カナダ上空の気球から宇宙旅行 - da Vinci Projectが宇宙に挑むアナウンス

    湯木進悟  [2004/08/07]

    カナダのda Vinci Projectは、今年10月2日に、独自に開発を続けてきた宇宙船「Wild Fire」で宇宙飛行に挑戦する計画を正式に発表した。米X PRIZE Foundationが主催する、民間機によって初の宇宙旅行を目指す「Ansari X Prize」コンテストにおいて、先に挑む米Scaled Compositesの宇宙船「SpaceShipOne」と共に、優勝を競い合うことになっている。

    Wild Fireの開発風景

    Wild Fireの発表会

    1996年5月よりエントリーチームの受付けを行ってきたとされるAnsari X Prizeには、すでに7カ国から26チームが正式に参加していることが明らかにされており、US1,000万ドルの賞金獲得を目指すべく、宇宙船の開発競争が繰り広げられているという。政府機関などから援助を受けることなく、高度100キロメートルを超える上空へと、3名(パイロットを含む)を乗せて安全に飛行して、無事に地球に帰還してから14日間以内に、再び同じ機体を用いて宇宙旅行を実現できる「RLV(Reusable Launch Vehicle)」と呼ばれる飛行機の開発に成功すれば、優勝チームとして認められることになっているようだ。

    200名以上のボランティアによって研究開発が進められるda Vinci Projectは、1996年より活動を開始したとされ、Ansari X Prizeへは、2000年6月2日に正式なチームエントリーが行われたという。同コンテストでは、宇宙旅行へのアタックに際して、60日以上前にアナウンスすることがルールに定められているようで、今回の正式発表によって、10月2日になされるda Vinci Projectの挑戦権が保証された形だ。資金面でのサポートも、オンラインゲームサイトのGoldenPalace.comが、スポンサー企業としてバックアップすることを発表しているという。すでにこれまでにも、Sun Microsystems of Canada、Blake Cassels Graydon、ANSYS、Hinz Automation、Kindersley Transportなど、約30社がda Vinci Projectを後援してきたとされる。

    移送されるWild Fire

    大気圏への突入イメージ

    宇宙旅行を実現するda Vinci Projectのアイデアは、非常にユニークな点が多い。まず、Wild Fireの打上げには、世界最大級のヘリウム気球を使用するとされている。打上げ当日は、カナダのサスカチュワン州キンダースレー空港から、この無人気球によって吊り下げられながら、1時間以上かけて高度8万フィート(約24,400メートル)まで、Wild Fireを運び上げる予定になっており、そこからハイブリッド型のロケットエンジンに点火して、高度110キロメートルの宇宙空間への到達が目指されるようだ。資金面で大きな制限のある民間チームによる宇宙飛行への挑戦には、こうした上空からの打上げスタイルが必須条件と説明されている。Wild Fireは、約3分半の無重力飛行を楽しんだ後、ロケットを包む円錐状のクッションが展開し、機体は保護されながら大気圏に突入して、着陸前にはパラシュートが開き、無事に地上へと帰還するという行程が明らかにされている。

    da Vinci Projectを率い、Wild FireのパイロットとなるBrian Feeney氏は、打上げ準備などが最終段階へと順調に進んでいることを示し「我々はミッションの成功へ着実に近づいている。宇宙旅行の新時代が到来しようとしており、革新的なアイデアおよび創意工夫によって、不可能と思える障害も乗り越えられると信じている」と語った。

    なお、da Vinci Projectに先立ち、Scaled Compositesが中心となるAmerican Mojave Aerospace Venturesチームが、来月29日にAnsari X Prizeへの正式アタックに挑むことをアナウンス済みとされ、米国カリフォルニア州のMojave Civilian Aerospace Test Centerより、打ち上げに用いられる「White Knight」によって上空に運ばれたSpaceShipOneは、高度100キロメートルの上空を弾道飛行した後に地上へ帰還予定。14日間以内の期限となる10月13日までに、勝利条件とされる2度目の宇宙飛行が目指されるという。Ansari X Prizeのフィニッシュが近づいたため、X PRIZE Foundationは、国際航空連盟(FAI: Federation Aeronautique Internationale)に対して、RLVによる宇宙飛行に関する新世界記録の認定を要請したことも明らかにされた。

    ほぼ同じ時期に、2つのエントリーチームがUS1,000万ドルの賞金をかけて競い合うことについて、X PRIZE Foundationの創設者であるPeter H. Diamandis博士は「真に注目すべき宇宙レースが展開される」と喜びのコメントを出している。8年前にAnsari X Prizeのアナウンスが行われた時のことを感慨深く振りかえりつつ、同氏は「ついに2チームが挑戦するとはいえ、26チームすべてが民間機による宇宙旅行を実現する上で役割を担っていく可能性をもっている」と語った。

    Wild FireおよびSpaceShipOneの2機が挑むとはいえ、今年6月21日に、Mike Melvill氏が1人操縦するSpaceShipOneは、高度100キロメートルの上空を飛行してギネス記録を打ち立てており、Ansari X Prizeにも王手をかけた状況にあると言えるだろう。Scaled Compositesに多額の資金援助をしているとされるPaul G. Allen氏は「6月の成功が大きな注目を集め、身近に宇宙旅行に出かけられることへの期待も、さらに高めるものとなった」とのコメントを発表した。

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