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ソフトバンクの孫正義代表取締役社長 |
ソフトバンクは、2005年度連結決算を発表した。売上高は対前年同期比32.5%増の1兆1,086億6,500万円で創業以来初めて1兆円を突破、営業利益は622億9,900万円(前年同期は253億5,900万円の損失)、経常利益は274億9,200万円(同452億4,800万円の損失)、当期純利益は575億5,000万円(同598億7,100万円の損失)となり、いずれも過去最高の実績であるとともに、営業、経常、最終の損益で5年ぶりに黒字に転換した。また、同社が買収したボーダフォンは今秋に、携帯電話の下りデータ転送速度が3.6Mbpsに高速化するHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)を、政令指定都市など、国内主要都市で利用できる態勢を整え、年内に対応端末を投入する意向を明らかにした。
事業分野別にみると、ヤフーを擁する「インターネット・カルチャー事業」が引き続き好調で、売上高は同52%増の1,561億2,000万円、営業利益は同48%増の741億9,000万円だが、今年度、連結業績改善に大きく貢献したのは、ADSL事業「Yahoo! BB ADSL」を中心とする「ブロードバンド・インフラ事業」の営業損益が206億7,200万円の黒字に転じたことだ。前年同期は、537億4,700万円の赤字だった。売上高は同31%増の2,684億5,100万円で、「Yahoo! BB ADSL」の回線数は3月末で504万。
孫正義社長は「ブロードバンド・インフラ事業は完全に利益回収期に入った」と胸を張る。同社はADSL事業を開始した2001年度には最終損益が887億円の損失に転落した。その前年度は366億円の黒字だった。赤字幅は2003年度に1,070億円にまで膨らんだが、2004年度に598億円にまで縮小、2005年度ようやく黒字化した。この間の赤字は、ADSL事業を展開するための設備への先行投資や、顧客獲得の費用などが大きく影響していた。
一方、同社が2004年に日本テレコムを買収することにより着手した「固定通信事業」は売上高が3,542億3,300万円(2004年度第3四半期から連結対象)で、営業損益は251億5.800万円の損失だが、2005年度第4四半期には、29億2,800万円の黒字となった。直収型固定電話サービス「おとくライン」はこの3月末で84万回線に達しているが、初期投資などが収益を圧迫、5四半期連続で営業赤字が続いていたが、代理店管理業務費用の改善、法人向け営業強化策の奏功などにより、この分野が同社に設けられて初めて四半期黒字を達成した。同社では「ようやく、損益分岐点を越えるところまで来た。利益の足を引っ張る部分はなくなった」(孫社長)と評する。
2006年度からは、同社に「携帯電話事業」が加わる。従来のボーダフォンの売上高1兆5,000億円(2006年3月期中間決算の数値を年換算)を合計すると、ソフトバンクグループは売上高が2兆5,000円規模になる。携帯電話事業への新規参入を目指していた同社は、本来ならユーザー数ゼロから始めなければならなかったのだが、ボーダフォンは1,520万(2005年3月末)のユーザーをもっている。孫社長は「ボーダフォンを買収してよかった。一言でいえば、時間を買うということだ」と話す。
しかし、国内携帯電話市場で、ボーダフォンは厳しい状況にある。売上高でのシェアはNTTドコモが54%、KDDIが29%、ボーダフォンは17%だ。営業利益ではこの格差はさらに拡大して、NTTドコモ65.7%、KDDI27.6%に対し、同社は6.8%に過ぎない。このような事態に陥った理由は、第3世代携帯電話(3G)サービス整備の遅延、端末の品揃え不足などが挙げられている。孫社長は「大きく分けて4つの問題点があった」と指摘、そこで、この分野での成長戦略の柱として「3Gネットワークの増強」「3G端末の充実」「コンテンツ強化」「営業体制/ブランディング強化」を掲げる。
同社はまず今年度内に、3G基地局を4万6,000にまで増やす。「これまで、ボーダフォンは3Gがつながらないところが多いといわれてきたが、一気に解決する」(孫社長)方針だ。「最新のIP技術を活用し、より安い設備投資で実現させたい」(同)としている。3G端末の充実化では、シャープの液晶を搭載したワンセグ対応機「AQUOSケータイ」をはじめ、年内にはパナソニックモバイルコミュニケーション製品も追加される予定だ。コンテンツでは、月間総ページビュー331億を数えるヤフーとの連携を強め、"新生ボーダフォン"の端末から、容易にヤフーコンテンツを利用できる端末を提供する意向だ。
固定電話、ブロードバンドインターネット、携帯電話、この3つを融合させ、いつでも、どこでも、デジタル化されたコンテンツ、サービスを利用できる、FMC(fixed mobile convergence)を、国内の主な通信事業者はこぞって具体化しようとしている。屋内では、固定網を通じてかかってきた電話を、携帯端末で受け、そのまま外出すれば、携帯電話網に自動的に切り変わる。これができなければ、利便性で、他社に遅れをとり、収益性で差をつけられてしまう。いよいよ、ソフトバンクはFMCの事業構造を構想するパズルで、最後のピースを手にしたが、まずは、携帯電話で、先行2社を追撃しなければならない。この秋に始まる番号ポータビリティーを引き金に、激しいユーザーの奪い合いが幕を開ける。
ADSLでソフトバンクは価格破壊を仕掛け、ユーザーを獲得したが、孫社長は「(携帯電話では)価格だけで勝負しようとしているわけではない。価格も含めた付加価値トータルで対応する。Yahoo! BBのときも、データ転送速度でも他社の6倍、IP電話も事実上世界初だった」とする。ただ「具体的戦略はまだコメントするには時期尚早」としている。「時間を買い」陣地を得た同社だが、防御と同時に、攻めも展開するのはたやすいことではない。ただ、競合2社も同社の動きを警戒している。はたして、どんな隠し玉が出てくるか。
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