「PCの自作」はPCの楽しみ方の1つとして、すっかり定着した感がある。では「液晶ディスプレイの自作」となると、どうだろうか? 自作PCを作っている人ですらマニアックな印象を受けるかも知れない。しかし実際に自作キットが発売されており、パーツを組み合わせるだけで液晶ディスプレイが作れてしまうのだ。ここではケースも含めて、液晶ディスプレイの自作にチャレンジしてみたい。
○液晶ディスプレイ自作キットの紹介
液晶ディスプレイ自作キットというものをご存知だろうか? さすがにPCパーツのように簡単に入手できるアイテムではないが、実際に扱っているショップがあるのだ。
それが今回利用したCoCoNet液晶工房である。秋葉原にも店舗を構える同店は、主に中古の液晶パネルを扱っており、そのラインナップの中に「液晶自作キット」というものがある。今回はここで取り扱っている製品のうち、こちらのページで紹介されている「10.4インチ液晶自作キット」というものを購入した。
ただ、液晶自作キットといってもピンと来ない人が多いと思うので、まずはキットの内容から紹介していこう。
液晶自作キットは大きく分けて
| ・ | 画面に映し出すための信号などを作る基板類 |
| ・ | 液晶パネル |
| ・ | 電源(ACアダプタ) |
から構成される。基板類や液晶パネルは本来別々に販売されているもので、液晶自作キットはそれをセットにして販売しているものである。つまり別々に購入すれば、基板に組み合わせる液晶パネルを好きに選ぶこともできるのである(もちろん基板が対応しているものである必要はあるが)。
では、各パーツを紹介していこう。まずはメイン基板と呼ばれるものである(写真1)。これはADコンバータやNTSCデコーダ、液晶パネルの制御チップなどが載っている。また、VGA、コンポジット、Sビデオの各入力端子やACアダプタの接続コネクタも用意されており、まさに液晶ディスプレイの核となる部分といえる。
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| (写真1)メイン基板。VGA、Sビデオ、コンポジットの3系統入力を持つ。取り付けてあるフレキシブルケーブルは液晶パネルと繋ぐもの |
(写真2)は、OnScreenDisplay(OSD)の操作パネルである。たいていの液晶ディスプレイには明度・コントラストなどを変更するOSDが用意されているが、この自作キットも同様であり、そのための操作パネルだ。なお、この基板は単にスイッチを寄せ集めただけであり、制御自体はメイン基板のほうで行われる。
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| (写真2)OSDのスイッチ基板。電源やメニュー操作のほかに、入力系統の切り替えスイッチがある |
(写真3)はインバータだ。インバータとは、液晶パネルのバックライトである冷陰極管に供給する電圧を発生させる装置である。今回の製品ではボリュームツマミがついており、バックライトの輝度を変更することもできる。
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| (写真3)インバータ基板。トランスが目立つ程度のシンプルな基板。中央にあるのが輝度を変更できるツマミである |
基板類は以上で、次に紹介するのが液晶パネルである(写真4)。液晶パネルは先述のとおり10.4インチで、800×600ドット表示のTFT液晶である。裏面(写真5)を見てみると、メーカーは富士通、型番は「NA19018-C101」となっている。
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| (写真4)液晶パネル。10.4インチのSVGAパネルとはいえ、TFTなので発色には期待できる | (写真5)裏面。向かって右端にあるコネクタとメイン基板がフレキシブルケーブルで繋がれる。左上に出ているケーブルはインバータと接続する |
ちなみに、これらを配線すると(写真6)のようになる。写真のみでは分かりづらいと思われるので、簡単に(図1)にまとめてみたが、すべてのコンポーネントはメイン基板に接続され、インバータについてはメイン基板から受け取った電気を増幅して液晶パネルに送る、というわけだ。
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| (写真6)実際の配線はこんな感じ。ケーブルの長さは限られているので、これをどうケースに収めるかが思案のしどころといえる | (図1)液晶自作キットの配線図 |
最後にACアダプタも紹介しておきたい(写真7)。ACアダプタは12V-2Aのものが付属しており、メーカーはなんと「秋月電子通商」である。このジャンクっぽさが、かえって魅力的に映ってしまうのは筆者だけだろうか……。
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| (写真7)付属のACアダプタ。わりと大ぶりな12V-2Aの製品 |
○ケース作り ~準備編~
液晶自作キットがどういうものか、大体お分かりいただけただろうか。しかし、これを「そのまま」使うわけにはいかない。そう、ケースに入れなければならないのだ。PCであればケースのバリエーションも豊富だが、液晶ディスプレイのケースというのは、さすがに入手できるものではない。
となると、ケースも自作するしかないわけだ。そこで、まずは簡単な設計図を作ってみた。それが(図2~5)である。要するにアクリルで箱を作り、その中に液晶自作キットを収納しようという魂胆である。フロント部分は見栄えをよくするために、アクリルの上にアルミパネルを被せることを予定している。
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| (図2)設計図(表) | (図3)設計図(裏) |
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| (図4)設計図(上下) | (図5)設計図(両側面) |
ところで、この設計図、(お気づきの方も少なくないと思うが)大きな間違いがある。筆者は、最後までそれに気付かずに作業を進めてしまったために無駄な作業をする羽目に陥るのだが、それは後述。
さて、素材と加工内容が決まったわけだが、加工のしやすいアクリルとはいえ、さすがにこれをすべて自分でやるのは大変だ。そこで、今回は大手のDIYショップに加工をお願いすることにした。最近ではこうした加工を行っているDIYショップも増えつつあるようだが、近場にそうしたショップがない、という人はアクリ屋など、通販で加工を行ってくれるところもあるので利用するといいだろう。
ちなみに、今回DIYショップで加工に関する注意などを聞いたところ、「寸法には1mm程度の誤差が生じる」とのこと。となると、表面でアクリル板とアルミ板を重ねたときにズレがあると、あまりにみっともないばかりか、スイッチ類の操作がスムーズに行えない可能性もある。今回は2枚重ねを諦め、カラーアクリルパネルを使って1枚で済ますことした。
また、側面で使う予定だった1mm厚のアクリル板だが、実際に触ってみるとあまりに貧弱な印象を受けたのと、ほかのものと同じ厚さにしてしまえば素材代が浮くという2つの理由で、2mm厚に変更した。
ちなみに今回の素材および加工にかかった値段は、
| ・ | 透明アクリル板(320×270mm) | 570円×2枚 |
| ・ | カラーアクリル板(320×270mm) | 650円 |
| ・ | アクリルパイプ(5×3×1000mm) | 100円 |
| ・ | 加工代 | 3170円 |
となっている。透明アクリル板の1枚は裏面、もう1枚は両側面と上下面を切り出してもらうわけだ。
そして、加工してもらった各パネルが(写真8)である。もっとも心配していた側面のインタフェース周りだが、わりとキレイに加工されている(写真9)。これならヤスリで調整する程度で済みそうだ。
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| (写真8)加工してもらった素材。左から両側面、続いて上下面、表面、裏面である | (写真9)もっとも気になったコネクタ部分の加工だが、想像以上に上手に加工してもらった。VGAコネクタのネジはアクリルの厚みもあるので、諦めて外すことにする |
なおアクリルパイプは、ネジ穴の役割を持たせるために購入したもの。これは、アクリル同士を接着したほうが強力だからだ。ただ、長いものは切断してもらえたが、細かなものは無理なようだ(写真10)。仕方なく、必要なネジ穴をカッターで切断することにする(写真11)。
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| (写真10)アクリルパイプ。長めのものはDIYショップで切断してもらってある | (写真11)短いものは自前で切断。パイプだとアクリルカッターも使いづらいので、普通のカッターで切る |
さて、設計図のところで「間違いがある」といったが、ここで発表しよう。まず1つ目は、表面フロントの穴である。(写真12)のように液晶パネルに空けられている固定用のネジ穴と表面の穴にネジを通すわけだが、残念ながら右上のネジ穴がズレているのだ。そこで、正しい位置にネジ穴を空けなおす作業を余儀なくされた(写真13~15)。また、もう1つ、両側面の長さが間違っているのである。設計図では296mmとなっているが、これは236mmの間違いである。ちょっと考えれば分かる話で、まったくもってお恥ずかしい限りなのだが、せっかくの機会なのでアクリルのカット方法も紹介しておこう。
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| (写真12)仮止めしてみた液晶パネルと表面。右上のネジ穴がズレてしまった…… | (写真13)仕方なく液晶パネルを当てて採寸し直し |
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| (写真14)正しい位置にドリルで穴を空ける | (写真15)下側が正しく空け直した穴 |
まずアクリルのカットには、(写真16)のようなカッターを利用する。これはプラスチックやアクリルなどの樹脂素材を「削る」ためのカッターで、500円前後から購入できる。これを使い、切断する場所を(写真17)のように削るのである。ただ完全に削る必要はなく、厚みの半分ぐらいまで削ったら折ればいい(写真18)。それでキレイに切断できる。
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| (写真16)アクリルのカットに欠かせないアクリルカッター。写真の製品はオルファの「P-450」という製品で、定価は450円 |
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| (写真17)定規を当ててひたすら削る。カッターで定規を一緒に削ってしまわないように、金属の定規、または断面が金属保護されている定規を使うと安心。写真の定規はSTAEDTLERの「962 06-30」という製品。値段を失念してしまったうえWebページに情報がないのだが、確か1,000円程度で購入したと思う | (写真18)最後にパキッと折れば切断終了。接着しやすいように切断面をヤスリで磨けばなお良し |
加工の準備段階としてもう1つ。裏面に空気孔を作ることにする。液晶ディスプレイはインバータによって大きな電力を発生させており、当然、使われなかった電力が熱となって発せられる。密閉してしまうのは好ましくないという判断だ。また、今回加工していただいたDIYショップは「穴1つにつき***円」のような料金体系だったため、複数の穴をあけると結構な値段になってしまう。このぐらいは自分でやろう、というわけである。
そこで、裏面の一部にコンパスで円を描きドリルで穴を空けることにする(写真19)。厳密さが求められる部分でもないので、間隔はかなり適当であるが、実際穴を空けてみると、それらしく仕上がった(写真20)。
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| (写真19)裏面にコンパスで円を描き、その円を基準に穴あけ位置を決定する | (写真20)実際に空けてみたバランスを見て、2カ所の穴あけを取りやめたが、空気孔の雰囲気は出ていると思う |
(多和田新也)
アクリル工作で世界にひとつのディスプレイ(2) 組立そして完成した"my液晶"
に続きます
CoCoNet液晶工房
秋月電子通商
http://akizukidenshi.com/
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