PHSのウィルコムが元気だ。音声定額や新規端末の投入などの積極的な戦略で毎月順調に契約者数を拡大。実質的に唯一となったPHS事業者として好調に推移している。11月30日には現状と今後の戦略に関する説明会が開催され、ウィルコムの事業展開が解説された。
なお、説明会の場では、国内で初めてOSにWindows Mobileを採用した高機能PHS「W-ZERO3」が12月9日から予約開始、14日から販売を開始する予定であることが明らかにされた。
ウィルコムは、KDDIの傘下から米投資会社カーライル・京セラらへ資本が移り、社名もDDIポケットからウィルコムに変わったことで、KDDIのデータ通信中心の戦略から転換して音声にも注力。音声の定額制を始めたほか、公衆無線LAN、ADSLサービスも提供。「W-ZERO3」を始め、端末も豊富にラインナップさせた。
ウィルコムの音声定額は、ウィルコムユーザー同士、端末でのEメール送受信が月額2,900円で使い放題になるサービスで、一般加入電話や携帯電話あての通話は別途料金がかかるが、着実に利用者数をのばしているようだ。
PDA機能を強化した「W-ZERO3」などでは、PHSのコア通信モジュールをカード化したW-SIMを使い、W-SIMを入れ替えるだけで、同じ契約で自由に端末を交換して利用できるようにした。このW-SIMの利用シーンとして「子供と親のニーズをかなえる」と同社。現在、子供を持つ親の7割以上が、小学校入学時から安全・安心のために子供に携帯電話を持たせたいと考えているそうで、反対した人は高機能化による教育への悪影響を心配していたという。
そこでウィルコムは「安心だフォン」を開発、発信先を3カ所に限定し、防犯ブザー、位置情報サービス、緊急呼び出しサービスを搭載することで、安心・安全のために配慮した。「子供の安全のためと理解が進んでおり、安心だフォンだけなら持ち込み可にしている学校がある」(同社常務執行役員・土橋匡氏)。これに対してW-SIMを使えば、学校外では安心だフォン、学校では教育/Eラーニング端末、といった使い分けが可能で、子供が音楽ケータイのような端末を求めても簡単に端末を切り替えられる。
子供とは異なり、ビジネスパーソン向けには高機能なW-ZERO3を紹介。重さ220gながら、WordやExcelなどのPCアプリケーションのデータを閲覧・編集でき、フルブラウザでPC向けのサイトも閲覧できる。新たにOperaの機能限定版を搭載することも明らかにされ、グループウェアなどのサーバーアプリケーションも十分利用できる。「7~8割の人のPCの使い方はカバーできる」(同社執行役員・瀧澤隆氏)。
ウィルコムは「定額」と「低額」という2つの"テイガク"で法人向けを強化。10月末現在で契約の46%が法人契約という特殊な状況だが、テイガクのウィルコムを選択することで、企業の通信費の4割を占める携帯電話料金を削減するというわけだ。
携帯電話とは異なり、PHSはPBXによる内線電話を構築可能で、特にウィルコムは小型の基地局「ナノセル」を使うことで、さらに低コストでネットワークを構築できる。実際、建築中のビルで、工事関係者用の内線を構築したところ、半額以下のコストで構築できたそうだ。
ウィルコムが今後目指すのは、「FMC(Fixed Mobile Convergence)」の実現だ。FMCとは固定網と移動網を融合させることだが、既存のFMCの概念は、「事業者のニーズばかりで、ユーザーのニーズが不明」(同社執行役員・喜久川政樹氏)と指摘。顧客のニーズにあったプロダクトを提供することによる「使いやすさ」、2つのテイガクによる「コスト」、固定/移動、携帯/PDA/PCといった状況を問わずにWebやメール、グループウェア連携が利用できる「Web環境の統一」をキーワードに挙げ、ライフスタイル、ビジネススタイルに最適な、ユーザーの求めるFMCを提供することが目標だという。
その実現のために、ラインナップを拡大、「データ定額」の提供、ADSLの提供、通常の基地局であるマイクロセル、小型のナノセル、公衆無線LANという複数の通信環境の提供で環境を構築。自社内でまかなえないサービスについては、他の企業と提携することでカバー。これにより、公衆無線LAN(NTTコミュニケーションズ)、ADSL(アッカ・ネットワークス)を提供する。提携企業の中でも、ジュピター・テレコムが自社ブランドでPHS事業を実施するように、他社への回線卸事業も実施。「事業がかぶらない、Win-Winの関係が築ける企業と提携する」(同)考えで、たとえばADSL回線事業者では、NTTグループ、Yahoo! BB、イー・アクセスがモバイル通信を手がけている、または今後手がけていくため、ADSL回線はアッカのものしか使わない予定だという。
FMCに関連して、喜久川氏はVoIPによる定額化にも言及。将来のサービス展開を視野に入れて検討しているというものの、「今すぐにはできない」(同)という。ウィルコムのバックボーンはすでにIP化されているが、それ以外の固定網などのIP化については、相互接続、またはIP電話サービスの卸売りを利用する方法が考えられるというが、現時点ではまだ検証段階だとした。
また、プロモーション展開については、従来の定額サービスを強調したものに加え、「高音質」「低電磁波」も取り上げ、たとえば病院内でも使える、子供でも安心して使える、といった点も訴求していきたい考えだ。
来年以降、3社の新規参入、ナンバーポータビリティの開始と激変する携帯電話業界だが、新規参入については、市場が活性化すると歓迎の意向を示しつつ、新規参入組が音声定額を開始した場合にはパイの奪い合いになる可能性も示唆する。ただ、すでに人口カバー率99%近いウィルコムに対して、新規参入組は利用可能エリアが狭い点と、他社の音声定額については、「定額には工夫が必要。ウィルコムはマイクロセルで周波数が節約されている」(同)として、料金とエリアがそろわない限りは脅威ではないとの認識を示した。
ナンバーポータビリティは、当初KDDI傘下でのデータ通信重視の関係からウィルコムは対象となっておらず、少なくともサービス開始当初はナンバーポータビリティに参加しない。今後については、コストの問題などを検討しつつ決める意向だ。
また、ウィルコムは29日に総務省から次世代PHS向けの予備免許を取得、本社が入るビルの屋上にアンテナを設置、実験を行う。次世代PHSではニーズの高い高速化を主眼に、OFDMAシステムの電送実験などを実施していく。
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