米Red Hatは4月24日(現地時間)、企業データ統合・管理ソフトウェアを開発する未公開企業の米MetaMatrixの買収で合意したと発表した。買収金額等の詳細は明らかにされていない。現在Red Hatでは、同社ミドルウェア製品部門の持つJBoss Enterprise Middleware Suites (JEMS)を使って既存のUNIXインフラの置き換えやSOAによるアプリケーション統合を推し進めているが、MetaMatrix買収はこの戦略を補完するものとなる。MetaMatrixのソリューションにより、従来のSOAコンポーネントで不足しているデータ統合/管理の機能が提供される。

MetaMatrixの提供するソフトウェアでは、複数の異なるデータソースを組み合わせて、そこから取り出したデータをユーザーが望む形に加工して出力する。例えば、あるデータソースのフィールドが「ユーザー名」だったとして、別のデータソースでは「ID」という名称で管理されている可能性もあり、こうしたデータの整合性をとりつつ、ユーザーのニーズに応じてデータを取り出すための単一のビューを提供するのが同社の技術だ。特にアプリケーション統合を行うSOAにおいてはこうした問題が発生しやすく、従来のRed HatのSOAソリューションにMetaMatrixの技術を組み合わせることで、よりSOAの企業インフラへの浸透を助ける役割を担う。

「やるべきプロジェクトが後ろに山積みにされ続けているにもかかわらず、多くの企業がIT予算の70%をレガシーなアプリケーションのメンテナンスにかけ続けている。プロプライエタリなアプリケーションベンダーがCIOに休息の時間をもたらしていないのは明らかだ。これまで企業は、高い導入コスト、高いシステム統合、高い囲い込みコストのソリューションを選ばざるを得なかったが、Red Hat Enterprise LinuxとJBoss Enterprise Middlewareを組み合わせることで、長期間にわたり価値のあるITインフラへのマイグレーション手段を手に入れられる」と米Red Hatのエンタープライズソリューション部門シニアバイスプレジデントのTim Yeaton氏。JEMSによるSOA導入、そしてMetaMatrixの組み合わせが企業システムに柔軟性を与える点を強調する。

Red HatはMetaMatrix買収発表と同時に、ユーザーや開発者支援の新施策もいくつか発表した。1つは各JEMSコンポーネントをひとくくりにしてサブスクリプションでのサポートサービスを提供する「JBoss Enterprise Platform Subscription」、2つめが「JBoss.org」サイトのリニューアル、3つめが同社のLinuxディストリビューションとJEMSをカバーして2種類のSLAオプションを提供する「Red Hat Developer Support Subscription」、4つめがユーザーやチャネルパートナー向けのトレーニング/認定プログラムの提供だ。また同社によれば、2007年末にもEclipseベースの開発ツール「Red Hat Developer Studio」を提供する予定だという。Red Hat Developer Studioは、Red Hat Enterprise LinuxとJEMSを用いたシステム開発を支援するソフトウェアとなる。