韓国では現在、携帯電話の通話相手や場所を記録したり、インターネットの利用記録を残すことなどを義務化する法改正が実施されようとしており、大きな論争を引き起こしている。
改正されようとしている法律は「通信秘密保護法」(通秘法)で、通信、および通信手段を用いた会話の秘密や自由を保護しようという目的の下に策定された法律だ。しかし今、国会の法制司法委員会により通秘法の一部改正が進められようとしている。
改正の主旨は、電気通信事業者に対して携帯電話の利用記録を把握できる設備を設置させるほか、インターネット事業者にユーザーの利用記録を残すよう義務化し、個々の通信日時や場所、会話相手などを確認できる「通信事実確認資料」を作成させる。そして通信事実確認資料を最低1年の間は保管し、検察などの捜査機関が犯罪調査などの目的でこれを利用できるようにすることにある。
つまり、携帯電話の通話相手や日時、インターネットのチャット相手や訪問サイトなどの細かな部分までが記録され、それが必要な時には捜査機関に提出されるというわけだ。
もしこの通秘法改正案が国会を通過した場合、2008年から施行されることとなる。
たとえ犯罪などの捜査目的であるとはいえ、携帯電話での会話相手を把握されたり、インターネットでどんなWebサイトを利用したのか記録が残されるというのは、プライバシーの侵害になりかねない。実際、各団体からは「通信の秘密と自由を守るはずの通秘法が、かえって国民を監視するものになってしまう」「人権侵害だ」などと、反対の声があがっている。
また、韓国といえばネティズンの活動が活発なことで有名。彼らの情報源の1つにはインターネットのニュース記事があり、また記事のコメント欄では賛否両論の議論が交わされるなど、インターネットのニュース記事はネティズンの活発な活動を支える役割を果たしている。
今回の法改正についてネティズンたちは「これからは携帯で話す時も暗号で話さないとな」と皮肉ったり、「(携帯電話やインターネットの利用記録の保管を)国が合法化するっていうのに、誰がそれを止められるんだ」と諦めの意思を表したりしている。いずれにしても反対意見が多い。
また、韓国インターネット企業協会やインターネット言論ネットワーク、全国メディア運動ネットワークなど、インターネットメディア関連の団体も、通秘法改正案に反対する声明を公式に発表した。
各団体は、2007年7月から実施される「インターネット実名制」を「インターネットニュースの生産に参加し、また生産されたニュースを消費するネティズンの自由な活動を制約するだけでなく、表現の自由や政治活動の自由まで侵害するもの」と批判したうえで、これにプラスして通秘法改正案まで実施されれば「ネティズンとインターネットメディアは、事実上、国家と事業者の監視下に常時置かれることになる」と述べている。
また、一部では「通秘法改正案に従って残したログが、さらにインターネットに流出してしまったら大変なことだ」と、法改正による副作用を憂慮する声も出ている。
通秘法改正案は現在のところ往々にして反対意見が多く、国会でさらなる議論が必要となりそうだ。しかし、改正案の核心となる「ログを残す」という部分が変わらない限り、反対意見はなくなりそうもなく、決着までには難航が予想される。
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