ヒューマンインタフェース学会は9月30日から3日間、国立オリンピック記念青少年総合センターにて「ヒューマンインタフェースシンポジウム2003」を開催した。
毎年開催されているこのシンポジウム、今年は「元気の出るヒューマンインタフェース」をテーマとして、200件を超える研究発表が行われた。ここでは、その中で注目したふたつの発表を紹介したい。
○なめらかなインタフェース「MeltingSound」
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| 試作されたMeltingSound |
従来のレコード、テープ、CDといった記録メディアに加え、音楽をコンピュータ上に格納して聴くというスタイルが定着して久しい。ディスプレイ上に再現されたCDプレイヤーに続いて、MP3ファイル再生ソフト、シリコンオーディオプレイヤー、「iPod」に代表されるHDD内蔵携帯音楽端末へと、音楽環境は激変を続けている。
にもかかわらず、コンピュータ上の音楽プレイヤーは、従来通りのCD操作パネルを再現したデザインが主流となって続いている。これではコンピュータのメリットを充分活用していないのではないか、というのが神原氏の研究の発端である。
「なめらかな」というのは、いま注目されているヒューマンインタフェースの新しいコンセプトである。従来のコンピュータのインタフェースは、キーボードを使ってひとつひとつ選択したり、ウィンドウに分かれた情報を切り替えて使ったりと、かなりばらばらな動作から構成されている。
これに対して、たとえば紙の本をぱらぱらとめくったり、音のボリュームを連続して変更するような「なめらかな動作」を取り入れることで、動作に連続感が出て、より身体性に即したインタフェースに変わるのではないか。といったアイデアが「なめらかなインタフェース」で、1995~1996年に、産業技術総合研究所の増井俊之氏と京都工芸繊維大学の水口充氏らによって提唱された。より正確に論文を引用すれば、なめらかなインタフェースは、「WIMP(Windows/Icon/Menu/Pointing device)」を超えるものであり、「連続性」「可逆性」「直接性」「直感性」をもつインタラクション手法を意味している。
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さて、神原氏の「MeltingSound」は、音楽1曲1曲をサムネイルつきの円で表現する。この音楽の「円」は、直接持って移動することができ、自由に場所を移動したり、並べたりすることができる。もっとも興味深いのは、円に近寄っていくと、その曲の再生音が次第に大きくなることである。ポインタのある場所に複数の円が重なっていれば、なんと複数の音楽が同時に再生されることになる。
立食パーティーの会場で、いろいろな場所をゆらゆらと動きながら、楽しそうな話題を探すような感覚に似ている。曲を探して再生するのではなくて、連続した空間で流れている複数の曲に直接寄っていって探し出すような感じだ。
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| 【動画】デモの様子(WMV8形式 13秒 252KB) |
空間内での円の配置は完全に自由であり、曲は近くにある円の順番に再生されるので、似たような曲を近くに集めておくと、その順番に再生することができる。従来のテープ/レコードなどのメディアに記録された音楽再生とは、まったく別次元の音楽再生環境である。ボリュームも再生ボタンも曲再生のために文字で作ったデータベースもまったく必要としないのである。
じつに興味深い手法で、会場からは期待感にあふれた質問が相次いだ。とくに、スケーラビリティ、つまり大量の曲を再生した場合の表示方法への質問が集中したのは、いますぐにでも使いたいという期待感の現れだろう。
神原氏によれば、「MeltingSound」は画面の広さから現時点では70曲ぐらいが上限となり、サムネイルの登録も手動で行っているということだった。もしこれを商品としてリリースすることになれば、アルバムジャケットの自動サムネイル取り込みとか、曲調によるオートカテゴライズとか、数千曲レベルでの実用インタフェースの検討などが必要になるだろう。ちなみに会場では300曲、3,000曲という声があり、筆者自身も3,000曲は最低限必要なスペックだと考えている。この概念を敷延したソフトの登場が待たれる。
○モノをなくす理由と対処
ふたつめは、「思い出と認知」セッションでのNTTマイクロシステムインテグレーション研究所の新垣紀子氏の「なぜ人はモノをなくすのか? ユビキタス環境における人の認知過程の検討」である。
ユビキタス環境では、すべてのものにRFIDタグをつけて、ものに呼びかけたら、そのものが返事をするというようなインタフェースも考えられている。新垣氏は、こうした個別のインタフェースの構築に先だって、そもそも「なくしモノ探しモノにおける、人とモノのかかわりの認知過程を研究することで、広くユビキタス環境でどのように支援することが可能なのか」をテーマに研究を進めている。
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支援するためには、まず、モノの全体像を知る必要がある。そこで、人はどのくらいのモノに囲まれているのかを調査する。過去の事例では、早稲田大学建築学科教授で 「考現学」の創始者として知られる今和次郎氏が1925年ごろに調査したデータや、シンクタンクCDIによる1975~1992年にかけての生活財調査、2002年の国立民族学博物館特別展「ソウルスタイル」などがあるという。ひとことで言えば、人はモノに囲まれて生活していて、CDI調査リストでは項目が4,000種類。このうち約40%を保有するというから、ざっと1,600種類のモノが家庭にはあるということだ。ソウルスタイルでは、さらに増えており、家の中の生活財は1万点以上にも上るとか。
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さらに認知心理学的な調査を行い、モノをなくす状況について112件のエピソードを収集したという。これをドナルド・ノーマンの「行為の7段階モデル」を使って整理し、「なくしモノ」は、保存時のエラー、保存中の移動(他者による移動)、探索時のエラーからなり、それぞれがどんな特徴があるかを分類した。
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モノをなくす、ということは、ごく日常的なできごとであるだけに、今後、より具体的にどのようにユビキタス環境でサポートしていけばよいのか、という広がりのある実践的な研究が待たれる。
(美崎薫)
入力をしない時代のメモ活用インタフェースMemorium
【レポート】未来のインタフェースの鍵はEmotionalなデザイン - ドナルド・ノーマン氏
ヒューマンインタフェース学会
http://www.his.gr.jp/
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