韓国政府の環境部は、家庭内にある使用済み携帯電話の集中的な回収キャンペーンを行うことを発表した。
環境部によると、2001年から2004年までの韓国における使用済み携帯電話の発生量は、年間約1,200~1,300万台。このうち約400万台が回収され、残りは家庭に保管されているものと予測されるという。
韓国では2003年1月から「Extended Producer Responsibility」(以下、EPR。日本では拡大生産者責任として「循環型社会形成推進基本法」に取り入れられている)が導入されている。EPRはOECD加盟国で考案され普及しつつある政策アプローチで、一言で言うと、消費財の廃棄物に対して、その責任を生産者に課する、というもの。主に、再利用可能な廃棄物の一定量以上に関して、リサイクルする義務などが与えられる。リサイクルの対象物には、冷蔵庫やテレビを始めとする電化製品や、飲料水の瓶、ペットボトルなどがあり、生産者は別途リサイクル工場を設立するか、リサイクル業者に委託するなどして、販売した商品のうち80%以上を回収しなければならない。このほか廃棄責任も課されている。
携帯電話は、2005年1月からEPRの対象物として指定されている。携帯電話の基盤やバッテリには、金や銀、コバルトなどの、回収・再利用といった側面から見て経済性の高い物質が含まれている一方で、水銀やカドミウムなどの有害物質も有している。そのため、他のゴミと一緒に捨てられた携帯電話が、後に焼却や埋め立て処分されると環境汚染に発展することになる。こうした流れを見れば、携帯電話がEPRの対象物として指定されるのも当然のことだといえるが、実際は、法律に対する認識不足もあってか、例え廃棄されなくとも、家庭に置きっぱなしにされることがままあり、その回収率はいまひとつだ。
そこで環境部では15日から、ソウル市内にある小学校555校、中学校362校で、家庭内で眠っている使用済み携帯電話の回収をスタートした。同様の回収を7月には首都圏全体、9月からは全国の市に拡大し、携帯端末のリサイクルにあたるとしている。さらに、上記小中学校に加え、高層アパートが集まる団地においても7月から試験的に回収が行われる予定だ。これも9月からはソウル市内に、2006年からは全国の市に拡大される予定だ。
使用済み携帯電話の再利用に関しては、環境部の対策をやや先駆ける形での取り組みを行っている団体もある。それが韓国Green Consumers Networkという、環境や経済問題に取り組む団体による、「携帯電話再利用運動」だ。
これは家庭内に放置されている携帯電話のリサイクルを促すと同時に、日が当たらない・風通しが悪いといった条件の悪い住宅で暮らす所得の低い人たちのために、空気清浄機などを配布しようという運動だ。おおむね携帯電話20台程度で、空気清浄機1台と交換できるという。環境部実施によるキャンペーンのように特定の場所で行われる運動ではなく、どれだけの一般市民が参加するのかは、環境問題に対するその意識の高さに関わっているといえるだろう。
韓国は、日本よりもリサイクルしやすい環境であるといえる。というのも、中古市場が存在しているからだ。キャリアやメーカー純正のショップは除外しても、複数キャリアの端末を扱う携帯ショップや家電量販店において、中古端末を売ることはけっして珍しいものではない。とはいえ新規契約にしろ買い替えにしろ、大多数の人々は新品を購入するので、市場を維持させているのはもっぱら外国人や経済力の低い人たちなどだ。一般のユーザはどちらかというと、新品を買う際の足しにと携帯電話を売るだけのケースが多い。
韓国の携帯電話は比較的高価で、日本の約2~3倍、高いものでは4倍程度はする。というのも韓国では3Gなどの最新技術に対応していない限り、端末に対してキャリアが補助金を出すことは法律によって禁止されているからだ。万が一、補助金を配布した場合には、政府から処罰を受けることになっている。しかしながら、高価な話題の機種を持っているということが、韓国ユーザのひとつのステイタスともなりうることを、キャリアは十分に知っている。実際には、ユーザーが少しでも高価格機種を買いやすいよう、補助金の配布が行われているようだ。今年に入ってからも数度に渡ってキャリアが課徴金を課されたニュースが伝えられている。それでも日本のように1万円以下で端末を買えることは多くない。
また、韓国市場では、毎月どこかしらのメーカーから新機種が発表されるため、流行に敏感な若者層を中心に、その買い替えサイクルは早い方だと言える。しかし環境部の発表のように、使用済み端末を売ったりショップに提出するといったケースがまだ少数であるため、リサイクル対策が必要となってくるのだ。自宅に放置し、最悪ゴミ袋に捨ててしまうという意識から変えていかなければ、リサイクルは進まないだろう。
そのため環境部では、今回協力した学校などに対して優秀校の表彰やリサイクル費用の還元を行うほか、携帯端末メーカーなどとともに、新聞や地下鉄などにおいて、携帯電話リサイクルに関する積極的な広報活動を行う予定であることも明らかにしている。官民主導で本腰を入れられる環境対策に、今後の効果を期待したい。
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