【MPF 2003 レポート】Efficeon、その全貌に迫る(2) - I/Oも高速化されたCMS

○I/Oも高速化されたCMS

話をEfficeonの中身に移すと、大きな変更点は11個の実行ユニット、それと4段になったCMS(Code Morphing Software)の変換モードである。まず前者(コレのPhoto05)について、「"Exec"とは何か?」と聞いたところ、「これはx86と関係ない、CMS用のSpecial Engineだ」とか。つまり通常のプログラムの実行では利用されないユニットだそうである。"Control"との違いが気になるが、いずれにせよ直接プログラムの処理を行うのは、この3つを除いた8つの実行ユニットということになる。

旧来のCrusoeが4命令同時発行の128bit VLIWで平均2.2命令/クロック前後の処理効率だったのに対し、Efficeonでは8命令発行の256bit VLIWで、これにより処理効率は5命令/クロックあたりになると想像されている。このあたりを聞いてもはっきりとは教えてくれなかったが「まぁそんなに大きくは違わない」という返事が返ってきたから、そう間違ってはいないのだろう。問題はこの効率を、ギアのどの段で実現しているか、である。

そもそも、この4段の違いが判りにくいのだが、このあたりを聞いてみると「1st Gearも4th Gearも、全てのケースで8命令の同時発行を行うようになっている。ただ異なるのは1st Gearの場合、1クロックで1個のx86命令を処理するようになっていることだ。この(x86命令→EfficeonのATOMへの)変換には50クロックを要するが、逆にいえばそのレイテンシだけで処理ができるからコストは最小になる。一方、2nd Gear以降はもうx86からの変換は行わず、CMSバッファに蓄えられた変換後の命令の最適化を行いながら処理することになるという。例えば2nd Gearでは100命令分の最適化に最大1,000クロック掛かるそうで、確かにこれはオーバーヘッドがかなり大きくなりそうだ。3rd Gearと4th Gearも同じ事で、同じ命令を繰り返し処理するほどGearが上がる事になる。このあたりはダイナミックに行われているそうだが、4th Gearまで一気に上がるかというと、必ずしもそうではないようである。先の5命令/クロックも、3rd Gearあたりがメインになった場合の数字の様だ。
CMSを使う場合、CMS Bufferが必要になる。例えば筆者の所有するLoox S80Cの場合、256MBのメモリを搭載するが、このうち32MBはCMSに占有され、Windowsからは224MBしか見えない。このあたり、Efficeonでは64MB位に増えるかと思ったのだが、依然として32MBのままだそうである。「CrusoeではCMS Bufferに蓄えるときに無駄が多かったのだが、Efficeonでは圧縮して格納することにしたので、Bufferサイズを変えなくても十分な容量が確保できる」のだそうだ。

CMSに関してもう1つ話がある。これはDitzel氏ではなく、Efficeonを使って開発を行っている、あるODMメーカーの開発担当者(コレのPhoto33の設計を行われた方)から伺ったのだが、Crusoeの時にはMemory I/Oや割り込みなどが全部仮想化されてしまっており、この結果Memory Read/Writeとか割り込みが入る際のサービスタイムが全く予測できなくなっていた。だから、ミッションクリティカルではないアプリケーションサーバー(例えばWebサーバー)などにはCrusoeを使う事は出来ても、応答時間の保証を要求される用途(一般的にEmbeddedにはこうしたケースが多い。例えば「リモコンのボタンを押したら1秒以内にメニューが出る事」といった類だ)には全く使えなかったという。ところがEfficeonではこの部分の仮想化を止めたそうで、これによりMemory I/Oの時間とか割り込み時間(割り込みが入ってからISRが起動されるまでの時間)の最悪値が規定されたそうである。これにより、Embedded用途に利用できる事になったとか。これは単にEmbeddedだけではなく、通常のWindowsアプリケーション利用時の性能向上にも当然ながら繋がる。CrusoeでI/Oが全般的に遅いのは、この仮想化が最大の理由だったわけで、これをやめればI/Oが全部高速化されることになり、ひいてはアプリケーションの動作速度の向上に繋がるという話である。

ちなみに前回の記事で「ちゃんとEfficeonでなければいけない理由があった」なんて話をしたので、これの補足もしておこう。コレのPhoto33はビデオレンダリング用のサーバーである。レンダリング自体は、GeForce4 Go 420で行うわけだが、画面全体はものすごく巨大なので、これを何百分割にもした上で、個々の要素をGeForce4 Go 420でレンダリングする方式だ。結果として、このブレードサーバーがウン百枚もラックに装着され、一斉に動くという方式である。

このため、個別のCPUは単にGeForce4 Go 420のコントロールをして、レンダリング用のデータを送り出し、必要ならレンダリング結果を再び受け取って戻すといった処理を行う事になる。そういう訳で、コントロールするCPUに求められるのは省電力性(なにしろウン百枚のブレードサーバーを同時に動かすわけだから、無駄に消費電力が増えるのは好ましくない)と省スペース性(ブレードサーバーだから、無駄にフットプリントが大きいのも好ましくない)となる。Pentium Mも考慮したそうだが、消費電力が高いのと、GeForce4 Goまで入れると4チップ構成となってしまう点、それとコストが高いのがネックだったとか。一方、Crusoeはというと、上述の通りI/O処理が遅い関係で、データの送受信が遅くなる点と、サーバー全体のコントロールとかを掛けてもレスポンスタイムが予想できないので、統合管理が事実上不可能であり、向いていないのだとか。Efficeonではこれらの問題が全て解決できた事が、ブレードサーバーに搭載された理由だそうである。

○その他の話

Efficeonの構成を見たとき気が付くのは、UMAソリューションが取れないことである。ハイエンドノートには確かにAGP 4X経由のディスクリートグラフィックスで済むが、それこそLoox S80Cの様なミニノートにはハイエンドグラフィックは不要だし、グラフィックチップ+フレームバッファという構成はフットプリントの増加を嫌うベンダーには好まれないように思える。勿論、Silicon ImageのSM700シリーズの様にフレームバッファ一体型のソリューションもあるから、一応3チップ構成で済む分スマートとは言えるが、もっと小さくても良い様に思える。可能性としてあるのは、今のサウスブリッジにグラフィックをUMA方式で内蔵するか、あるいはCPU側に搭載するかという形だが、後者についてはTM6000の開発中止と同時にそうしたプランは放棄したそうで、こうした可能性は無いそうだ。だとすると、可能性としてあるのは前者である。開発中止になってしまったが、NVIDIAはCrush K8Gというグラフィック統合サウスブリッジの計画を持っていたし、来年にはCrush G3という統合チップをリリースする。また、2チップ構成でよければSiSのSiS M760はUMAをサポートするから、リーズナブルにも見える。

こうした可能性についてDitzel氏は「勿論、Athlon64と同じようにHyperTransport Linkを使っているから、技術的には可能だ」と前置きした上で、「今のままでも十分にフットプリントは小さいから、ディスクリートが不利だとは思えない。むしろ色々なグラフィックが選べる訳で、今のままの方が望ましいと思う」という見解だった。

ところで、Transmetaといえば昨年5月、現CEOであるMatthew R. Perry氏の初来日にあわせて「Japan First」戦略を発表した訳だが、その後「Japan First」戦略の要だった筈の和田信氏(当時の肩書きはJapan Country Manager)がニューコアテクノロジーに転出してしまうなど、その先行きがちょっと不安視されていた。これについて確認したところ、「依然としてJapan First戦略は有効だし、結果も出ている。今回シャープと富士通から開発サンプルが出ているのがその証拠だし、ファウンダリだって富士通なんだし」とやや楽天的な返事が(ファウンダリはこの際関係ない気がするが)。

一時期はSONYやCASIO・NEC・富士通・日立など多くの日本ベンダーがCrusoe搭載のノートPCを出していたのに、現在は殆ど発売されていない事についても、「製品ラインがうまく繋げなかった事で確かに今はシェアを落としているが、既に多くのベンダーと話をしているし、具体的な話も進んでいる」と強気だった。実際、ノートはともかくブレードサーバーや小型サーバーのマーケット向けに、日本のあるPCベンダーがEfficeonでの開発を進めているという話もあり、(ジャンルを問わなければ)案外かなりの量の出荷が見込める可能性もある。特にEmbedded向けには、急速に普及しそうな雰囲気が感じられた。一度は危ぶまれたかにも思えたTransmetaだが、案外このマーケットに助けられて復活するかもしれない、と筆者は感じている。

(大原雄介)

【MPF 2003 レポート】Efficeon、その全貌に迫る(1) - 単なる低消費電力機構ではない「LongRun2」
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/10/20/16.html

【MPF 2003 レポート】詳細が明らかになったEfficeon - 省電力面で本領を発揮
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/10/16/19.html

Transmeta
http://www.transmeta.com/

MicroProcessor Forum
http://www.mdronline.com/mpf/



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