坂村健・東京大学大学院教授が率いるT-Engineフォーラムは、農林水産省のユビキタス食の安全・安心システム開発事業に協力、RFIDを使った食品トレーサビリティシステムなどの開発を続けている。今年に入り北海道で2カ所、都内で2カ所において店舗試験を実施しており、その詳細が説明された。
今回の実店舗における実証実験は、コープさっぽろ新道店・美園店、サミット三鷹市役所前店ではすでに実施しており、日本橋三越本店でも23日から実験を開始する。実験はコープさっぽろで1月25日から2月23日まで、サミットで2月13日から23日まで、三越では3月2日まで実施する。
実験の内容は、精肉売り場などで使われる自動包装・計量器システム、牛個体情報システムと連携したトレーサビリティ、識別コード(ucode)を使ったトレーサビリティ、ユビキタスID技術をベースにしたICカードを使っての個人別対応システムなどとなっている。
食品のトレーサビリティシステムは、生産から加工、流通、販売という一連の流れにおいて、食品とその情報を一貫して管理する技術で、その食品を誰が作り、どういった処理を経て販売にいたったかなどの情報を個別に追跡できるシステム。食品管理を容易にするとともに、安全性の確認にも役立つ。
T-EngineフォーラムではRFIDタイプのucodeタグとバーコードタイプのucodeタグを使ってこれを実現。2003年から開発を進め、ucodeタグに加えて生産段階での情報入出力に使う携帯情報端末や情報をやりとりするためのシステムなどを完成させてきた。2005年度は、単なるトレーサビリティシステムとしてではなく、「ユビキタス食品情報基盤システム」として完成度を高め、実用化に向けた運用体制の確立も目指している。
今回の実験はその2005年度の開発スケジュールにおける最終段階にあたり、これまでの技術開発を実証するために実施されるもの。
実験では、伊藤ハムなどの畜産業者9社、水産業者として日本水産・マルハらが参加、生産現場でのucode利用から始まり、それをもとに流通、販売の現場でもucodeを使ったトレーサビリティを実施。さらにコープさっぽろとサミットでは精肉売り場などの自動包装・計量器を実験システムと接続してオンライン化、販売時に精肉などをパックする際に、値札シールにucodeを自動的に印字することで消費者もその食品の由来を追跡できるようにした。
同様にパックセンター向けの業務用自動計量器もシステム化、この段階でもucodeの自動印字に対応させた。
このシステムの肝となるのがucodeだ。ucodeは、食品を個別に識別するための単なる番号の羅列で、これをネットワーク経由でユビキタスIDセンターのサーバに問い合わせ、その番号とひも付けられた食品の情報を引き出す仕組み。実際の食品の情報は、コープさっぽろやサミット、三越が用意したシステムから引き出され、ユビキタスIDセンターは番号(ucode)と情報のひも付けだけを行う。
ユビキタスIDと同様のRFIDを使ったシステムに米国発のEPCglobalがあるが、これとは「まったく違う」と坂村教授。EPCglobalは「バーコードの延長で意味を持ったコードを入れようとしている」(坂村教授)。つまりEPCglobalの場合、RFIDタグを読み取るだけで一定の情報が得られる。しかしucodeは単なる数字の羅列なのでそれ自体に意味はなく、サーバから情報を引き出すことで初めて情報が得られる仕組みだ。EPCglobalを使う場合は、その情報をサーバに入れ、ucodeで引き出せばいい、と坂村教授は話す。「ucodeはモノを区別することしかしない。EPCglobalとはケンカするものではない」(同)。
さらにコープさっぽろでは、ICカードを使った個人プロファイル管理システムも実験した。これは、消費者の持つICカードを使い、それにひも付いた個人の情報と購入データを照合して、消費者にアレルギーのある食品が使われているかどうかの情報(アレルゲン)を提供したり、購入した商品に後日欠陥などが見つかった場合は連絡したりといった個別の対応を可能にするシステムだ。
カードにはeTRON技術を使い、公開鍵暗号方式・認証サーバを採用、既存のICカードよりも「はるかにセキュリティレベルが高い」(同)点が特徴で、「世界でもっとも安全な電子金庫カード」(同)。このeTRONカードは、ライフカードの協力でクレジットカード機能も備え、これで購入した商品と、トレーサビリティシステムで追跡した食品の情報、そして個人の情報が連動し、たとえば「購入した食品に問題がありメーカーが回収を開始」といった場合に、買った人に対してメールで注意を呼びかけられる。こうした取り組みは「世界で最初だと思う」(同)。
アレルゲン情報では、個人のプロファイルとして身体条件やアレルギー条件を登録しておき、店頭の端末にeTRONカードと買った食品をかざせば、その食品の中に個人がアレルギーを引き起こす原因となる食品が含まれるかどうか簡単に分かる仕組みになっている。もちろん、この情報は店舗を始めクレジットカード会社にも提供されない。
三越では弁当の今半とともに牛個体識別システムと連動させ、店頭の専用端末で弁当に入っている牛肉の情報を消費者が閲覧できる。弁当にはられたucodeを端末にかざすと牛の個別の情報やトレーサビリティの情報が得られる仕組みになっている。
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