ウィルコム、喜久川新社長が会見、「お客様本位と分かりやすさで」

ウィルコムの喜久川政樹新社長が、10月26日の社長就任後初めての会見に臨み、PHS事業の現状と今後などについて語った。

中央が喜久川新社長。左は執行役員副社長の土橋匡氏、右は同近義起氏

喜久川体制の面々

喜久川新社長はまず、今年度上期の決算について報告。9月末までの加入者数は426万人で、前年同期比で82万3,000増。ARPU(ユーザー一人当たりの平均収入)は4,040円で2004年上期と比べると390円の減少だが、直近の2005年下期と比べると下落幅は40円と「下げ止まっている」(喜久川社長)。ARPUの減少については昨年5月に導入した音声定額サービスで法人収益が減ったが、それを加入者増がカバーした。また、個人のARPUに関しては横ばいかむしろ上昇基調にあるという。

加入者とARPU、決算内容

同期の営業収益は1,230億6,300万円で、前年同期比127%増。営業費用は1,246億6,000万円で同117%増。営業利益は15億9,700万円のマイナス、経常利益は48億1,200万円のマイナスだった。営業費用は増加したものの営業収益がそれ以上の伸びを示したため、営業利益で約84億円、経常利益では100億円近い改善となり、赤字幅は大幅に減少している。

単月の経常利益ベースでは8月には黒字化を達成。10月までの3カ月間は黒字を続けているという。これについて喜久川社長は「工夫・知恵をこらしていろいろなサービスを提供できた」点とW-SIMを商品化し、さまざまなタイプの端末が登場してきた点をその要因としてあげた。「大きな転換期を迎えた」と喜久川社長。携帯キャリアではARPUが6,000~8,000円程度であるのに対し、4,000円台で黒字化にこぎ着けたことが「大きなこと」だと強調する。

ウィルコムが展開するサービス

ウィルコムは、通話に関してはNTT東西の交換機を借りる形でサービスを提供しており、「アクセス料金の支払いがネックになっている」。そこでウィルコムではNTTの交換機をバイパスするITXを設置することでそのコストを抑える作業を進めている。すでに600カ所のビルに設置、当初年度内の目標だった1,000ビルへの設置を前倒し、11月中に設置を終える計画だ。これは「想定以上に音声定額プランを利用するユーザーが増えたため」だという。

ITXは2004年度末では160カ所だけだったが、今月中に1,000ビルに設置する

上期は、売り上げも加入者も前年同期比20%以上の伸び率を示しており、喜久川社長は「きめ細かなマーケティング」「想定以下という法人市場の活性化」「お客様満足度の向上」という3本柱を「徹底的にやっていく」考え。

今後に関しては、料金・サービス、端末、サービスエリア、きめ細かいユーザー中心のマーケティングを強化しつつ、新規マーケットの開拓や社会貢献にも取り組んでいく計画だ。

ウィルコム同士の通話が定額でEメールの送受信も無料の「ウィルコム定額プラン」を提供しているが、今秋にはハートフルサポートを導入したほか、ウィルコム以外の070番号への通話を定額にしたほか、12月からは月額1,050円で070番号以外への通話もお得になる「通話パック」を導入。ウィルコム定額プランの利便性を向上させる。

充実するウィルコム定額プラン

定額プランの利用者は右肩上がり

端末では、現在も通常の電話タイプからデータに特化した製品、W-ZERO3シリーズなどに加え、W-SIMを利用した子供向け端末や電子POP、ハンディターミナルなども提供。さらに喜久川社長は、常に携帯するものだからこそ、それに必要な機能は前向きに搭載を検討していくと話し、例として赤外線や「決済的なもの」(おサイフケータイか)も検討するとした。通常の端末以外にも、W-SIMを使うことで柔軟なハードウェア、ソフトウェアのカスタマイズが可能になることから、新たなマーケットの拡大もねらっていく。

端末も着実に強化していく

また、ウィルコムは1つの基地局がカバーするエリアが狭いマイクロセル方式のため、エリアの広さという点では弱いものの、基地局を重ねることで「都市では圧倒的に強い」点をさらに強化。都市部を中心に高度化エリアを拡大、特にトラフィックが集中するエリアを中心に大容量化を進め、大量にユーザーが利用しても対応できるように進める。

都市部に高度化エリアを構築し、大量のトラフィックにも対応する

現在の人口カバー率は99%だが、現状ではたとえば周辺に住宅のない道の駅やゴルフ場などで弱く、それをカバーするために郊外では電波の届く距離を伸ばしてカバーエリアを拡大する。同様に都市部でも、電波を強くすることで屋内でも電波が届きやすくなる。

単位面積当たりのチャネル数も大きく伸ばしている

ウィルコムはWebサイトでエリアに関する要望を受け付けており、ユーザーニーズもふまえてエリアを展開していく

喜久川社長は、ウィルコムの新規加入者の5割以上が口コミを参考にし、ユーザーの8割以上が家族や友人に勧めたいと感じているとの調査結果を引用し、今後はさらに「コミュニティマーケティング」を推進していく考えを示す。友人同士、家族、SNS、学校、会社といった大小さまざまなコミュニティに注目してマーケティングをしていくことで、他社とは異なる独自路線を確保していく。

口コミで広がるウィルコム

マーケティングも強化していく

新規事業の1つとして、内藤証券のW-ZERO3を使ったシニア向けのオンライントレードを紹介

社会福祉活動への貢献も続ける。スペシャルオリンピックスへの端末貸し出しは昨年も行っている

800kbpsオーバーへ増速化

ウィルコムでは、技術開発を進めてPHSの機能向上も推進している。今年2月には電波の状態に応じて変調方式を切り替え、電波が安定しているときなら通信速度が最大で下り408kbpsになるW-OAMを導入しているが、12月にはW-SIMがこれに対応し、音声端末やW-ZERO3でもW-OAMが利用できるようになる。

W-OAMを音声端末にも導入

W-OAMは電波到達度が約3倍改善し、屋内への電波到達度が向上するほか、移動時の接続性も向上するため、音声端末でもメリットがある。

さらに来春にはこれをさらに進め、変調方式では64QAMをサポートし、最大で800kbpsを超える通信速度を実現したい考えだ。これにより遅延速度(RTT)も改善し、ユーザーの「待たされ感」が軽減する。

ただ通信速度に関して、現状は基地局からITXまでのバックボーンにはISDN回線を利用しており、これだと512kbpsが限度だという。来春はひとまず512kbpsまでをサポート、その後回線を光ファイバに切り替えてIP化し、この時点で800kbps以上を実現する予定だ。

順次高速化していく

バックボーンのIP化は、KDDI(au)のようなオールIP化までは現時点で想定していないようだが、いずれにせよIP化したあとは複数のアンテナで通信速度を向上させるMulti RF化も強化する。今後、今までの4x/8xから12x、16xまで実現。これを64QAMと組み合わせると最大で1.6Mbpsになる見込みだ。

喜久川社長は、新しい喜久川体制が「他社がPHSをあきらめる中、可能性を信じて辛抱してきたメンバー」であると表現し、「昨年からの反転攻勢に成功した。今後もハードルはあるだろうが、お客様本位と(料金体系の)分かりやすさを軸にがんばっていきたい」と決意表明をした。

海外を含めるとPHSのユーザー数は1億を突破したそうだ

人気記事

一覧

新着記事