真に国益となる携帯電話産業の国際競争力とは--KDDI社長が問題提起

    大川淳  [2007/03/15]

    日本の携帯電話メーカーは、世界市場シェアにおいては、ベスト10どころか10社あわせても3位にすら届かない。また、この分野では、日本発の技術が標準になることはあまりない。携帯電話の国際市場における競争力とは何か――国内の携帯電話産業界の現状について、KDDIの小野寺正社長が問題提起した。

    何を目指して国際競争力を強化するのか

    KDDI 小野寺正社長

    国内の携帯電話端末メーカーは、合計でもその世界市場シェアは1割程度だ。一方、モジュールや部材では高いシェアをもっている。小野寺社長は、「部材では日本メーカーは4割のシェアを占める。何を目指して『国際競争力の強化』とするのか?」と問う。目的とするとところを共通していなければ、方向性が定まらず、全体にまとまりを欠き、どんなことを目標とするかにより、取り組み方には差がでるという。

    小野寺社長は「目指すべき方向性によって取るべき政策が正反対になる可能性がある」と指摘する。その一例としては、もし日本の携帯端末メーカーのシェア拡大を目指すとすれば、どうなるか。総務省が主宰するモバイルビジネス研究会では、販売奨励金制度とSIMロックが端末メーカーの競争力を削ぐ原因として挙げられている。一方、部材・モジュール分野での競争力維持を目指すなら、この分野では「垂直統合型のビジネスモデルによって、戦略的に先端的な商品展開が可能となることが、メーカーの競争力に資すると考えられる」(KDDI)との見解がある。

    つまり、「通信事業者が、先端的な製品を市場に投入して、(その販売を)販売奨励金(で後押しすること)が力になっている。奨励金がなければ、開発は遅れることになるだろう。先端技術を搭載した商品であっても、売れなければ(海外の)後発メーカーに追いつかれる。このような支援は通信事業者がやらなくて誰がやるのか」(小野寺社長)ということだ。

    世界市場の上位各社をみると、覇者NokiaやMotorolaは事実上の世界標準である欧州方式の第2世代規格「GSM(Global System for Mobile Communications)」についての特許などにより、事業を進めるうえで優位に立っているが、韓国のSamsung電子は日本のメーカーと同様、そのような優位性はない。にもかかわらず、同社は世界シェア第3位だ。

    小野寺社長は「これをどう考えるか。おそらく技術の優位性とは別の強さをもっているからだろう」と指摘する。モバイルビジネス研究会は、販売奨励金制度と、いわばそれを支える「鍵」であるSIMロックを国際競争力の阻害要因とみているが、日本勢の部材、モジュールの実力やSamsungの例から、これらは必ずしも「強さ」に直結するものではないと示唆する。

    技術の標準化は目的実現のために

    また、最近、携帯電話端末は機能のうえでパソコン化が急速に進展しているが、小野寺社長は「もう一つの意味」でもパソコンに近づくとの見通しを示す。「いまは、端末を通信事業者が主導しているが、将来的にはパソコンと同じように、標準化された部材を集めて組み立て、載せるソフトをどうするかというようなことになる可能性は非常に高い」とみる。その場合、日本では「端末メーカー、部材メーカーどちらが強い国際競争力を持っていたほうがいいのか」(同)。パソコンの場合、メーカー世界市場シェアはかなり激しく変動する。だが、「インテルのようにチップ(部材)を抑え、標準化することと比べ、どちらが有利か?」(同)このような視点が重要との考えを示す。

    さらにその標準化についてだが、その目的・意義は、メーカーとエンドユーザー/通信事業者の間では異なる。メーカー側は開発リソースの一本化、強大な国際市場が視野に入る。それとともに「標準に自社の技術や特許などを組み込むことで、他社との特許交渉を有利にできる」(同)ことなどが挙げられる。エンドユーザー/通信事業者は、相互接続性の確保、マルチベンダー環境が競争によるコスト低減の状況に移行する。端末の価格が低下する――などであり、メーカー側は良質製品、売れる製品をつくるため、エンドユーザー/通信事業者は良質製品を安く手に入れたいためだ。

    標準というものは「自分の技術が使える、ではなく、特定の目的が実現できる」(同)ことを目指すものであるという。「GSMの場合、国際ローミングを必須としてきたため、やりやすくなっており、通信事業者は一致しているが、日本の標準ではNTTドコモ、KDDIとも、別々のことを主張している」(同)なぜまとまらないのか。

    小野寺社長はNTTドコモの姿勢を批判する。「第4世代(4G)規格の国際化ができるのなら、それにこしたことはない。ただし、技術的な面で公平であるべきだ。(第2世代の)PDC規格の時代に、ドコモ、KDDI側、それぞれの技術があったのだが、ドコモはさまざまな機能で先行して開発を進め、ある程度まで試験をした段階で、これを標準に、といっていた。これではドコモだけが優位になる。そこで、KDDIはPDCから逃れ、CDMAに移行したいきさつがある。一つの事業者の技術を標準とするのは良くない。4Gでも、KDDIが反対しなかったとしても、欧米の事業者はみな拒否するだろう」としている。

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