「電波不足への特効薬はWiMAXとPHSの組み合わせ」 - 野村総研の提言

    大川淳  [2005/07/27]

    既存携帯電話事業者の高速化の試み、新規参入を希望する事業者の活発な動きなど、無線通信をブロードバンド化しようという取り組みが出始めている。野村総合研究所(NRI)の調査によれば、2008年には情報家電など携帯電話以外の端末による需要が約2,150万端末に上ると見込まれるが、無線ブロードバンド需要の拡大が進むと電波帯域が不足し、これらの需要が満たせなくなる可能性があるという。NRIは、1.9/2GHz帯までの帯域を視野にいれ、WiMAXをPHSと組み合わせたシステムを適用することが、この問題の解決策になると提言している。

    同社は、無線ブロードバンドサービス対応端末を3つの領域に分類し、2008年にはそれらの台数が、「パソコン系モバイル(ノートパソコン、PDAなど主に汎用的なデータ通信向け)」が770万、「エンターテインメント等専用系モバイル(携帯AVプレーヤー、デジタルカメラ、携帯ゲーム機、パーソナルセキュリティ端末など)」が680万、「宅内無線接続(家庭内利用のパソコンや、デジタルビデオレコーダー、ゲーム機、大型テレビなどの情報家電)」が700万にそれぞれ達すると予測する。

    これらは合計約2,150万台で、同社の予測では2006年には約330万台、2007年には約1,250万台となっており、ゲーム機、携帯型デジタル音楽プレーヤー、そのほか情報家電が続々と無線通信機能を備え、現行の携帯電話以外の端末が今後3年で急激に伸長するとの見通しだ。

    ところが、大きな問題が浮上してくる。同社によれば「都心部のデータ通信では、すでにかなり逼迫した状況になっている」(同社情報・通信コンサルティング二部上席コンサルタント 桑津浩太郎氏) 状況で、データ通信に限れば、都心部の需要密度は、郊外部の10~30倍を超えるという。定額制の高速データ通信が今後導入された場合、2005年に2GHz帯が割り当てられれば1,500万端末は収容できるが、それ以降の非携帯電話の端末までをまかなうことは困難だと同社は見込んでいる。

    携帯電話で、第3世代と第4世代の間に位置づけられる「スーパー3G」に20MHz分が割り当てられたとしても「既存の携帯電話端末の増速化でいっぱいになる。また、無線LANでも対応しきれない」(桑津氏)ことから、米国、韓国では2006年にも商用化されると言われるWiMAXの採用を同社では提唱する。

    WiMAXは、電波の到達距離が十数kmにおよび、データ伝送速度は数十Mbpsになるといわれる。使用する電波の周波数帯は米国が2.5GHz帯、韓国が2.3GHz帯を想定しているが、同社は「国内では、PHSの使用帯域である1.9GHz帯や、TDD(Time Division Duplex:1つの周波数帯を時間ごとに細分化して交互に送受信を行う方式)向けの2GHz帯でWiMAXを先行導入し、PHSの高速化を進め」(同)、両者を融合させた方式を考えるべき、とする。世界標準候補のWiMAXを取り入れると同時に、日本発の技術であるPHSを用いれば、「日本がイニシアチブを残せる」(同)

    同社が新形式を掲げる理由はもうひとつある。日本は有線通信では、ADSLの普及や企業間のサービス競争によって利用料金が大幅に下がっており、同社によると、2000年頃には1Mbpsあたりの単価は月額1,034円だったが、2005年には233円、2007年には103円になるとみている。ところが携帯電話は2007年でも5.383円と予想、新規参入による価格競争があっても、3,000円程度に下落するに留まるという。このままでは「無線は有線の50倍も高額になる」(同)

    同社がモバイルユーザー向けに実施したアンケート結果では、10Mbps級の定額制サービスがあった場合、月6,000円であれば、15%が利用したいと考えている。この場合必要になる帯域は17MHz。同3,000円であれば、60%が利用したいとしており、こちらは38MHzを要するという。同社は新方式により、40MHz相当の帯域で10~30Mbpsのサービスを実現可能とみており、このような新たな試みが無線と有線の価格差縮小につながると考えている。

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