「運輸多目的衛星新2号」(MTSAT-2)を搭載するH-IIAロケット9号機が18日午後3時27分、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の種子島宇宙センターから打ち上げられた。衛星は正常に分離、所定の軌道への投入が確認された。1カ月以内という短期間での"連続打ち上げ"に成功し、商業衛星打ち上げビジネスへの参入を目指すH-IIAロケットにとって、これ以上ない信頼性のアピールとなった。
MTSAT-2は、昨年2月に打ち上げられた「運輸多目的衛星新1号」(MTSAT-1R、ひまわり6号)と同様に、航空管制と気象観測という2つの役割を持つ静止衛星だ。設計寿命は、どちらの衛星も、航空管制ミッションで10年以上、気象観測ミッションで5年以上。機能としては同等だが、製造はMTSAT-1Rが米Space Systems/Loral、MTSAT-2は三菱電機がそれぞれ担当しており、実際には全く異なる衛星となっている。
スペック比較
| 衛星 | MTSAT-1R(ひまわり6号) | MTSAT-2 |
|---|---|---|
| 軌道 | 静止軌道 東経140° | 静止軌道 東経145° |
| 打ち上げ | 2005年2月 H-IIA(7号機) | 2006年2月 H-IIA(9号機) |
| 大きさ | 2.4×2.2×4.0m(展開時全長33.1m) | 2.5×2.4×5.2m(同27.1m) |
| 重量 | 約3.3t(衛星/ロケット分離時) | 約4.65t(同) |
| 姿勢制御 | 三軸姿勢制御方式 | |
MTSAT-2は、航空管制ではMTSAT-1Rとの2機体制での運用となり、気象観測ではMTSAT-1Rの軌道上予備となる。1999年に運輸多目的衛星の打ち上げに失敗した際には、その後日本自前の気象衛星がなくなってしまい、一時的に米国から「GOES-9」を借りるという"失態"まで演じた。気象衛星は今や国民の生活に密接に関わっており、軌道上に予備機を持てた意義は非常に大きい。MTSAT-1Rの5年間の気象観測ミッションが終了した後は、後継としてMTSAT-2の運用が開始され、MTSAT-1Rがバックアップにまわる予定だ。衛星の名称については、順当に「"ひまわり7号"という方向で考えている」(安富正文・国土交通審議官)という。
今年はH-IIAロケット8号機の打ち上げが1月24日に実施されており、それからわずか25日後の連続打ち上げとなった。会見で立川敬二・JAXA理事長は、「短期間に連続して打ち上げられる能力が、我々にあるということを証明できた」と胸を張り、商業衛星打ち上げビジネスへの参入に自信を見せた。また吉野正芳・文部科学大臣政務官は、「日本の宇宙の技術がいかにすぐれているか(を証明できた)」と評価、これを受けて「文科省として、来年度以降は(年間)3機の打ち上げを確保できるよう、予算の獲得に尽力していきたい」と述べた。
打ち上げ回数については、JAXAはさらに意欲的だ。射場周辺の漁業が繁忙な時期を避けるため、JAXAは打ち上げが夏期と冬期に制限されているが、立川理事長は「夏と冬で2機ずつやって、(年間)4機くらいは楽に打ち上げられると思う」とコメント。ただし、ロケットがあっても、打ち上げる衛星がなければ意味がない。「JAXAの衛星だけでは多分足りない」(立川理事長)ということで、「ぜひ民間の衛星を打ち上げられるようにしていきたい」(同)と意欲を見せた。さらに、「打ち上げられる衛星の数が増えれば、年4機ではなく、もっとたくさんのロケットを打ち上げる用意は十分ある」(同)という発言まで飛び出した。
そして今回の打ち上げで注目されるのは、1日の延期もなく打ち上げが実施できたことだ。これまでも前例がないわけではないが、ロケットの打ち上げでは、天候不良のほか、ロケット・衛星や地上設備の不具合など、何らかの原因で当初の予定から遅れることが多い。天候については致し方がないものの、技術面について「打ち上げ頻度が上がれば、クルーの習熟度は上がる。作業ミスは8号機よりも9号機の方が減っている」と、遠藤守・H-IIAプロジェクトマネージャは連続打ち上げによる"効果"を指摘している。
H-IIAロケットの信頼性について、6号機の失敗の後での3機連続成功によって、一定の評価を得た形だ。しかしまだ合計でも9機でしかなく、単純に信頼性を評価するのは難しい状況ではあるが、遠藤H-IIAプロマネは「具体的な数字で言える段階ではないが、H-IIAはいい仕上がりになりつつある。これから年3~4機の打ち上げを経験することによって、安心して見ていられるロケットになる」と自信を示した。
しかし一方で、「完全に問題点が排除できたとは考えていない」とも立川理事長は述べており、「ロケット自身は大変(複雑)なシステムで、いつ不具合が出てもおかしくない。打ち上げ前にその不具合を片づけて、万全の体制で打ち上げる、という考え方で進めていきたい」と、気を引き締めることも忘れなかった。
JAXAは引き続き、今月21日には赤外線天文衛星「ASTRO-F」をM-Vロケット8号機で打ち上げる予定。
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