ISSCC 2006 - 過去最大の規模で来年2月に開催

    福田昭  [2005/11/29]

    ISSCC(International Solid-State Circuit Conference)は、半導体回路技術に関する世界最大の国際会議である。毎年2月に米国で開催され、世界各地域から3000名を超える技術者が集まる。2006年のISSCC(「ISSCC 2006」)は、2月5~9日にサンフランシスコのマリオットホテルで開催される。

    ISSCCで発表される技術論文は、技術者がISSCC委員会に投稿した論文の中から審査によって選ばれる。毎年、投稿した論文の半数以上が落選する。言い換えれば、ISSCCの講演論文に選ばれることは、開発成果(投稿論文)が一定の評価を得たことを意味する。採択論文が決定すると、ISSCC委員会は米国、アジア、欧州の各地域で記者会見を開催する。日本では、アジア地区でISSCCの運営にあたっているISSCCアジア地区委員会(委員長:飯塚邦彦氏(シャープ))が11月28日に東京の経団連会館で記者会見を開催し、ISSCC 2006の概要を説明した。

    記者会見で挨拶するISSCCアジア地区委員長の飯塚邦彦氏

    ISSCC 2006の採択論文数は255件。過去最大の論文数である。投稿論文数も680件と過去最大であり、採択率は37.5%と前回のISSCC 2005に比べて下がっている。ちなみにISSCC 2005の投稿論文数は578件、採択論文数は233件、採択率は40.3%である。今年のISSCCよりも、来年のISSCCの方が狭き門になった。

    255件の採択論文を国/地域別にみると米国が圧倒的に多い。117件で半数近くを占める。次いで日本の40件、台湾の18件、韓国の16件、ドイツの13件の順になる。発表者別ではドイツのインフィニオンテクノロジーズが13件と最も多く、米IBMと米インテル、台湾国立大学がそれぞれ11件で続く。日本企業ではソニーの6件が最も多い。

    国/地域別の採択論文数

    企業と大学/研究機関の採択論文数

    発表者別の採択論文数。3件以上を発表する組織のみを挙げた

    ISSCC 2006のテーマ。「モバイル社会のためのマルチメディア」

    ISSCCのプログラム委員会(プログラムコミッティ)は、デジタル論理回路、メモリー回路、アナログ回路、信号処理回路といった専門分野別のサブコミッティによって構成されている。「デジタル(Digital)」、「メモリ(Memory)」、「アナログとRF(Analog and RF)」、「データ変換器(Data Converters)」、「無線通信と高周波通信(Wirelss and RF Communications)」、「信号処理(Signal Processing)」、「有線通信(Wireline Communications)」、「イメージセンサ/MEMS/医用/ディスプレイ(Imagers/MEMS/Medical/Display)」、「将来技術(Technology Directions)」の9つのサブコミッティがある。記者会見では各サブコミッティの委員が、分野別のハイライトを紹介した。

    「デジタル(Digital)」では、マイクロプロセッサやクロックなどの汎用デジタル論理回路を扱う。国/地域別では米国が圧倒的に強い分野でもある。マルチコアプロセッサチップの論文やプロセッサ内部回路の論文が高い評価を得た。マイクロプロセッサ分野の注目企業であるインテル(Intel)とAMD、IBMの採択論文を少し紹介しよう。

    Intelは、16MBと巨大な3次キャッシュを搭載したデュアルコアXeon MPプロセッサを発表する(講演番号5.3)。65nmプロセスで製造したチップの面積は435平方ミリメートルと大きい。13億2800万トランジスタを集積する。各プロセッサコアは2つのスレッドを同時に処理し、1MBの2次キャッシュを装備する。Intelはまた、9GHzときわめて高い周波数で動作するPentium 4プロセッサ用整数演算ユニットについて述べる(講演番号5.7)。

    AMDは、DDR2メモリコントローラを内蔵したデュアルコアのx86互換64ビットマイクロプロセッサを発表する(講演番号5.4)。90nmプロセスで製造したチップは2.6GHzで動く。電源電圧は1.35V、消費電力は95Wである。

    IBMは、Powerアーキテクチャのデュアルコア64ビットプロセッサチップとシングルコア64ビットプロセッサチップを発表する(講演番号5.5)。デュアルコアチップはクロックドメインと電源ドメイン、1MB 2次キャッシュをプロセッサコアごとに装備する。ひずみシリコンの90nm SOI技術で製造される。シングルコアチップは、デュアルコアチップから1つのコアを切り出して実現する。IBMはまた、POWER6プロセッサ向けの固定小数点演算ユニットと倍精度浮動小数点演算ユニットについて講演する(講演番号24.1)。

    「デジタル(Digital)」では、マイクロプロセッサやクロックなどの汎用デジタル論理回路を扱う

    マルチコアプロセッサの発表例。講演タイトルの末尾にある数字は講演番号(以下同じ)

    65nm CMOSによる回路技術の発表例

    メモリ関連のハイライト

    不揮発性メモリの発表例

    DRAMとTCAMの発表例

    SRAMの発表例

    高周波回路およびPLLのハイライト。UWB用CMOS低雑音アンプ(LNA:low noise amplifier)の発表が相次ぐ

    「メモリ(Memory)」では、メモリチップや混載用メモリ回路などを扱う。大容量フラッシュメモリ、高速DRAM、高速オンチップキャッシュなどの技術論文が高く評価された。「アナログとRF(Analog and RF)」では、高周波回路やアンプ、PLL、VCOなどのアナログ回路技術を扱う。今回は、UWB向けのCMOS低雑音アンプが注目の発表だとする。

    「データ変換器(Data Converters)」は、アナログデジタル変換器(A-D変換器)とデジタルアナログ変換器(D-A変換器)を扱う。ダイナミックレンジを広げたオーバーサンプルA-D変換器(講演セッション3)や、変換ステップ当たりの消費電力を1pJ未満に下げたパイプラインA-D変換器(講演セッション12)などの論文が高く評価された。

    「無線通信と高周波通信(Wirelss and RF Communications)」では、無線通信や地上デジタルテレビなどに向けた回路技術を扱う。UWB用トランシーバチップ(講演セッション6)や60GHz~77GHzのミリ波帯通信用チップ(講演セッション10)、マルチバンド無線LANチップ(講演セッション20)、携帯電話機用テレビチューナチップ(講演セッション33)などが注目すべき論文として挙がっていた。

    「信号処理(Signal Processing)」では今回、ベースバンド処理に関するセッション(講演セッション14)と低消費電力マルチメディア処理に関するセッション(講演セッション22)が設けられた。ここではUWB通信の物理層とMAC層を集積したトランシーバチップが高い評価を受けた。ソニーが開発したDSSS(direct sequence spread spectrum)方式のデジタルベースバンドチップである(講演番号14.5)。

    「有線通信(Wireline Communications)」は、銅線や光ファイバなどの有線を介した通信用のLSIを扱うセッションである。最近の技術動向が概観できる10Gビット/秒トランシーバの講演(講演番号4.1)や、光変調波長多重マルチプレクサ/デマルチプレクサチップの発表(講演番号13.7)などが注目すべき論文だとしていた。

    「イメージセンサ/MEMS/医用/ディスプレイ(Imagers/MEMS/Medical/Display)」では、高性能のCMOSイメージセンサが数多く登場する(講演セッション27)。OLED(organic light emitting diode)ディスプレイドライバ(講演番号9.2)や人工網膜用無線データ伝送チップ(講演番号2.5)なども高い評価を受けていた。

    「将来技術(Technology Directions)」は、5~10年先を見据えた技術を発表するセッションである。今回は、有機半導体技術に関する講演(講演セッション15)が急増した。また、RF IDチップに関する発表が相次ぐ。このほか、生体の神経を流れる信号を100チャンネル収集して無線伝送する生体埋め込みチップ(講演番号30.1)人体を通信路とする低消費パルス通信チップ(講演番号30.4)、放射性同位元素を利用した発電回路(講演番号23.1)といった講演が興味深い。

    アナログデジタル変換器(A-D変換器)の講演ハイライト

    無線通信用チップの講演ハイライト

    UWB通信の物理層とMAC層を集積したトランシーバチップの概要。アドホックネットワークを構築できる。ソニーが開発した。

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