国・ISP・ユーザー…迷惑メールにどう対応するか - 総務省が対策まとめる

小山安博  [2005/06/20]

迷惑メールの対策について協議してきた総務省の「迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会」は、最終報告書案をとりまとめ、意見募集を開始した。減る気配のない迷惑メールに対して、どのような対策が考えられるのか。最終報告書案では、政府、ISP、ユーザー、国際協調といった観点から、迷惑メール対策について提言をまとめている。

最終報告書案によれば、2001年春ごろから迷惑メールが急増、社会問題化し、同年11月に「迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会」が設置され、その提言を受けて、2002年4月、特定電子メール法が議員立法によって成立、7月から施行された。

同法においては、「未承諾広告※」の表示義務や、総務大臣による措置命令、迷惑メールの申告を受け付ける指定法人として日本データ通信協会が規定されるなど、対応を進めていたが、いまだに3万件/月を超える迷惑メールの情報が同協会に寄せられており、措置命令も過去3回しか発令されておらず、迷惑メールの撲滅には至っていない。

一方で民間の取り組みでは、特に携帯電話事業者の矢継ぎ早の対策、回線の利用停止措置により、携帯電話発の迷惑メールに関しては「ほぼ撲滅した」(KDDI)というのがキャリア側の認識だ。しかし最終報告書案は、最近はPC着の迷惑メールが増加傾向にあるとし、ゾンビPC(ボット・ボットネット)を使うなどの悪質化・巧妙化が進んでいる、とする。米Symantecの調査でも、全電子メールに占める迷惑メールの割合が、2003年初頭の40%強から、今年初めには69%に達した、と指摘しており、世界的に増加傾向にある。

それに伴い、経済協力開発機構(OECD)や国際電気通信連合(ITU)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)で国際的な取り組みが行われており、世界各国のISPに対してゾンビPCに関する注意喚起を行う、といった活動が実施されている。

そうした状況で、国内ではどんな対策がとられるべきなのか。政府は今年3月の通常国会で、特定電子メール法の改正案を提出、同案は5月に公布されており、今年の秋ごろまでには施行される見込みだ。これは、同研究会の中間とりまとめを受けたもので、この改正により、事業者用のメールアドレスも保護の対象となる。空メール、知人を装ったメールの送信も禁止され、直罰が可能になるほか、ISPなどがより柔軟に迷惑メール送信業者のサービス停止をしやすくなる。

また、空メールや知人を装った広告宣伝メールを送信し、措置命令に違反した場合の罰則が、50万円以下の罰金から、1年以下の懲役または100万円以下の罰金へ引き上げられた。From欄の詐称など、送信者情報を偽ることも禁止され、措置命令を経なくとも直接刑事罰が科せられるようになっている。

一方、ISPなどの電気通信事業者には役務提供義務があり、メールサーバーがダウンするなどの厳しい損害条件が満たされない限り、送信者側に対してサービス提供を拒否することができなかった。しかしながら、改正案では、大量のメール送信で、ISP全体のメール送信が大幅に遅延する可能性があるような場合など、可能性レベルでも正当な理由として認められ、迷惑メール送信業者の回線を停止するなどの措置が可能になった。

こうした法改正に伴い、直罰導入に伴う警察や他省庁との連携、諸外国の迷惑メール対策との整合性の確保といった活動の必要性も指摘されている。

では、実際の役務を提供するISPら事業者はどうすべきか。データ通信協会が迷惑メールの違法性を確認し、それに基づき利用停止などを行う「迷惑メール追放支援プロジェクト」が2月から開始されているほか、各社が迷惑メール事業者の情報を交換できるよう取り組みを開始している。

そういった活動に加えて、技術的な側面では、SPF(Sender Policy Framework)/Sender IDとDomain Keysといった送信ドメイン認証技術、25番ポートブロック(Outbound Port 25 Blocking)、フィルタリングといった技術を示しつつ、通信の秘密や不当な差別的取り扱いの禁止といった法律との整合性の確保、技術的な改善など、報告書案はいくつかの課題を挙げており、技術的な解決はすぐには難しそうだ。

利用者側についても報告書案では言及している。フィルタリングの活用や、ユーザーの意識向上、事業者と消費者団体がEメールの仕組みやフィルタリングに対してアドバイスを行う講習会の開催などが提案されている。

国際協調では、総務省が4月にアジア太平洋地域11機関と締結した「スパム対策の協力に関する多国間MoU(覚書)」により、迷惑メール送信が増加しつつある中国、韓国などとの協力体制を構築、最大の迷惑メール送信国である米国らとも協調する必要性が訴えられている。

報告書案では、対策を講じてもそれで足りることはなく、今後も継続して見直しが必要と指摘。改正特定電子メール法は3年以内に見直しが行われるが、それ以前においても弾力的に対応することを求めるほか、国内外、官民間といった幅広い連携を必要としている。

報告書案は、新たな対策を打ち出す、というよりも、現状を追認し、今後の取り組みを円滑化するための参考書的な役割、と考えた方が良さそうだ。総務省では、今回の報告書案について意見を募集。7月8日までに寄せられた意見をふまえ、最終的な報告書として公表する予定だ。

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