PA-RISCの歴史に幕、HPが最後の製品リリースでItaniumへの移行を完了

Junya Suzuki  [2005/06/01]

米Hewlett-Packard(HP)は5月31日(現地時間)、最後のPA-RISC製品となるPA-8900プロセッサを発表した。同社は、これまでUNIXサーバ製品向けに独自開発のPA-RISCプロセッサを用意していたが、Intelとの共同開発によるItaniumの発表後は、PA-RISCを段階的にItaniumベースへと移行していくことを表明していた。今回、最後の製品にあたるPA-8900がリリースされたことで、長年にわたるPA-RISCの歴史に幕を閉じ、Itaniumへの移行を完了したことになる。

HPが今回発表したのは、UNIXサーバ製品HP 9000シリーズ向けのPA-8900搭載モジュールで、デュアルプロセッサ構成の同モジュールを既存のサーバ製品に導入することで、前モデルのPA-8800と比較して最大15%程度のパフォーマンスアップが期待できるという。同社では現在、Itanium 2プロセッサを搭載したHP Integrityシリーズというサーバ製品をリリースしており、最後のPA-RISC製品発表をもって、Integrityシリーズへの移行を加速させる計画だ。HPでは今年2005年末にも、Integrityシリーズ向けの「HP-UX 11i Virtual Partition(vPars)」というソフトウェア・ベースのパーティショニング(仮想化)技術の提供を予定している。これにより、Integrity上で過去のソフトウェア資産等を継続利用できる仕組みが用意されることになり、よりItanium 2ベースのシステムへの移行が進むだろう。

命令コードを単純化することで高速化を図ったRISCプロセッサは、1990年代のUNIXマシンブームもあり、その勢力を大きく拡大することに成功した。RISCプロセッサで特に注目を集めていたのは、Digital Equipment(DEC、現HP)のAlpha、MIPS TechnologiesのMIPS、IBMのPowerPC(Power)、Sun MicrosystemsのSparc(UltraSparc)、そしてHPのPA-RISCである。中でも高速性で注目を集めたAlphaは、CompaqによるDECの買収後、さらにHPにその資産を買収され、2003年に最後の製品が登場、最終的に2006年にはその生涯を終えることになる。現在同プロセッサの開発チームはAMDやIntelなどへと散り、新規プロセッサ開発で大きな役割を果たしている。MIPSはSilicon Graphics(SGI)などが主なプロセッサの供給先だったが、SGIがプロセッサ戦略の軸足をItaniumへと移していったことで、そのターゲットは大規模サーバから、小型サーバや組み込み機器などへと移行するようになった。

そして現在、IBMのPOWERシリーズ、SunのUltraSparc、HPのPA-RISCの3つが、RISC+UNIXの大規模サーバ市場に残っているが、その状況は厳しい。もともと、市場で大きな勢力を築きつつあったIntelや互換機メーカーによるx86プロセッサに対し、RISC採用による高速化で差別化を図ってきたこれらのプロセッサだが、x86プロセッサが当初の限界点を越えてパフォーマンスを発揮するようになると、しだいにそのメリットを失っていった。特にコスト面ではx86プロセッサの大量生産効果には太刀打ちできず、小中規模サーバを中心にしだいに市場を奪われることになった。現在では開発コストが膨らみ、プロセッサ開発事業はシステムメーカーが片手間にできるようなものではなくなりつつある。そうした事態を打開するため、HPではIntelとの提携で、PA-RISCの後継となるプロセッサの開発をスタートさせた。PA-RISCとバイナリレベルで互換を持つ「Itanium」の誕生である。その後のItanium 2登場を経て、HPでは2004年の12月にItaniumプロセッサに関するすべての開発リソースをIntelへと移管することを発表している。PA-RISC亡きいま、事実上の汎用プロセッサ事業からの撤退だと言えるだろう。

HPと同じくプロセッサ開発で苦境に立つSunでは、今年中に「Niagara(開発コード名)」、来年以降に「Rock(開発コード名)」という2種類のハイエンド向けプロセッサの提供を予定している。同時に、AMDとの提携でOpteronプロセッサ搭載サーバの開発や、x86向けSolarisの提供も行っており、将来に向けた二刀流作戦を練っている。同社では富士通との提携でSparcプロセッサ開発のてこ入れも行っており、今後しばらくはプロセッサ事業を継続することになりそうだ。

上記の3社の中で最も好調なのがIBMで、同社のPowerプロセッサはSOIやクアッドコア(4コア)などの先進技術をいち早く採用しており、UNIXサーバのeServer pSeriesや統合サーバのiSeries(旧AS400)、AppleのMacに搭載されているPowerPCなど、幅広いプラットフォームで採用されている。特に省電力という特性を活かして、組み込み機器やネットワーク機器、アプライアンスなどでの採用が多い。次世代ゲーム機のPlayStation 3、Xbox 360、Revolutionが採用するプロセッサも、すべてPowerベースの製品だ。

このように、現在PCやサーバ向けの汎用プロセッサでは、AMD、IBM、Intel、Sunの4社が大きな勢力を誇っていることになる。淘汰の時代を経て、プロセッサ業界はx86 vs. Powerという勢力図を見せつつある。HPがItaniumへの移行を進めた理由が開発費の膨大にあったように、すでに新規参入は難しい状況になっている。実際、鳴り物入りで登場したTransmetaも、一部の製品ラインを残してすでに資産を売却している。今後は、x86プロセッサのように、単一のアーキテクチャに対して複数のベンダーが異なる製品を提供し、それぞれの強みを活かしてニッチ市場を食い合う時代が到来するのではないだろうか。

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