慶應大学ら、デジタル放送上にIPデータを乗せて配信する技術を開発

    大塚実  [2006/11/22]

    同日開催された発表会に出席した関係者。左から、安田豊・KDDI執行役員技術統轄本部長、村井純・慶應義塾大学常任理事/環境情報学部教授、仁平成彦・エフエム東京執行役員

    慶應義塾大学、KDDI、エフエム東京(TOKYO FM)は20日、デジタル放送上にIPネットワーク環境を構築する技術「IP over デジタル放送」を開発したと発表した。インターネットと連携した新しい番組コンテンツが実現できるほか、大規模災害時の情報配信手段としても期待されるという。

    この「IP over デジタル放送」では、IPパケットはMPEG2-TSパケットでカプセル化され、デジタル放送波で配信する。従来の放送と同時にデータを送ることが可能で、受信側のPC/携帯電話等ではデカプセル化を行って、IPパケットを抽出する。ダウンリンク自体は放送波なので一対多の片方向通信となるが、アップリンクに通常のインターネット接続を利用して、仮想的な双方向コミュニケーションを実現している。

    「IP over デジタル放送」の概要。インターネット上のコンテンツ・アプリケーションを、デジタル放送波で配信することができる

    今回実際に開発したシステム。デジタル放送のプラットフォームは「全くいじっていない」(慶応大・村井純常任理事)という

    三者の分担としては、慶応大が基礎研究、技術的課題の検討、アーキテクチャ設計、サービスモデルの提案など主導的な役割を果たし、KDDIが実際のシステム開発、エフエム東京が事業化の検討などを行う。2年前から共同で研究開発を行ってきたという。

    「デジタル情報の伝搬としては3つの手段がある。"ケーブル"(光ファイバなど)と"ワイヤレス"(無線LANなど)についてはかなり使い込まれているが、"放送波"をインターネットとどう組み合わせるかは技術的に大きな課題だった。この全体を組み合わせたときに、新しい社会の基盤を整えることができる」とは村井純・慶應義塾大学常任理事/環境情報学部教授。

    この技術は、「IPというオープンな技術がベースなので、新しいサービスの開発をいろいろな人がしやすくなる」(仁平成彦・エフエム東京執行役員)というのが特徴だ。では具体的にどういったコンテンツが実現できるかだが、記者発表会ではその一例として、「ネットサーフィン同期型ディスクジョッキー」という番組コンテンツのデモが行われた。

    デモのシステム(放送局側)。デジタル放送波は同軸ケーブルでリスナー側に配信されている

    その左には、リスナーを想定した2台のPC端末を用意。それぞれチューナーを搭載している

    今回開発したシステムには、"ブラウザ同期マルチキャスト"機能も実装。放送局のパーソナリティがネットサーフィンをしながら、紹介したいサイトをリスナーのブラウザにも同時に表示させて、情報を共有することが可能となっていた。データレートはデジタル放送のセグメント数にも依存するが、今回のデモでは600kbps程度だったとのこと。

    (受信者Bの画面)パーソナリティがブラウザを操作すると、リスナーPCの画面にも同じサイトが表示される

    (放送局側の画面)それを見たリスナーがメールで情報を送ってきた。視聴者参加型番組が簡単にできるのも特徴

    (受信者Bの画面)良い情報であれば、それがリスナーに一斉配信される。パーソナリティが○印を付けたり…

    (受信者Bの画面)曲が再生されてからは、画面上に直接テキストを書き込んで、リスナーにメッセージも送ることも

    今回開発したシステムは、東京・丸の内で22~23日に開催される「SFC OPEN RESEARCH FORUM 2006」にて展示される予定。22日の17:30~18:00には、村井氏によるミニ説明会も開催されることになっている。

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