ウィルコムは、PHSの無線通信部分を汎用部品化した「WILLCOMコアモジュール」を投入すると発表した。通信機器メーカーだけでなく、多数の幅広い企業がPHS端末を製品化しやすくすることにより、端末の数量と品種を増やし、PHS市場の拡大と無線通信の潜在市場開拓を目指す。このモジュールを採用した電話型、USB型のデータ通信端末は年末から投入される予定だ。また、同モジュールを活用した新しい端末、新たな事業展開を目指す企業を支援する団体「WILLCOM コアモジュール フォーラム(仮称)」を2005年度中に設立する。ハード/ソフトベンダーを中心に、すでに46社が同社の構想に賛同の意思を表明しているという。
「WILLCOMコアモジュール」は、同社が新たに開発した「W-SIM(ウィルコムシム)」やベンチャー企業のCSCが展開している「CSCエンジン」などの総称で、今後ウィルコムは「W-SIM」を利用した端末を「WILLCOM SIM STYLE」と名付け、ブランド化していく意向だ。
「W-SIM」は、超小型アンテナを内蔵する無線の音声/データ通信を担うとともに、電話帳などメモリ機能も搭載しており、電源を入れたままでも端末本体への抜き差しが可能。外形の大きさは、25.6×42×4mm、重量は10g以下で、18ピンインタフェースを備える。通信方式は、回線交換/パケット通信、データ通信速度は最大で128kbps、ユーザーメモリは約600KBで、電話帳700件分程度を収録できる。台湾およびタイでの国際ローミングに対応している。価格は未定だが、1万円は超えない模様だ。また「W-SIM」によるPHSの料金も検討中だ。
「CSCエンジン」は、データ通信に特化した組み込み型モジュールで、32kパケット通信、PPP、TCP/IP通信機能を搭載。これにスイッチやLEDなどを接続して端末機を構成する。40ピンインタフェースをもつ。CSCは「CSCエンジン」をさまざまな機器に組み込み、家庭、教育、玩具など幅広い領域で、さまざまなアプリケーションサービスを実現する「MyAccessサービス」を推進している。
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ウィルコム 八剱洋一郎社長 |
ウィルコムの八剱洋一郎社長は「世の中には数多くのメーカーがあるが、モバイル製品を手がける企業は少ない。通信機器をつくるにはかなり難しい技術が必要だったからだ。無線機能のモジュール化で、容易にこの分野の製品をつくれる環境を提供したい」と述べ、これまで、通信関連市場に参入できなかった企業のハードルを低くして「潜在市場」の掘り起こしをねらう。同社は、電話機、データ端末、PDAなどの用途だけでなく、医療機器、家電、玩具といった領域の製品、サービスの登場に期待する。
「WILLCOM コアモジュール フォーラム(仮称)」は、同モジュールの普及を目指す。加盟した企業には、「W-SIM」などのモジュールやウィルコムネットワークの技術仕様、情報が提供されるほか、機器の検証など同社の技術支援を受けることができる。さらに、モジュールに対するさまざまな要望の窓口としても位置づけている。
同社では、「構想の趣旨を説明した段階」(八剱社長)で「これらの企業が必ず商品を出すかどうかまでは決まっていない」(同)が、フォーラム設立の主旨に賛同している企業は46社あり、富士通、カシオ計算機、京セラ、沖電気工業、東芝、日本アイ・ビー・エム、日本ヒューレット・パッカード、日立製作所、三洋電機などハードメーカーとともに、マイクロソフト、ACCESSなどのソフトベンダーも名を連ねる。注目されるのは、今回の発表と同日にアップルコンピュータが加わったことだが「具体的な取り組みは未定で、今後検討する」(アップルコンピュータ広報)としている。
PHSは、情報通信産業のなかでは瀕死の状態に陥った、はずだった。しかし、いまやウィルコムの躍進ぶりには瞠目させられるものがある。昨年、PHSの再生構想を表明、この2月には旧DDIポケットから現社名に改称、そして3月に音声定額制の受付を始め、5月にサービスを開始した。この効果は大きく、同社サービスへの加入者純増数は4月が6万、5月が6万2,000、6月が8万で、この3カ月で20万伸ばした。
累計数は323万に達した。「旧DDIポケット時代、なかなか300万を超えられず290万台で推移していたが、ウィルコムになってから3月には突破できた。PHS加入は極めて順調」(八剱社長)だ。八剱社長はすでに、音声定額制の効果で100万加入増を目指す意向を示しており、この3ヶ月の状況をみれば「年間100万増の目標は、かなりに現実に近づいている」(同)が、同社は「従来の目標より大きなターゲットを見据え、潜在市場を開拓していきたい。それができるのが今回の戦略だ」(同)とする。「加入者数500~600万を見込めば、製品のバリエーションを増やさなければならないが、いまの開発体制では限界がある」(同)からだ。
右肩上がりを続ける同社だが、PHSを取り巻く環境は平穏というわけではない。既存事業者、参入を目指し事業者とも、第3世代携帯電話の通信速度をいっせいに引き上げる方向も、PHSにとっては厳しい要因となる。これに対し八剱社長は「1Mbps、1.5Mbpsも技術的には可能だが、時間はかかる」としたうえで「10ヶ月で現行の1.5倍の増速は十分できる。2年以内で3~4倍にすることを目指す」と話す。移動体通信市場は、携帯電話に番号ポータビリティ制が導入され、新規事業者が参入することから、ユーザーの奪い合いが激化することが予想される。これからが、同社の正念場となる。
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