地底で作業服のファッションショー? 建設中の首都高トンネルが一般公開

      [2005/10/16]

    首都高速道路東京建設局は14・15日、現在建設が進められている首都高速中央環状新宿線のトンネル内を公開するイベント「東京トンネリックス」を開催した。応募者から抽選で選ばれた300名の一般参加者に加えて工事現場周辺の住民などが招待され、トンネルの見学と建設技術の説明が行われたほか、14日には現場をステージにしたファッションショーも開かれた。

    首都高速中央環状新宿線は、首都高速中央環状線(一部開通)の西側部分、渋谷-新宿-池袋を結ぶ11kmの区間で、ほぼ全線がトンネル構造で建設される。現在、東名高速や中央道など東京の西側に接続している路線から東北道や常磐道など北側へ接続する路線へ向けて走行する場合、東京の中心部を走る首都高速都心環状線を経由しなければならないため、本来都心に用事のない交通までが都心環状線に集中し、慢性的な渋滞状態となっている。都心環状線よりも外側に新しい環状線を建設することで交通が分散し、首都高速全体の流れがスムーズになることが期待されている。

    渋谷区初台・山手通り脇の作業帯が入り口

    この階段を下りる

    イベントが行われたのは渋谷区初台の縦坑と、そこを起点にシールドマシンが目下掘削を行っている代々木シールドトンネルの中。道路脇の作業帯内に設けられた階段を下りると、道路にかぶせられた覆工板と呼ばれるフタの下に隠された縦坑が見えてくる。この縦坑から、トンネルの壁を構成する部品である「セグメント」などの資材を30m下の地下へ降ろしていく。

    地上から資材を降ろすための縦坑

    底に黒く縦長に見える部品が降ろされている。これは鋼鉄製セグメント

    地上の道路面から、円形になっているトンネルの底面までの高低差は30m。写真のつなぎ目が見苦しいのはご容赦願いたい

    さらにいくつかの階段を下りると、地下30mを走る代々木シールドトンネルの入り口が見えてくる。トンネルの直径は約12mで、一般的な地下鉄や、弊誌でも以前レポートした日比谷共同溝と比べても大きいものだ。ここ初台から出発したシールドマシンは約2.7km南の松見坂縦坑を目指して進んでおり、現在約6割の掘削が完了している。内回り、外回りの2本のトンネルが建設されているが、セグメントの素材がそれぞれ鋼鉄製、コンクリート製と異なっており、鋼鉄のトンネルは黒っぽく、コンクリートのトンネルは白っぽく見える。今回のイベントではそれぞれを「黒トンネル」「白トンネル」と名付け、別々のイベント会場に仕立てていた。

    縦坑から北側に延びている西新宿シールドトンネル。こちらはすでに貫通している。区間が600mと短かったため、内回り・外回りで2台のシールドマシンを使うのではなく、北から南に向かってまず1本のトンネルを掘り、この縦坑に到着した後、反転してもう1本を北へ掘っていったという

    そして南側には現在掘削中の代々木シールドトンネルが延びる。こちらがイベントの会場

    「黒トンネル」では、14日に地底ファッションショー「土木がファッションになる日」が開かれた。日本の土木作業現場ではおなじみのニッカーボッカーにヒントを得てドイツのファッションデザイナー、ベルンヘルト・ウィルヘルム氏(ドイツ)がデザインした衣装を披露。昨年のパリコレクションで発表され話題となったものだが、東京トンネリックス制作委員会が「土木スタイルのファッションをぜひ現場で」とウィルヘルム氏に問い合わせところ、同氏自身から企画への賛同が得られ、衣装を無償で借り受けることができたのだという。

    「黒トンネル」に入っていく

    光と音の演出の中、ウィルヘルム氏デザインの衣装が列ぶ

    しかし、衣装は送ってもらえても、パリコレのスーパーモデルまで一緒に借りてくることはできない。そこで今回のショーでは、なんと首都高速道路の職員と現場の作業員の方々がモデルとなってトンネル内に登場した。欧米人のモデル体型に合わせてデザインされた大柄な衣装だったので、体格のいい人を選んで、頼んで着てもらったという。15日はファッションショーはなかったが、黒い内壁を活かした音と光のインスタレーション「鉄とコンクリートのやすらぎ」でトンネル内が演出され、マネキンによる衣装の展示と前日の様子のビデオ上映が行われた。

    取材を行った15日は展示のみだったが、前日にはショーも行われた

    ショーの模様はビデオ上映もされていた。なかなか大胆な衣装もあったようだ

    一方「白トンネル」では、施工主の首都高速道路をはじめ工事に関係する多数の企業が今回投入された技術を紹介する展示企画「トンネリングテクノス計画」が2日間にわたって開催された。中央環状新宿線ではトンネルが地下鉄大江戸線のわずか3.5m上まで接近する区間や、重要建造物があって大きく地面を開削できない場所にインターチェンジが設けられているなど、難工事を要求される場所が多い。そのために投入される技術や工法に加えて、工事現場周辺への騒音や振動の影響を抑える技術なども紹介されていた。特に今回のイベントには沿線の住民も招待されており、技術者の説明に熱心に耳を傾ける参加者が目立っていた。

    今度は「白トンネル」へ入ってみよう

    この1.6kmほど先でシールドマシンが掘削を行っている。未貫通のトンネルは空気が流れないので、上のパイプで空気を送っている

    シールドマシン反転の工程と、そのときシールドマシンを乗せた台を転がすために敷かれたベアリングのボール

    シールドマシンの先端面に付くタングステン合金製のカッタービット。最初は直方体だったが、2km掘り進めるとすり減って丸くなってしまう

    インターチェンジ部分では2本のトンネル間にさらに空間が必要になり、通常は地上から開削工事を行う。しかし今回は地上の交通を止められないため開削できない場所もあり、鉄製のパイプを並べてトンネル間に屋根をつくり土圧を支えることで、地下での作業を可能にした。図は富ヶ谷出入口の例

    参加者はみな熱心に説明を聞いていた

    中央環状新宿線は2006年度末の開通を目指しており、首都高速道路によれば、開通後は朝のピーク時間帯で首都高速東京線の渋滞が最大約6割解消、従来一般道で約50分かかっていた渋谷-池袋間が中央環状線経由では約20分に短縮し、渋滞の解消にともなって二酸化炭素の排出量が年間25,000トン削減されると試算している。建設費用は1kmあたりおよそ700億円、直上を走る一般道の拡幅工事も合わせると1kmあたり1,000億円とされる巨額プロジェクトだけに、首都高速道路ではそのメリットをPRし広く理解を得たい姿勢だ。

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