【COMPUTEX TAIPEI 2003レポート】XGIインタビュー(1) - 謎に満ちたグラフィックスメーカー「XGI」の姿

 Photo01:インタビューのお相手をしていただいた、Division Director, Corporate Marketing Divisionの張 宇安(Andy Chang)氏。

SiSから分社化する形で設立されたXGI。当初は"Xabre Graphics Inc."の略と思われていたこのXGI、突如としてTrident Graphicsを買収、そしてCOMPUTEX直前にVolariシリーズグラフィックコアを発表するなど、その動きは謎に満ちていると言っても過言ではない。一体XGIはどんな会社で、Tridentを買収して何をしようとしているのか、あるいはXabreIIはどこに行ってしまったのか? いろいろと謎に満ちたこのXGIにインタビューする機会に恵まれた。あいにくPresidentへのインタビューは実現しなかった(なんでもインタビューの時間はちょうど上海からこちらに向かっている最中だったとか)が、いろいろと興味深い話を聞くことができたので、ご紹介したい(Photo01)。

-- まず最初に、会社の生い立ちについてお伺いしたいのですが。

最初は、そもそもSiSからスピンオフして新しい会社を作るアイディアが出ました。というのはGPUの世界は非常に難しく、人的リソースも必要とするからです。当社のGPUのデザイナーは、非常に有名な企業をいくつか経てきた人物で、十分にこの分野の事を知っています。実のところ、「XGIはXabreグラフィックを使ったグラフィックベンダーである」といううわさが根強くありますが、そういう事実はありません」

-- 単純に考えると、SiSはReal256とXabreを持っており、それらを開発したエンジニアがXGIに移動している以上、XGIがXabreを持つことになっても不思議ではないのですが、なぜXabreはSiS側に帰属しているのでしょう。

SiSはXabreを使って多くのビジネスをしており、OEM先も多いからで、またXabreはUMAソリューションにも使われています。また、Xabreはローエンドのイメージで捉えられる事が多いという問題もあります。我々は新しい会社を、別のポジショニングにしたかった。そもそもスピンオフした理由というのは、R&Dのグループが、従来のマザーボードビジネスに依存するような形ではなく、もっとハイエンドを狙いたかったというところにあります。ですから、Xabreを持つ予定はなかった。株主もまたこれを支持しています。

-- つまりXabreはハイエンドグラフィックマーケットを狙うつもりであって、その前提の1つにTridentの買収があった、と。

概ねその通りです。

-- ところであなたは、SiSはXabreを使ってのビジネスをしていると仰いましたが、Xabre80を統合したチップセットはすべて発売が中止されており、XabreIIもまた出てきません。これについて何かご存知ですか。

そのあたりははっきりしないのですが、ただIntelがVIAと提携を結んだ結果、VIAがより強力な統合チップセットをリリースする可能性が出てきているわけで、従ってチップセットビジネスによりフォーカスするための措置なのかもしれません。つまり、開発リソースをチップセットビジネスに集中させた結果の可能性があります。我々は、グラフィックコアをIPの形で提供する事を考えており、新しいVolariコアを準備しています。Volariはハイエンドにポジションされるコアで、例えば3DMark2003で5600ものスコアを出せるほどの性能があります。これが、例えばRADEON 9800 Proと同等のレンジにあることがお分かりでしょう。他にも多くのベンチマークを通して、この事を示すことができます。我々は、Top to Bottomの方針を取っています。つまり上(Volari V8 Duo)から下(Volari V3)まで、幅広いレンジの性能の製品を提供します。

- つまりNVIDIAやATIと競合するポジションにあるということですね。では、S3は?

S3は競争相手となりません。彼らの新製品はやっとA0ステータスですが、安定しません。私はもう彼らのサンプルボードを見ましたが、良いとは言いがたい。まじめにお答えすると、彼らはあるプロジェクトのために300人を投じてグラフィックコアの開発を行いましたが、失敗しました。この結果、ATIがそのプロジェクトを取ることになった。この結果、彼らは有効なグラフィックコアを未だに持ちえずにいます。もちろんVIAの別の部署には、別のトライをしている人がいます。彼らは十分な資金があるので、そうした事が可能です。ただ、我々はATI/NVIDIAに次ぐ3番目のポジションにあり、しかも価格競争ではなく性能競争を挑むことができます。

-- つまりコストパフォーマンスではなく、絶対的な性能、あるいは品質などで勝負できるというわけですね? ただ、私の理解ではTridentのXP4/XP8といったコアは、確かに良いデザインではありますが、パワフルという訳ではありません。XP8は最初のDirectX9コアで、最大8パイプラインをサポートしますが、これは言ってみれば「マジック」があるわけで、基本的にはトランジスタ数を抑える方向のデザインです。ですから、相対的に性能が良い割に、ダイサイズはきわめて小さく、コストも低く抑えられます。が、今のVolari V5/V8のダイは非常に大きく、しかもあなたはハイパフォーマンスだと仰る。一体どういったエンジニアリングで、この様に進化したのでしょう?

えーと、では基本的なところから整理しましょう。XGIにはSiSチームとTridentチームがおります。SiSチームはデスクトップにフォーカスし、Volariシリーズを開発しました。V3からV8 Duoまでのラインナップは、ATIやNVIDIAに対抗できる充実したものです。その一方、Tridentのチームは引き続きもモバイル向けにフォーカスしています。モバイル向けの場合、省電力性やコストが非常に重要な事で、その次にインテグレーション性や性能が求められます。TridentのXP4/XP5/XP8は依然として存在しており、これはVolari XP4/Volari XP5/Volari XP8としてラインナップされています。つまりXPコアはそのままモバイル向けに販売してゆく予定です。

-- つまりVolari V3/V5/V8は、Tridentベースでは無い訳ですね。

其の通りです。デスクトップ向けとモバイル向けの両方のコアをラインナップすることで、相乗効果を得ることができます。これにより、両方のマーケットをカバーできるからです。

-- モバイルに関して言えば、Tridentはディスクリートと統合用の両方をラインナップしていました。ULiは引き続きTridentのチップを使うと言っていましたが、これはつまりXGIが引き続きULiにXPコアを提供するということですか?

Tridentはグラフィックコアを多くの会社にIPコアとして提供していました。SiSやULiもその1つです。われわれはULiと共に、引き続きモバイル向けにソリューションを提供してゆきます。SiSは勿論の事です。われわれは多くのパートナーを獲得しています。これはわれわれにとって、Win-Winの関係になるわけです。勿論われわれはXPシリーズの更なるパフォーマンスアップに努めています。

Tridentはピークで250人ものR&Dチームを抱えていましたが、これはグラフィック部門の開発チームとしてはちょっと多すぎます。そこで彼らはスピンオフを考えており、そこで我々は彼らと一緒に仕事することにしました。現在R&DチームはSiSグループ、つまり台湾チームとTridentグループ、つまりUSチームから構成されています。現在のVolari、つまりSG40は台湾チームで行っていますが、次のV9というコアはUSチームで開発することになります。つまり、2つのチームが交互に開発することで、すばやく製品を投入することが可能になります。USは良いアーキテクチャや、有能な人材がそろっています。台湾も、新竹には非常に強力なメンバーが揃っています。特にICのFabless製造に関しては熟知しています。

 Photo02:Volari V8 Ultra。8パイプラインで350MHz駆動、DDR 375MHzあるいはDDRII 500MHzメモリをサポートする。大体ATI RADEON 9600 Pro相当とか。
 Phoot03:Volari V5 Ultra。4パイプラインで350MHz駆動。メモリのサポートはVolari V8に同じ。RADEON 9600 SEあたりにあたるのだとか。非常にダイサイズは大きい。(というか、Volari V8と同じダイサイズだった)

-- 生産に関しても教えてください。TridentはUMCを使って製造していましたが、XGIでは今後TSMCとかSMICなど、UMC以外のFabを使う可能性はあるでしょうか。というのは、例えばATIはTSMCとUMCを、NVIDIAはTSMCとIBMを、それぞれ使っています。一般論として、Fabless会社が特定のファウンダリに依存するのは危険だと思うのですが。

私はUMCは非常に強力なパートナーだと思っています。今のところ、我々はUMCでの生産に専念しており、他のファウンダリを使うことはないでしょう。ライブラリやデバイス特性など、すべてが異なってくるからです。ファウンダリを変えることで発生するトラブルは避けたいと思います。例えばNVIDIAはIBMに生産を委託した結果、生産のショートが発生しています。同様にATIも9800シリーズがショートしていますよね? UMCの生産分は大丈夫ですが、TSMCに委託した分が生産が滞っています。我々の様な新しい会社にとっては、1つのファウンダリに集中することがむしろ良い結果をもたらすと信じています。そして、今のところUMCとの共同作業は大変うまく行っています。

-- 次にマーケットの話を少しさせてください。長期的な視野で見ると、ディスクリートのグラフィックチップのシェアは次第に減ってゆき、統合型チップセットのシェアが増えるという見通しがよく語られます。実際ATIはRADEON IGPを、NVIDIAはnForce2/nForce3をそれぞれリリースするなど、こうした統合型への移行に備えている様に見えます。こうした、ハイエンドマーケット全体が縮小傾向にあるなかで、どうやってマーケットポジションを得るお積りでしょう?

まずATIとNVIDIAについて話をしましょう。彼らは非常に大きなビジネスをしています。彼らの毎月の売上は非常に大きく、会社の規模も大きい。これに対し、我々は非常に小さな会社です。多分(彼らの)5%以下です。だから、仮にマーケットが縮小したとしても、我々がシェアを落とさなければ生き残ることは可能です。彼らがグラフィックだけでなくDigital Homeやチップセットなどを手がけるのは、そこまで多角化しなければ会社規模を維持していかれないからです。我々はSiSやULiにIPコアをライセンスすることで、(チップセット自体に手を出さなくても)十分にやっていかれます。

また、今後AGPからPCI Expressへのトランジションがあります。これにより、大きな需要が生まれることになるでしょう。Digital Homeに関しては、ビデオ部分のホットスワップという需要がありますが、これに対してのソリューションは既に準備できています。我々は30inch LCDのデモを既に実施しています。

加えて言うならば、確かに割合自体は減ってゆくかもしれません。ただ、DX9/DX10のマーケット自体はどんどん大きくなってゆきます。IntelやATI、NVIDIAはDX9世代のグラフィックコアをチップセットには統合しきれません。というのは、ダイサイズが巨大になってしまうからです。従って内部をシュリンクする必要があり、パフォーマンスはとても低くなってしまいます。DX9世代は実装がとても複雑になるので、どうしてもダイは大きくならざるを得ません。ところがチップセットの価格は大変に安いので、結果としてマージンはきわめて少なくなってしまいます。Intelですら、そうしたマージンは非常に少ない。

その一方、グラフィックスは進化しつづけなければいけません。DX9の世代は1000万トランジスタで何とか実現できますが、おそらくDX10の世代では2000万トランジスタが最低でも必要になります。ある程度の性能を出すためには、CPUを超えるトランジスタが必要になるでしょう。IntelはCPUの会社ですから、グラフィックコアがCPUより大きくなることは許容されないでしょう。結果としてトランジスタ数は少なく抑える必要があり、きわめて性能が低いまま推移することになります。で、通常は統合チップセットを最初に使っていても、すぐにアップグレードをすることになります。特にMicrosoftのLonghornやその次の世代は、高いグラフィックスやビデオの性能を要求するでしょう。ですから、統合チップセットでこれに対応するのは非常に難しい。我々はディスクリートグラフィックスに専念していますが、このマーケットは更に大きくなることが期待されます。仮に統合グラフィックスが40%とか50%のシェアに達しても、我々には十分チャンスがあると思っています。

-- NVIDIAやATI、IntelはDX9世代に関して、Pixel Shaderだけを実装し、Vertex Shaderはソフトウェアエミュレーションを考えているようですが。ただ、CPUのパフォーマンスがどんどん上がっていることを考えると、これはこれで賢明なアイディアに思えますが?

それは其のとおりだと思いますが、次第により高いビデオ性能、より高いバンド幅、より高いパフォーマンスが求められるのが世の常です。統合型は常にローコストが最優先ですから、どうしても制限はつきます。すべての要求をキャッチアップできるのは、ディスクリートということになるでしょう。

-- つまりマーケットが今後急激に増えることがないとしても、XGIにとっては十分なマーケットシェアということですね?

その通りです。

(大原雄介)

【COMPUTEX TAIPEI 2003レポート】XGIインタビュー(2) - Volariはラテン語で「スピード」を意味 - に続きます
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/09/24/20.html

COMPUTEX TAIPEI 2003レポート
http://pcweb.mycom.co.jp/news/special/2003/09/23/01.html

XGI
http://www.xgitech.com/



人気記事

一覧

イチオシ記事

新着記事