ソニーは、ハワード・ストリンガー執行役副会長兼COO、ソニー米国法人会長兼CEOを代表執行役会長兼グループCEOに、中鉢良治執行役副社長兼COOを代表執行役社長兼エレクトロニクスCEOに、井原勝美執行役副社長兼グループCSO&CFOを代表執行役副社長兼グループCFOとする人事を発表した。6月22日の株主総会承認を受け、新体制に移行する。ストリンガー氏は、米国法人の会長兼CEOも引き続き兼任する。出井伸之会長兼グループCEO、安藤国威社長は退任、それぞれ最高顧問、顧問に就任する。
ソニーを率いることとなったストリンガー副会長は63歳、米国のCBSなどを経て97年に入社、映画、音楽の分野を担当している。中鉢副社長は57歳、77年に入社、記録メディアなど一貫して技術畑を歩んできた。
ストリンガー副会長は「顧客の要求、競争環境、技術革新など大きく変わってきている。ソニーも組織自体を変換していく。成功のためのリソースはある。社員の能力を掘り起こし、開花させる。当社が最強のエレクトロニクス企業になるためには、変化を恐れない。真のグローバルカンパニーになるよう、社内カンパニー間の連携を強め、優れた技術を活かし、最強の製品をつくる」と語った。
中鉢副社長は「2005年は、ソニーにとって大きな転換点だ。責任の大きさを痛感している。当社の難局にあたり、エレクトロニクス復活に向け、立ち向かう。本格的なIT時代を念頭に、出井、安藤氏らが打ってきた布石を活用する。昨年からさまざまな生産、事業の場を回ってきたが、設計、ものつくり、マーケティングなど現場は健在で揺るぎない。自由闊達で意欲的だ。エレクトロニクスの復活なくしてソニーの復活はない」と強調した。
ソニーが経営の最高責任者に外国人を選任するのは初めてのことだ。これについて出井会長は「ソニーはグループ全体で15万人だが、日本人はそのうち5万人だ。売上も日本は29%、そのほかは海外から。トップが日本人でなければ、というなら、(ストリンガー氏が手がけてきた)映画も音楽もソニーではできなかったことになる。これまでも、当社は異なる文化といっしょに事業を展開してきた。ストリンガー氏が英国生まれの米国人であっても、ソニーに違和感はない」との見解を示した。
出井会長はストリンガー氏を「エンターテインメントだけでなく、エレクトロニクスもみてもらってきた。2000年頃以降は、ハリウッドに足を運ばなくても、任せることができた。彼が東京にいなくても、中鉢、井原両氏と良いマネージメントチームができれば、グローバルなCEOとして、新たなマネジメントスタイルを確立できる」と評する。中鉢氏については「キーデバイス、生産を担当してきており、表の商品力、裏のオペレーションと表現すると、オペレーションをみてきた人だ。エレクトロニクスから育った、純粋なエンジニアで、ソニーが一丸となるには、最適な人物」としている。
安藤社長は「2005年からは、攻めに転じられる。次の世代にバトンタッチするチャンスだ。ソニーのDNAを受け継ぐ最適な経営陣になる」と述べた。
同社の新社長人事を巡っては、井原副社長とともに、以前から有力候補と目されてきた、久多良木健副社長兼COOが取締役を退任、グループ役員となることが注目される。ストリンガー氏は「PSPは日本で成功裏に展開できた。PS3もソニーにとって重要だ」として、ゲームビジネスを束ねる久多良木氏を今後も重用していく意向を表明した。中鉢氏は「半導体は重要なコンポーネントだ。全体の状況を踏まえて、バランスある判断をしてきたい。Cellは、PS3のみならず、ソニーのコンシューマーエレクトロニクス全体にとっても重用であり、投資路線は変えない。Cellをいかに活用していくかが課題」とした。
同社は2004年度10-12月期の連結決算では、売上高が前年同期比7,5%減の2兆1,482億円、純利益は同55,3%増の1,438億円の減収増益だったが、主力のエレクトロニクス部門は、ブラウン管テレビや携帯オーディオの不振で、売上高が同0.9%減の1兆5,108億円、営業利益が同23.3%減の494億円だった。通期の連結業績見通しは、10月期時点で売上高を下方修正、さらに1月20日には、売上高とともに営業利益も再度下方修正した。
中鉢副社長はいまのソニーに欠けているものとして「商品に対して、消費者の立場からの視線が足りなかった。何を求めているかという顧客の声、この原点に立ち返り、製品に反映させることが重要だが、(そのような過程での)連携が緩んだ。生産力は元気だが、商品力の低下は否めない」と指摘する。
2003年4月、同社の連結決算は、1-3月期の最終損益が大幅な赤字に転落、2004年度も大きく減益するとの見通しを示したことから、株式市場全体が冷え込み、ソニーショックと呼ばれた。この年の秋、同社は、創立60周年を迎える2006年度には、売上高営業利益率10%を目指す経営計画「TR60」を打ち出しているが、達成の見通しは不透明だ。2004年度は、映画、金融などは堅調だったが、屋台骨であるエレクトロニクス部門の苦戦は深刻だ。生粋の技術者である中鉢氏が再建を託された。この日の同社の株価は60円高の4,070円、1.5%上昇した。市場は好意的にみているようだ。
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