○強いキーワード、弱いキーワード
「強いキーワード」がだめなら、キーワードのもつ力を弱めるのがよい。
固有名詞を「強いキーワード」と考えれば、「弱いキーワード」とはたとえば普通名詞や形容詞、動詞などと考えることができるだろう。
「ユビキタス」「ウェアラブル」「携帯電話」「コンピュータ」「テレビ」「住宅」「眺める」「メモ」「保存」「軽い」などのようなものが「弱いキーワード」の例である。
ところが、これまた難しいことがわかった。普通名詞ではあまりにも用語が一般的なので、検索結果がどんどん発散してしまうのである。Memoriumのようにやや発散気味であるように使うとしても、検索はそれなりに能動的な作業なのである。完全に普通名詞ばかりを用意すると、どんどんノイズの比重が高くなり、検索結果が発散していってしまうのである。結果としてMemoriumに出てくるカードは、ほとんどごみばかりということになる。
「さじ加減」とでもいったらよいだろうが、そのさじ加減がたいへん難しい。
それでもしばらくやってみれば、なんとなくそれがそれなりに面白いものであることがわかってくる。ノイズは少なくないが、20~50枚に1枚くらい、「あれっ、これってなんだろう」と気になる言葉やページがリストされてくるのである。ノイズだけでもなければ、常時見ているものでもないので、さほど気にならない範疇だともいえる。
最初にキーワードを登録した以外は、なにもしていない。なにもしていないのに、まるで自分の発想が刺激されて新しいことに気づくように、なにかを気づかせてくれるのである。検索をしても絶対に見ないだろうというようなページをリストしてくれる。「フェロモン香水ユビキタス」なんて、ぜったい気がつかつかなかっただろうな、と思う。
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| 強いキーワード「ドラえもん」が効いている例。画面全体がほとんどドラえもんになってしまっている |
リストしてくれたときに、あまりにヒット率が高くても、これまた困ってしまう。常時見ているのでは、Memoriumの特徴がないからだ。ずっと見ていると能動的に関わりたくなってしまって、編集機能がほしくなるからだ。多すぎても、ページを見るだけで情報過多になってしまうし。
というわけで、それらのバランスをどうとるのか、ということが重要だ。重要だ、ということはわかっているが、どうやっていけばよいのか、試行錯誤して成功した秘訣があったら、ぜひ情報をお寄せいただきたい。
○文字入力の専用環境
渡邊氏は、Memoriumはサーバー的に利用し、文字入力(カードの新規の作成)は、Memolletという携帯端末や、cgiを使った入力専用環境を構想している。実際筆者もcgiの環境を使って入力している。つまり、適当なときにふと思いついたキーワードを入力しておくと、やがてそれが種になって、Memoriumで芽を出して広がる、というような感覚だ。
筆者自身は、(BTRONで動作する)cgi環境を使って、適当な時期にメモをためている。主に本を読んでいて気になった言葉を、Memorium用のカードにためている。いままでに47枚のカードを蓄積し終えたところだ。ちなみに、「メモ」「住宅」「脳」「眺める」「嘘」「ドラえもん」「カメラ」「書棚」「保存」「春」「永遠」「コラボレーション」「フォークロア」「虚構」「アート」「創造力」「物語」「ファイル名 日時」「美崎薫」「集める」「電子ブック」「青山ブックセンター」「夜の雨」「情報」「鮮度」「タブレット」「成熟」「タイ」「紙芝居」「夏祭り」「補正」「身体」「蝶」「言語」「一期一会」「葛藤」「蝶 霊魂」「ピジン」「発明」「逸脱」「イディオサヴァン」などが現在までに蓄積したカードの内容である。
その後、12月17日には「目的」「温泉」「逆さ」「スタンレー・ミルグラム」「ワーキングメモリ」を追加した。18日には「カレンダー」「単純」「シンプル」を加えた。
こうしてみると、まさにそのときどきに読んでいた本の抜き書きであり、カードを見るだけでもいろいろな連想が出てくる。Googleで検索した結果とはもちろんズレがあり、そのずれが、まるで別のだれかとコミュニケーションしているようでもある。
ちなみに渡邊氏は携帯電話からカードを作っている。ちょっとしたメモを携帯電話でとって、Memoriumで活用するというスタイルなのだそうだ。これは従来のメモ帳などとはずいぶん違った感覚である。
メモ帳だと、書いたことに満足して忘れてしまい、改めてみるということが少ないが、Memoriumなら、いつのまにかそこからアイデアが発展したりさえするためだ。
このカードだが、上の実例を見ていただければおわかりいただけるように、ひとりだけで溜めていては相当な偏りができてしまう。じつは、筆者は渡邊氏とちょっとだけコラボレーションして、共同でキーワードを溜める、ということも行ってみた。すると、ぜったいに自分では登録しないキーワードが入ってくることで、検索のバラエティが広がり、これは新しいコラボレーションツールやグループウェアとしても使えるかもしれない、と感じた。
「今後は、Web上のホームページがMemoriumみたいな感じになって、掲示板にもなるし、個人の知識の泉のような感じで広がっていけたら」と渡邊氏はいう。これはなかなかいけるのではないだろうか。
グループで使ってみました、というような例が見つかったら、これまたぜひ情報をいただけたらうれしい。渡邊氏のページでは「みんなのMemorium」といって、グループ利用も実験的に行われている。
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(美崎薫)
【レビュー】21世紀的徒然草ソフト「Memorium」(4) スローライフでできる知識と記憶のコラボレーション
に続きます。
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