【レポート】WISS2003開催(5) - 各賞を受賞した研究発表

○受賞プログラムとその他の話題

賞関係では、PC委員による登壇発表に対して投票で決定する「ベストペーパー賞」、参加者全員による登壇発表に対する投票による「発表賞」、最多「へぇ」獲得した「金の発表賞」の3賞を、NTTコミュニケーション科学基礎研究所の原田康徳氏、多摩美術大学の加藤美由紀氏、科学技術振興機構のRichard Potter氏の3氏によるビジュアルプログラム言語「Viscuit:柔軟な動作をするビジュアル言語」が独占した。

Viscuitは、動作前/動作後のビジュアルなオブジェクトを描くことで動作を記述し、ひとつひとつは単純な動きながら、全体としては複雑な動きを表現できるという興味深いものであった。ライフゲームや、アラン・ケイの「Squeak」を彷彿とさせるところもある。加藤氏の絵の魅力、キャラクターの魅力が、全体としての印象を高めるのに一役かっている。

3賞に輝いたNTTコミュニケーション科学基礎研究所の原田康徳氏と多摩美術大学の加藤美由紀氏
Viscuitの様子

いくつかのサンプルプログラムは、「Viscuitのホームページ」からダウンロードできる。単純な動きながら、全体としてはきわめて複雑な動作をしていることがわかって興味深い。Viscuit自体も、近日中にダウンロードできるようになるとのことなので、絵心のある方は、ぜひ試してみてはいかがだろうか。作成したデータはFlashムービーに変換でき、Viscuitがなくても再生できる。(関連サイト http://develop.viscuit.com/ )

参加者全員による、デモ/ポスター発表に対する投票で決まる「対話発表賞」には、大阪大学大学院の池田洋一氏、立命館大学の木村朝子氏らの「液体を吸収するメタファを利用したToolDevice」と、東京大学大学院の筧康明氏、飯田誠氏、苗村健氏、NTTコミュニケーション科学基礎研究所の白井良成氏、松下光範氏、大黒毅氏らのグループによる「Lumisight Table:天地問題を解消した対面協調支援システム」が輝いた。

「ToolDevice」は、従来マウスやキーボードという非直感的なインタフェースで操作していたコンピューターを、もっと直感的な入力インタフェースで操作しようというのだ。そこで出てきたのが、スポイトやスポンジの形をした吸収系ToolDeviceなのである。吸収系ToolDeviceを画面にこすりつけると、画面にあったサムネイルが吸い込まれていく。画面の別の場所やプリンタで絞り出すと、吸い込んだ情報がペーストされたり印刷されたりするのである。まあ、一言で言えば「リアル・カット&ペースト」という感じだ。

「ToolDevice」の大阪大学大学院の池田洋一氏、立命館大学の木村朝子氏
「ToolDevice」

作り込みはすごく、スポンジにはペルチェ素子が組み込まれていて、ホットな話題を吸い込むとスポンジが発熱し、逆に古びた話題だと冷たくなっていく。さらに、たくさんの情報を吸い込むとスポンジは水を吸い込んだように固くなるという。力加減のフィードバックまで行われているのである。

デモをくり返して3度見たのだが、筆者は「なにもそうでなくても」と思ってしまった。しかし、じゃあどうすればいいのよ、と聞かれて明解な返事があるわけではないところが、ますます困ってしまうところである。

「Lumisight Table」は、一方向から見ると光を透過するLumistyという素材をディスプレイに貼りつけ、テーブルで4人が対面したときに、4人のどこからでも見やすくレイアウトされた情報を見ることのできる共有型テーブルシステムである。ディスプレイを水平に置いて情報を共有する場合、ある人の見る方向に情報を向けて表示すると、逆側の人にとっては逆さで見えにくいことになってしまう。そこでLumistyを使って、それぞれの方向にあわせた向きにディスプレイを表示するわけである。

「Lumisight Table: 天地問題を解消した対面協調支援システム」を発表した東京大学大学院の筧康明氏
立つ位置が変わっても、文字が正対する「Lumisight Table」

個人が大量にPCや携帯端末を所有するようになり、それをどのように共同で利用するか、ということに次第に焦点が当たりつつある昨今、「テーブルもの」と呼ばれるジャンルが次第に充実してきた(CRLオープンハウスレポートを参照)。今後の展開を見守りたい。

「金の発表賞」「銀の発表賞」はお遊び要素だが、「ベストプレゼンテーション賞」的な意味合いも読みとれる。そもそもインタフェース研究の基礎的な技術は、すでに出尽くしているといえなくもない。そうだとすればなおのこと、NTTドコモの福本雅朗氏が「魅せる発表も研究者の資質だ」と語るように、新しい技術のどこが優れているのかをデモやプレゼンテーションで魅力的に訴えることで、新しいインタフェースにスポットライトが当たることもあるだろう。プレゼンテーションが重要であるとあらためて思う。

「親と子の心を繋ぐ実世界指向インタフェース」の実世界指向"おむつ"インタフェース

「第2回お蔵入りユーザインタフェース救済シンポジウム OUISS 2003」(OUISS:ウィッス)も開催され、最優秀お蔵入り賞には「Recommend Garden」丸山幸伸氏(日立製作所)、実装奨励賞には「親と子の心を繋ぐ実世界指向インタフェース」宇土敬祐氏(デンソーアイティーラボラトリ)が選出された。

OUISS2003では、産業技術総合研究所の江渡浩一郎氏によるPS2用のゲーム「くまうた」の開発経緯についての講演もあり、夜を徹して「くまうた」曲が作られることになった。作られた.enkaファイルは、はたして公開されるのであろうか……。

(美崎薫)

【レポート】WISS2003開催(1) - 「へぇボタン」が活躍する学会
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/12/24/07.html

WISS2001レポート
http://pcweb.mycom.co.jp/news/special/2001/12/12/01.html

ソニー・コンピュータエンタテインメント くまうた
http://www.playstation.jp/scej/title/kumauta/

日本ソフトウェア科学会 インタラクティブシステムとソフトウェア研究会
http://www.wiss.org/



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