月に導入されたMNP(Mobile Number Portability)でもほぼ独走で、契約数を増加させるなど、携帯電話事業(au+ツーカー)は好調を持続して同社売上の80%を占め、490億円の営業赤字を抱える固定通信事業の損失分を吸収して、さらに余りある成果をあげている。また、同社は新たな中期計画「チャレンジ2010」を策定、2010年度に売上高4兆円、営業利益6,000億円を目指す。

携帯電話事業は売上高が同6.7%増の2兆6,774億円、営業利益は同8.8%増の3,857億円、経常利益は同11.6%増の3,935億円、当期純利益は同44.2%増の2,095億円となっている。3月末の累計契約数は2,819万で、シェアは29.1%(au28.2%、ツーカー0.9%)、年度純増シェアは55.8%で首位の座にある。auのうち第3世代規格「WIN」の契約数は3月末で1,455万、パケット定額制の契約率は77%に達している。2008年3月末でサービスを終了するツーカーのauへの移動は円滑に進んでおり、年間の移行数は143万、2005年10月からの累計では213万となる。

MNPでも極めて順調で、他社からの流入数は115万であるのに対し、流出は29万7,000に留まり、差し引き85万3,000の増。MNPが始まった2006年度下期の契約数全体の実績をみると、MNP以外の純増は123万、ツーカーからの移行が67万3,000、モジュール純増が7万5,000だった。これをMNP開始以前の前年同期と比べると、純増数が125万2,000、ツーカーからの移行は70万6,000、通信モジュールの純増が3万8,000で、わずかながら全体としては減っているが、ここにMNPの純増が加わったことが全体の増加に大きく貢献した。解約率も1.02%と、前年比で0.18ポイント改善した。

auの「通常」の純増数はあまり変わっていないが、MNPによる純増数は大きく、効果は絶大だった

KDDIの小野寺正社長兼会長は「MNPでは、『入り』が『出』の4倍あった。市場全体の成長より伸びが大きかった。MNPは利用率が予想より下回ったが、市場が活性化した」と述べ、MNP緒戦の成果を振り返った。当期純利益は、ツーカーの減少にともなう減損損失が、前年度比で647億円減の396億円となったことで、税金等調整前当期純利益は増加したものの、前年にパワードコムと合併したことにより、法人税等及び法人税等調整額の軽減効果がなくなり減益となった。

2007年度の業績は、売上高が同4.9%増の3兆5,000億円、営業利益は同13.1%増の3,900億円、当期純利益は同17.8%増の2,200億円と予想している。

固定通信事業は売上高が同15.3%増の7,144億円、営業損益は490億円の損失となったが、赤字幅は123億円縮小した(前年同期は613億円の損失)。直収電話サービスの「KDDIメタルプラス」は累計契約数が281万3,000となり音声系収入が増加したほか、「KDDI Powered Ethernet」によるデータ系収入の増などにより同事業は増収だったが、赤字を脱していない。FTTHは、2007年1月に東京電力のFTTH事業を統合、関東地方では自社の回線での運営を進めており、契約数は59万に増加している。メタルプラスの赤字は減少を続けており、2007年度には、FTTHを除く固定通信は黒字化の見通しだ。

2006年度の設備投資は4,385億円で、移動通信に3,289億円、固定通信には880億円を充当した。2007年度は全体で5,000億円、移動通信には3,700億円、固定通信には1,170億円を割り振る予定だ。

また、同社は、富士通が保有するジャパンケーブルネットホールディングス(JCNH)、ジャパンケーブルネット(JCN)の株式を取得、両社を子会社化すると発表した。同社は将来のFTTH事業拡大を視野に入れた顧客基盤拡大の観点から、2006年3月に両社に資本参加、現在JCNHの株式46.76%を保有、ケーブルテレビ局の経営に参画してきたが、今回JCNグループとの関係をいっそう強化するため、連結子会社化した。KDDIでは「これによりJCNグループとの連携をいっそう深め、競争環境の激化に対応する迅速な意思決定体制を確立し、お客様に対してより魅力的なサービスのスピーディな提供が可能となると考えている」としている。富士通は「JCNグループがKDDIの明確なリーダーシップの下で、クワトロプレイ(放送、インターネット、固定電話、携帯電話)、放送と通信との連携を見据えた新サービスを展開していくことが、今後の事業の発展に必要と考える」との見解を示している。