8月6日にカリフォルニア州マウンテンビューにあるGoogleキャンパスで、「Mozilla Developer Day 2004」が開催された。Webブラウザ市場を独占するMicrosoftのInternet Explorer(IE)がセキュリティの不安を抱える中、オープンソースで開発が進められているMozillaが勢いを取り戻し始めている。同会議では、この追い風にオープンソース・ベースという特色をどのように同調させるかがテーマとなった。
ロードマップを説明したMike Shaver氏は、2005年第4四半期のリリースを予定しているMozilla 2.0のキーワードとして「先端を行くグラフィックス能力」「開発プラットフォームとしての魅力」「高機能なアプリケーション」の3つを挙げた。
ロードマップの内容を見ると、まず2004年第4四半期にグラフィックスおよびツールキットの基盤が様変わりする。グラフィックス・サブシステムのCairoへの移行、XTF(eXtensible Tag Framework)やSVG(Scalable Vector Graphics)の実用が始まる。
これらは6年以上の歳月を経たCSS 2.0とハードウェアやソフトウェアの進化とのギャップを埋める試みと言える。Robert O'Callahan氏の講演では、半透明なアプリケーションウィンドウ、Webページのバックグラウンドに使ったスケーラブルなSVG画像、CSS3コラムなどのデモが披露された。DOM、CSS、スクリプティングに完全統合されるなど、SVGのGeckoへの導入は順調で、その成果はバージョン1.8から1.9のタイムフレームで機能し始めるとしていた。
同じく第4四半期には、xulrunnerのリリースを予定している。Mozilla 2.0のカギとなる技術の一つが、XMLに基づいたGUI記述言語XUL(XML-based User-interface Language)である。XULの可能性は、Webアプリケーション開発で注目されている。クロスプラットフォーム対応のシンブルなWeb言語であり、CやC++などのコンピュータ言語やUIなどの専門的な知識を持たない人でも、Webアプリケーションを開発できるようになる。XULアプリケーションは対応ブラウザのレンダリングエンジンによって表示されるため、Mozillaが動作する環境で同じように動作する。サービスを提供する上でのメリットも大きい。
Mozillaと言うと、一般的にはWebブラウザと認識されていると思う。だが、Mozilla.orgは、1.xから2.0にアップデートする課程で、Mozillaをプラットフォームへと進化させようとしている。これまでローカルのソフトウェアが機能・人気ともに、Webアプリケーションに勝っていた。その常識を覆す機能やサービスを持ったWebアプリケーションを実現するフレームワークを開発者に提供しようとしているのだ。xulrunnerは、XULアプリケーションを動作させるランチャーと呼べる存在で、そのリリースは「プラットフォームとしてのMozilla」が注目され始める起点となりそうだ。
午後に行われた後方互換性のポリシーに関する講演は、白熱した議論に発展した。Microsoftは後方互換性を完璧に維持しようと努めているが、Mozilla陣営に言わせれば、そのポリシーが新しい標準を導入したがらない原因になっている。Mozillaは、より積極的なアプローチを採っているが、トラブルも少なくない。Bob Clary氏の講演で示されたWebサイトの互換性の調査は以下の通りだ。
| Mozilla 1.7 | Mozilla 1.8 | |
|---|---|---|
| ページ数 | 69 | 69 |
| Quirksモード | 60 | 60 |
| CSSエラー | 257 | 263 |
| Javaスクリプトエラー | 9 | 11 |
| Javaスクリプト警告 | 1789 | 1566 |
| IEのみのOBJECT/ActiveX | 3 | 3 |
非標準動作をエミュレートするQuirksモードを用意するなどして、Microsoft同様に後方互換を優先した場合、対応の幅が多岐にわたるためブラウザエンジンが複雑で大きくなる。標準のみに対応していれば、ブラウザエンジンはシンプルで小さくなるが、その枠に当てはまらないページをサポートできなくなる。
Mozillaは、まだ明確なポリシーを確立していない。現時点では後者に近いが、IMHO(In My Humble Opinion:「私の控えめな意見では…」の意)というアプローチである。標準に当てはまらないケースでも、対応策を検討し、開発者にも対応も促す。これはGeckoのバグが原因というケースにも対応できるというメリットがある。
会場からは「大きく引き離された2位という立場では、標準を訴えても、その声は届かないのではないか?」という声が出ていた。Clary氏は開発者に対して、「Mozilla以外のブラウザ利用者をターゲットにしている人でも、Mozillaを中心にテストすれば最も安定した結果を得られる」と標準ベースの利点を説明していた。
個人的に、これまでMozilla.orgの活動には安定志向というイメージがあった。Developer Dayに参加してみて、その印象はずいぶんと変わってしまった。標準ベースという点では安定志向と言える。だが、それを実現するための手法は意外なほどに攻撃的かつ積極的。リスクもあるが、その思い切りの良さが上手く理解されれば、面白い存在になりそうだ。
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