【インタビュー】AMD PCSグループ(1) - なぜAMDはGeodeを手に入れた?

Photo01:COMPUTEX TAIPEI 2003のHall 3で展示中のGeode GX2とAlchemy。今回AMDのブースはEmbedded関連のみだった。

AMDはNS(National Semiconductor)から同社のIAビジネス部門を買収し、Geode統合プロセッサと133人のメンバーが同社のPCS(Personal Connectivity Solutions)グループに移動した。COMPUTEX TAIPEI 2003においても、ブース展示はPCSグループのみとなっており、ここでGeode GX2の動作デモが展示されるといった力の入れ様だった(Photo01)。

この買収はどんな目的があり、この結果PCSグループの製品展開がどんな風に変わるか、というあたりを中心に、PCSグループ Vice President of MarketingのPhil Pompa氏とDirector of Marketing、Erik Salo氏に伺った(Photo02)。

--まずAMDが今回Geodeを手に入れた目的を教えてください。

Photo02: 右はPhil Pompa氏(Vice President of Marketing, PCS)。Alchemyからの移籍だが、元々はというとAMDに在籍していたお方。左はErik Salo氏(Director of Marketing, PCS)。こちらはNSよりGeodeと一緒に移籍してこられた。Salo氏はまだAMDに移籍後3週間だとか

Erik Salo氏(以下 S):PCSはAMDでPC以外の全ての部分をカバーします。例えばモバイルクライアントやセットトップボックス、アクセスクライアントなどですが、この目的のためにAlchemy以外にGeodeを今回手に入れました。私たちはこれをAMD Geodeというブランドで販売します。つまり、Geodeというブランドを残すことにした訳です。というのは、Geodeの名前は業界で広く認知されているからです。

今回買収を行った理由は2つあります。まずひとつは製品ラインの穴を埋めることができるからです。現在AMDは低消費電力向けにAlchemyを持っており、一方ハイパフォーマンス向けにはDuronがあります。Geodeはこの中間に位置し、6~7Wの消費電力でよいパフォーマンスを提供するソリューションとなります。AlchemyはMIPSアーキテクチャで、消費電力あたりの性能は非常に良いのですが、絶対性能の点でDuronとの間には大きな差があります。この製品ラインの間隙を、Geodeで埋めることが出来るわけです。

Photo03:Geode GX2のサンプルボード。CPUとメモリ、BIOSなどは中央のドーターボードにまとめられ、マザーボードとはPC104バスで接続されている

Phil Pompa氏(以下 P):もうひとつの理由は、Geodeが持つマーケットです。セットトップボックス、特にVOD(Video On Demand)タイプに対応したセットトップボックスやアクセスクライアントのマーケットは、x86ベースとMIPSベースの両方の製品がありますが、Geodeを持つことでどちらのソリューションも提供できるようになりました。現在我々は、(クライアントが製品を作るために)必要とするハードウェア、ソフトウェア、リファレンスデザイン、全てを提供できます。例えばモバイルクライアントはx86とMIPS、セットトップボックスはx86、アクセスクライアントは主にMIPSが使われる事になるでしょう。

--x86というのは、DuronとGeodeのどちらでしょう?

P:主にGeodeでしょう。セットトップボックスの場合、Geodeで多くのDesign Winを獲得しているからです。このマーケットにおいて、Geodeは最適なソリューションになると確信しています。また、シンクライアントマーケットにおいても同じです。特に日本などでは、こうしたIPベースのセットトップボックスはこれから大きく伸びると思っています。

--製品展開は変わるのでしょうか?

P:Geodeの製品ラインナップは(NSの時と)変えません。また、開発チームもそのまま引き続きこのマーケットにフォーカスして開発を続けており、同じチームが引き続きGeodeを担当することになります。短期的に見れば、(Geodeと共に獲得した)新しい顧客からの収入は重要な要素で、長期的に見ればGeodeの開発チームという人材を獲得したことが重要な要素となります。この組み込み(Embedded)というマーケットを良く知るエンジニアを大量に獲得できたのは、AMDにとってとても貴重なことです。

NSは基本的にアナログ回路の会社です。だから、CPUのサポートや販売はGeodeの部隊だけでやらなければならなかったのです。ところが、AMDはプロセッサの会社です。全てのセールス部隊はプロセッサのことを熟知しており、ビジネスサイクルは全て「いかにプロセッサを売るか」に集中しています。これはGeodeのチームにとっては非常に喜ばれているのです。

S:元々プロセッサのチームはCyrixからやってきました。CyrixはCPUビジネスの会社だったが、NSは異なる文化の会社です。ですから、マーケティングひとつをとっても、CPUメーカーならば当然必要とされるローエンドからハイエンドまでの製品展開も、(NS社内では)非常に難しかったのです。ところがAMDは文化が(Cyrixに)似ており、当然製品展開が必要という話になります。だから、私は(AMDに買収されて)嬉しいのです(笑)。

--それと顧客ですよね?

P:その通りです。内部の視点から言うと、CPUの開発チームを作るというのは、とても難しい事なのです。(ちゃんと機能するようになるまで)何年もかかりますから。彼らは10年間一緒に仕事をしてきて、うまく行っています。だから、このチームを解散させるような事は避けたかったのです。

S:Geodeソリューションは既にあり、マーケットも確立し、そしてシングルチップソリューションも提供できています。Geode SCx200はCPU、ノースブリッジ、サウスブリッジ、グラフィックス、SuperI/Oの全てが統合されています。だから、x86互換のマシンをシングルチップで構築できることになります。しかも消費電力は少ないのです。

SC1100はグラフィック以外の全てのチップを統合しているので、例えばグラフィックが不要だとか、あるいは別種のグラフィックスを使いたい場合に利用できます。そして次世代の製品であるGX2の量産が既に始まりました。これは非常に高いパフォーマンスを持ち、消費電力は驚くほど低いのです。動作中のGX2のコアに触れてもらえればこれは判るはずです。非常に高密度で、しかも小型で、どんな種類のアプリケーションにも向きます。例えばこれ(Photo03)はWindows XPのデスクトップが動作しています。プロセッサユニットは中央のこのカード上に集約されており、極めて小さなマシンを作れる事が判ります。

P:MIPS製品に関して、SC1100とSC1500は全世界で出荷を行っており、例えばこれを使って802.11b/gのルーターを作る事もできます。我々はこのマーケットへ更に注力してゆく予定です。我々は、組み込みマーケット向けにMIPSとx86という2つのソリューションを手にしました。こうしたマーケットでは、単にCPUだけではなく、システムデザインが非常に重要なのはご存知の通りです。PCマーケットならば、単にCPUだけを売っていれば良いのです。ここで重要なのは価格と性能だけですし、製品のライフサイクルはせいぜい1年程度ときわめて短いので、新しい製品を次々に投入してゆけば良いのです。ところが組み込みマーケットでは、平均で5年程度は製品を継続して販売する事が求められます。だから、CPUに関しても(デスクトップと比べて)はるかに長期間の製品寿命を持つことになります。だから、PCとEmbeddedは同じビジネスの尺度では考えられないのです。加えて、我々は多くの(ソリューション)パートナーと手を結ぶ事が出来ています。これはマーケットにソリューションを提供する上で、重要な助けとなるのです。

S:シンクライアントの分野でGeodeは大きなシェアを獲得しています。そして、我々はマーケットの規模自体が成長する事を望んでいます。例えば教育の分野に今後PCは欠くことができませんが、PCは高価で、小型化するのは難しい。そこで我々は教育機関向けのシンクライアントを作りました。このソリューションを使うことで、安価かつ容易に、教育機関向けのシステムの構築が可能になります。現在米国の幾つかの場所でパイロットプログラムを実施しており、これがうまく行けば更にマーケットは広がってゆく事でしょう。我々は単にチップを売るのではなく、システムを提供するビジネスをしてゆきます。つまり、CPUやサンプルボードだけでなく、様々なソリューションの全体を提供してゆくという意味です。

(大原雄介)

【インタビュー】AMD PCSグループ(2) - Geode/Alchemy/Duronの共存
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/10/08/12.html
に続きます

COMPUTEX TAIPEI 2003レポート
http://pcweb.mycom.co.jp/news/special/2003/09/23/01.html

AMD
http://www.amd.com/



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