NTTドコモ、フジテレビに2.6%出資、「ワンセグ」で協力へ

    大川淳  [2005/12/21]

    NTTドコモは、フジテレビの株式を77,000株取得すると発表した。取得後の持ち株比率は2.6%で、取得金額は207億1,300万円だ。フジの保有する自己株式を譲り受ける。2006年4月に開始される、携帯・移動体向けの地上デジタルテレビサービス「ワンセグ」などを念頭に、通信と放送を融合化させたサービスの提供で相互協力する。

    両者は「通信と放送が相互に連携することで、新たな市場を創出し、魅力あるサービスなどの提供を検討するためには、それぞれの事業についてのノウハウなどを共有し、より強固なパートナーシップを推進していくことが必要であると考え今回の合意にいたった」としている。

    フジテレビは「通信を利用した新規サービス開発促進の一環として、NTTドコモとの事業上の関係強化を目的に、自己株式を同社に譲渡する。今後、両社で放送・通信連携の新しいサービスの開発について協議を行なう」意向を示している。今回の株式譲渡による収益は「新規事業開発や既存事業の強化な どにかかわる投融資・設備投資、借入金返済、運転資金に充当する予定」としている。

    今年2月、フジテレビは、同社の株式22.5%を保有するニッポン放送の発行済み株式約35%を電撃的に取得されるというかたちで、ライブドアから「業務提携」の提示を受けた。ライブドアは、フジテレビの大株主であるニッポン放送の経営権掌握により、フジテレビへの影響力行使をねらったわけだが、同放送のもつフジテレビ株をソフトバンク・インベストメントに貸し出すとの策で、ライブドアが目指した「IT/インターネットと放送の融合」は日の目を見なかった。その後、楽天がTBSの株式15.46%を取得、経営統合を持ちかけたが、これも頓挫した。

    放送業界は、これらのようなIT企業の主導権を握られることには強い警戒感を表しているが、やはり、インターネット、広義では通信との融合に対して、何らかの策を講じることは避けて通れない道だ。いま、テレビが収益を上げる構造は、放映する番組中やその合間に広告を挿入し広告費を稼ぐことが軸になっている。テレビは現状、広告市場の王者だ。2004年の広告市場の媒体別内訳は、テレビが2兆400億円、新聞が1兆500億円、雑誌が3,900億円。これまで、4番目はラジオだったが、インターネットは1,814億円で、1,795億円だったラジオをはじめて追い抜いた(電通の調査による)。

    依然、テレビ広告と比べれば、インターネットの比重は小さい。しかし、2004年の実績では対前年比成長率でテレビは104.9%だが、インターネットのそれは153.3%だ。拱手傍観していれば、テレビに対して脅威となる可能性がないとはいえない。だが、テレビ側として逆にインターネットを利用できれば、益を得ることにつなげることもできるだろう。インターネットで番組を配信するに当たっては、さまざまな事業構造が考えられる。

    先日、ソフトバンクは、ヤフーと合弁で新会社「TVバンク」を設立した。映画、スポーツ、音楽、アニメなど多様なコンテンツ3万本をそろえ、動画のネット配信のポータルを目指している。ソフトバンクでは「広告収入、視聴料収入は、手数料を除き、視聴回数と売上高に応じてTVバンクとコンテンツパートナーで分け合う。ネットでの動画広告の成長性」を強調している。ソフトバンクの孫正義社長は「TVバンクと放送局は(このビジネスモデルで)価値を共有できる」としており、テレビ局各社がネット配信に足を踏み入れやすい環境つくりを図っている。

    また、NTTドコモとフジテレビが今回の資本提携の目的のひとつとしている「ワンセグ」も、テレビ業界にとっては重要になる。携帯電話により、番組の視聴できる時間、機会、場所が大きく広がり、これまでとは異なった視聴者獲得の引き金になりうる。やはり、インターネット、携帯電話、ひいては通信との融合は必須だ。放送業と通信事業者の資本提携は、TBSが、携帯電話に新規参入するイー・アクセスの子会社イー・モバイルに出資している例もある。一方、KDDIの小野寺正社長は、NTTドコモとフジテレビの提携について「KDDIは(放送会社への)出資はしないかたちで提携する。テレビ局はコンテンツプロバイダーなので、できるだけ多くの視聴者を求めている。(特定の企業だけに限った連携で)クローズドにしてしまうのはどうなのか」と指摘している。出資はしないが提携はしていく可能性を示唆した。いずれにしても、放送と通信の融合は少しずつだが、前に進む兆しが出てきた。

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