日本オラクルがID管理事業の開拓に本腰を入れる。同社は24日、ID管理ビジネスを強化し、パートナー15社と共同で「Oracle Identity Management Partner Committee」を設立するとともに、企業がID管理を円滑に行えるようにするためのコンサルティングサービス「Oracle Identity Manager Accelerator for HRM(以下、OIM Accelerator for HRM)」を展開、さらに「Oracle Identity Manager」をはじめとする製品についての研修制度を拡充することを発表した。日本版SOX法の制定などに伴い、非常に大きく伸長することが見込まれる情報セキュリティ対策関連の需要に応えるため、パートナーとの連携を積極に強化し、ID管理ビジネスの受注件数倍増を目指す。

日本オラクル 常務執行役員 システム製品統括本部長 三澤智光

日本オラクルの三澤智光 常務執行役員 システム製品統括本部長は、「日本版SOX法が導入される2008年度に向け、対象となる企業は、現在、内部プロセスを整備して、文書化に労力をかけているところが多い。しかし、内部統制を実施するうえで鍵になるのはID管理である。ID管理の市場では、IT業界のキャパシティーを大幅に上回る需要が生まれるのは確実」と語った。そのうえで、国内のID管理事業拡大のためにはまず「専門リソースの増強が必要」と指摘。「Oracle Identity Management Partner Committee」と教育研修の充実化をこのための対策として位置付けた。

「Oracle Identity Management Partner Committee」は、ID管理市場の発展とパートナーのID管理ビジネスの活性化を目的としており、日本の製品/市場動向やユーザー事例の共有、グループ専用メーリングリストの作成とID管理分野に特化した最新の製品、技術、ビジネス情報の提供などを行う。

また、日本オラクルが月次で定例ミーティングを開催するとともに、半年に1回程度、米国本社との意見交換ミーティングも催す。加えて、製品ロードマップに関する最新情報の提供、米国本社から講師を招いた特別トレーニングやワークショップなども予定している。パートナー企業は、米オラクルのセキュリティ部門バイスプレジデントや開発担当責任者との定期的なミーティングに参加することができ、オラクルのID管理製品や体制などに対して直接意見交換することが可能となる。オラクル側は、製品のロードマップ最新情報の提供だけでなく、Identity Managerアダプタなど、パートナーの独自開発によるソフトウェア資源をパートナー企業間で共有するための仲介を行い、国内で開発したプログラムの相互利用を促進するID管理システムの構築を支援する。

設立当初の「Oracle Identity Management Partner Committee」に参加するのは、NEC、野村総合研究所、日立ソフトウェアエンジニアリング、新日鉄ソリューションズ、アクセンチュア、アシストなどの15社だが、「さらに10社ほどを募る」(三澤常務)見込みだ。

さらに、日本オラクルの教育研修部門「オラクルユニバーシティ」では、2007年5月29日から「Oracle Identity Manager」管理3日間コースの提供を開始するほか、「Oracle Identity Manager」「Oracle Access Manager」「Oracle Virtual Directory」「Oracle Internet Directory」などの主要なコンポーネント製品についての技術研修コースを順次設けていく意向で、ユーザー/パートナー企業ごとに「Oracle Identity Management」製品についての技術を習得する場を用意する。こうした取り組みにより、この領域に対応できるパートナーのエンジニアを現在の70人程度から300人に増やす。「エンジニアは1年で最低でも300人にしないと、今後のニーズには耐え切れない」(同)という。

また、この分野のビジネスで強化すべき点として、三澤常務は「ID管理コンサルティング手法の輸入」「導入期間の短縮化」を挙げる。ID管理の大規模なインプリメンテーション事例は「海外での取り組みが圧倒的に先行している」ことから、これらを手がけている海外のコンサルティング企業のノウハウをパートナーなどに紹介し、「大規模なインプリメンテーションでの失敗を防ぐ」(同)。

「導入期間の短縮化」については「OIM Accelerator for HRM」を展開する。「OIM Accelerator for HRM」は、「Oracle E-Business Suite」の人事管理ユーザーを対象に、あらかじめ定義したプロジェクト成果物の雛型、ツール、方法論を使って「Oracle Identity Manager」の早期導入を実現するサービスだ。既存の「Oracle E-Business Suite」人事管理ユーザーによるID管理基盤の構築は、開発期間が比較的長期にわたってしまっていたが、コストを抑え、早期導入できるよう支援する。

「Oracle Identify Management」は、ID情報を統括して管理するための共通基盤だ。ディレクトリを中心に、ユーザー認証、IDをはじめ、さまざまな権限付与などを集約化し、一元的に提供する仕組みで、アプリケーション、ミドルウェア、データベースといった要素を統合的に扱うことができる。データベース、ERPなど、別々の企業が提供する異なった製品が稼動している環境で、"つぎはぎのシステム"ではなく、1つのソリューションでID情報を管理できることも特徴で、これまでは、異機種混在環境での優位性が大きな武器だったが、今後は、それに加え、内部統制関連ビジネスの機軸としての役割をいっそう強化していく。