PSXはプロローグ、融合したデジタル家電で発展を狙うソニーの戦略

      [2003/10/28]
    トランスフォーメーション60の戦略と目標

    ソニーは、2006年度にかけてのグループ経営方針「トランスフォーメーション60」を発表した。「最強のコンスーマーブランド確立に向けた抜本的な変革プラン」と位置づけられており、「事業収益構造の変革」と「融合戦略」を2本の柱として2006年度には「3,300億円の固定費削減」「連結営業利益率10%」などの達成を目指す。

    ○固定費を3,300億円削減

    事業収益構造の変革では、5月の経営方針発表時の第2次構造改革費用を変更しており、構造改革費用を3,000億円から3,350億円(2003~2005年度。エレクトロニクス部門3,000億円、その他350億円)に、固定費削減を1,700億円から3,300億円(同。3,000億円、300億円)にいずれも上昇させた。これにより、グループ全体では約4%、エレクトロニクス部門では約6%の営業利益率押し上げ効果を見込む。

    固定費の削減により連結営業利益率の向上を目指す

    具体的にはグループ全体で約2万人、国内では約7,000人を削減する。この人員整理に対して2,250億円を投じ、残りを設備の除売却に回す。本年度に関しては1,400億円を構造改革に用い、890億円が人員整理費用で、残りが設備の除売却費用となる。

    第1次構造改革でも削減した人員をさらに整理。グループ全体で2万人を削減する

    さらに商品を急激な成長が見込める戦略カテゴリーと安定した売り上げが見込める成熟カテゴリーに分類。戦略カテゴリーにリソースを集中させ、2002年度に5割弱だったエレクトロニクス事業での売り上げ構成を2006年度には7割強まで拡大させる。そのほか、全世界の拠点数と拠点スペースをそれぞれ現在の約200拠点、約340万平方メートルから30%の削減(2005年度末まで)、CRT生産ライン17ライン(2002年度末)から5ラインへの削減(2006年度まで、国内3ラインは本年度中にライン廃止)、共通プラットフォーム化や業務プロセスの見直しなどによる生産性の向上、などといった間接/販売部門のスリム化を図る。

    戦略カテゴリーへのリソース集中、拠点の再編・集約を実施

    さらに非生産財調達における固定費を2002年度比で12%削減(2006年度)、設計プロセスの変革や品質改革、生産財のグループ調達改革による生産財コストダウン15%/年(同)といった新たな施策も実施する。

    非生産財調達の改革や設計プロセスの変革も実施

    営業利益率を10%に向上させる

    これらの施策により、仮に2006年度の時点で売り上げが2002年度と同じ4兆9,405億円だった場合でも、連結営業利益率(金融部門除く)10%を目指す。

    ○融合するデジタル家電と新メディアプロセッサ

    コア事業としては携帯電話やデジタルカメラ、PDA、ノートPCに代表されるモバイルエレクトロニクス、テレビやプレイステーション、HDD内蔵DVDレコーダー、PSXなどに代表されるホームエレクトロニクス、ソニーミュージック、ソニーピクチャーズなどに代表されるエンターテインメント、ソニー生命、ソニー損保、ソニー銀行の金融サービスという4事業に分類されるが、このうちモバイルエレクトロニクスとホームエレクトロニクスにリソースを集中して融合を図る。


    同社のコア事業
    モバイルエレクトロニクスとホームエレクトロニクスで融合戦略をとる

    ホームエレクトロニクスでは、ソニーのエレクトロニクス技術とソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の技術を融合させ、例えば「テレビとプレイステーション(PS)を融合させることでユニークな商品を出していける」(同社代表執行役会長兼グループCEO 出井伸之氏)とする。その1つの試みがPS2とHDD内蔵DVDレコーダーなどが一体化した「PSX」なのだという。モバイルエレクトロニクスでも「バイオノートやデジタルカメラ、PDAなどを1つのカテゴリーとして融合した商品を出す」(同)として、新たな展開を示唆した。

    出井会長
    繰り返し話題に上ったPSX

    PDAの「クリエ」やPS、「WEGA」などですでに独自のプロセッサやチップを利用している同社だが、CCDやLCDとともに半導体事業も強化。現行はSCEとソニーエレクトロニクスに半導体事業が分割されていたが、これも融合し、開発を強化していく。

    久夛良木氏

    同社執行役副社長の久夛良木健氏は、今後の牽引力となる事業をデジタル家電とし、「この分野に(ソニーグループが)一丸となって、圧倒的な力を注ぐ」(久夛良木氏)とする。例えばフラットディスプレイ、デジタルカメラ、HDD内蔵DVDレコーダー、携帯電話といった製品であり、世界で1億5,000万台以上を売り上げて大きなシェアを得たPSのコアテクノロジを、家電のテクノロジと融合させ、さまざまなシステムへの展開を狙う。


    デジタル家電の核は半導体
    長崎のFab1/2、熊本のCCD、国分のLCDといった各工場の半導体を結集させる

    家庭の未来
    モバイル環境の未来

    ロードマップ

    そのデジタル家電のロードマップを久夛良木氏は4種類に分類。ホームサーバーでは、第1弾がPSXであり、今後はそれをさらに進化させてブロードバンドメディアサーバへ、テレビでは現行のWEGAを進化させてブロードバンドTVへ、ゲームではPS2の次世代機となる「PS3」へ、ポータブルではPSPへとそれぞれ発展させていく。この中で、IBMや東芝と開発している次世代のネットワークプロセッサ「CELL」(コードネーム)を用いた機器の登場を予定する。さらに久夛良木氏はここで「メディアプロセッサ」という言葉を何度か口にした。より高速な映像処理などを行うため、CELLと同時に開発しているまったく新しいプロセッサ、とのことで、それ以上のことは明らかにされなかったが、同社が開発するデジタル家電の核になるプロセッサであるという。


    その目標は「最先端の技術とエンターテインメントを全世界の家庭に」というもの。そのために「ソニーの総力戦」になるという

    フラットTVやプロジェクタ、ホームサーバー、携帯電話、デジタルカメラ、PSP、ETC、Felicaなどといったデジタル家電がワイヤレスやFTTHによってブロードバンドネットワークにつながることで、「リアルワールドとサイバーワールドの融合」(久夛良木氏)の実現を目指す。PSXはそのプロローグであり、「生活が一変する」(同)という世界の実現のため、2005~6年ごろにはCELLを搭載したテレビとホームサーバー、ゲーム機などのエンターテインメント機器を融合させた製品を登場させる計画だ。

    同社は家庭のデジタル機器の中心としてデジタル家電を想定するが、そこにPCを据えようという他社の動きもある。しかしそれを久夛良木氏は明確に否定する。「今までのデジタル家電はPCの技術を使っていて、PCのサブセットだったかもしれない。2005~6年ごろには、PCがデジタル家電のサブセットになっている」(同)。

    「1ユーザーとしては、PCはコンシューマー機器とはほど遠い、トラックみたいな存在だ。PCを否定しないが、どんな人でも使えるものを目指す」。久夛良木氏の言葉を引き継いで出井氏はそう述べる。

    金融部門でも"融合戦略"を実施

    また、金融部門においても、2004年4月を目処にソニー生命、ソニー損保、ソニー銀行の3社を傘下におく金融中間持株会社を設立し、すでに黒字化したソニー銀行以外の2社も含めて2006年までには完全に黒字化、2006年4月には株式公開を目指す。

    2006年、ソニーは創立60周年を迎える。その時に向けたソニーの戦略は"融合"をキーワードにした。出井会長はこの時期が「融合するチャンス」と繰り返し、時宜を得た戦略だとする。また、Samsung ElectronicsとのアモルファスTFT液晶ディスプレイパネル製造のための合弁会社やFelicaに関するNTTドコモとの合弁会社、CELLに関するIBM、東芝との協業など、他社との協業も重要視し、さらに進めていく意向だ。

    展示されていた同社冬の新製品群(一部)。Felica搭載携帯電話(写真下段左)だけは来年の製品化予定。NTTドコモ携帯電話だけでなく他キャリアへも技術提供を予定。合弁会社へ他キャリアの出資を募ることも検討しているという

    FeliCa搭載携帯電話2004年にも - ソニーとNTTドコモが新会社設立で合意
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/10/27/19.html

    ソニー、新経営戦略、電子技術とエンターテインメント融合で新市場創造へ
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/05/28/25.html

    ソニー、半導体生産に3年間で2,000億円投資、次世代PS向け「CELL」量産へ
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/04/21/18.html

    【E3 2003レポート】21世紀のウォークマン!? SCEがポータブルゲーム機「PSP」を発表
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/05/14/17.html

    ソニー
    http://www.sony.co.jp/

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