【WPC EXPO 2003レポート】チームつかもと「21世紀最初のウェアラブルショウ」

      [2003/09/24]

    大阪大学大学院の塚本昌彦氏(左)と山本紗有里さん

    幕張メッセで開催されていた「WPC EXPO 2003」の最終日には、初日に「予告編」が行われた、チームつかもとによる「21世紀最初のウェアラブルショウ」が開催された。

    司会を務めるのは、チームつかもとを率いる大阪大学大学院の塚本昌彦助教授と、鈴鹿8時間耐久ロードレースで「HMDを着けたレースクイーン」として注目を集めた山本紗有里さん。この日もそろってウェアラブルPCとHMDを装着して登場した。塚本氏らの研究「ウェアラブル司会プロジェクト」でも触れられているように、HMDを利用することで、司会はカンニングペーパーを用意しなくても進行に関連する情報を確認できるほか、ディレクターからリアルタイムで指示を受けることが可能となっている。

    まず最初に、この夏の鈴鹿8耐で実際に運用が行われたウェアラブル情報システムについて、開発の中心となったウエストユニティスの福田登仁氏を招いて解説と報告が行われた。今回、この企画が入ってからシステムが完成するまでわずか1カ月ほどの期間しかなく、開発は急ピッチで進められたという。直前までバグが残り、サーキットでも早朝からの準備を余儀なくされたが、決勝レースで行われた約7時間半のデモンストレーションでは、ほぼノートラブルで情報を表示し続けることに成功した。ウエストユニティスはCGを利用したサービスマニュアル(機械組立・整備用の説明書)の製作などを手がけており、「今後は、従来から関わりのある四輪の分野でもサポートをしていきたい」(福田氏)と新たな意欲も見せている。

    ウエストユニティス 福田登仁氏
    ステージの解説のほか、ブースではデモ稼働を行った

    続いて登場したのが、関西でデビューし近年は海外での活動にも力を入れる、お笑い芸人のぜんじろうさん。塚本氏を初めて見たときは「なんか怪しい人がおる!」と警戒したが、その場で「これ(HMD)で何かネタを」と頼まれ、熱意に負けて了承したという。イギリス公演の際、HMDを装着してそれに関係するネタを披露したが、わかりにくかったのかウケはいまいち。それでも、街で道行く人たちにHMDを見せると意外に「これいいね」という声が多く聞かれ、試着する姿もさまになっていたという。また「(HMDを)日本人がパッと出すと、みんな日本ではもうこれが流行ってるものだと思って、中に映したDVDの感想を言う」ということで、HMDというデバイス自体は特に珍しいものという雰囲気もなく、画面に映った日本のアイドルタレントにみんな興味津々だったという。

    ぜんじろうさん
    HMDネタはちょっとわかりにくい?

    イギリスでは好評のHMD
    「いくらなら買う?」との問いにはおよそ「100ポンド」という答えが多い

    そしてこのコーナーの最後に登場したのが「顔面ディスプレイ」。タブレットPCをお面のように顔面に装着した、前代未聞のウェアラブルデバイスである。この画面にぜんじろうさんの顔を映し、声をスピーカーから出すことで、誰でも今日からお笑い芸人に変身というわけだ。「動物の物まねをする」と言って本当に画面にその動物を出してしまったり、バラエティ番組のように画面下へテロップを流してみたりと、使い方はさまざま。ウェアラブルデバイスがお笑いの表現をより豊かにした、かどうかは微妙なところだが、研究室の中だけでは絶対に生まれないアプリケーションだったことは間違いない。

    前代未聞のウェアラブルデバイス
    テロップ効果も可能

    上田安子服飾専門学校 大江瑞子校長
    その次は、ウェアラブルデバイスや電気的な装飾を利用したさまざまな衣装がステージを飾る「ウェアラブルファッションショー」。上田安子服飾専門学校の大江瑞子校長らの作品が多数披露された。予告編でも一部登場した、LEDによるアクセントをあしらったイブニングドレスでは、点滅にしか見えないその光が、実は「光、心、行」「LOVE, WORK, MIND」といったメッセージを表示しているなど、秘められたコンセプトについても解説が行われた。

    また、ファッションのノウハウとウェアラブルのアイデアが見事に融合したのが、ベルトを利用した肩掛けスタイルのタブレットPC。タブレットPCをいかに格好良く見せるかに困った塚本氏が、100円ショップでベルトと金具(合計金額600円)を購入して上田氏を訪ねたところ、ベルトが美しく見える長さやカットの方法などを"伝授"され、PCがファッションアイテムに早変わりしたという。ブースにもPCをファッショナブルに持ち歩くためのさまざまな工夫が展示されていたが、比較的安価な素材でも工夫を凝らすことができるのだから、メーカーがモバイルPCの設計段階からウェアラブルを意識し、オプション品としてベルトなどを提供すれば、さらに格好良くPCを身につけることが可能になるのではないだろうか。

    エレガントなイブニングドレスは、胸元(左写真)と腰(中写真)に光のメッセージを表示。肩掛けタイプのタブレットPC(右写真)はウェアラブルとファッション両方のアイデアが融合した例

    予告編や鈴鹿8耐で披露された衣装も登場。今回はワイルドなメンズも発表された

    最後のコーナーは、PDA楽器を操る「つかもとバンド」と、ヤマハの"光るギター"「EZ-EG」の開発プロデューサー・旭保彦氏らによるバーチャル楽器の「EZバンド」によるセッション。EZバンドは、まだ製品化前の「歌うトランペット」と、ウッドベースサイズの「EZベース」をここでお披露目した。歌うトランペットは、くわえてメロディーを口ずさむと、その音階通りの音がスピーカーから発音されるというもので、少し離れたところから見ると本物のトランペットを演奏している姿と変わらない。EZベースはEZ-EGをベースサイズの板に貼り付けて音色を変えただけのものだが、旭氏によると「ベースを弾いた気になる、という"なりきり"感覚が得られることを重視した。エンタテインメントではこういった"身体性"が重要」といい、バーチャル楽器では外見やインタフェースを本物に似せることが大事な要素であると説明した。

    「つかもとバンド」のフルメンバー。塚本氏のほか、大阪大学サイバーメディアセンターの寺田努氏(中)と、大阪大学大学院の田中孝浩氏(左)。「TSUNAMI」「夜空のムコウ」を熱唱

    PDAドラムの華麗なスタイラスさばきは必見
    しかもバスドラム用に足下にもPDA

    ヤマハの旭保彦氏、櫻田信弥氏、臼井剛氏(写真左より)。EZベースは大迫力だがよく見るとEZ-EGのような……しかし、この"なりきり"感が重要なのだ

    ○ステージと展示を終えて

    ステージを終えた塚本氏に聞くと「予告編のときはHMDの調子が悪く情報が表示されなかったが、今回は正しく機能したので安心して楽しく司会を務めることができた」が、それも途中までで「バーチャル楽器のセッション中にPCがトラブルを起こし、画面が消えてしまった。それまで安心していただけに、画面がなくなったときの動揺は大きかった」といい、機器の信頼性を高めるとともに、当面は万一の故障を考慮しておくことも、現実的には運用上のポイントとなりそうだ。

    チームつかもとの展示ブースは大手メーカーに比べれば小さなものだったが、4日間の期間中見学者が絶えることはなく、予想を上回る大盛況だったという。今回のような展示会に出展することでPCメーカーとも直接接触を持つことができたが、各社からかなり好意的な反応を得られているといい、研究だけでなくビジネスとして立ち上げることが目標のチームつかもととしては、意義の大きい出展になったという。

    なんとか無事にステージも大団円。今後はウェアラブルを利用したどんな楽しさを見せてくれるのか
    そろそろオプション品としてウェアラブルグッズが登場しても良いのではないだろうか

    「ウェアラブルビジョン」は、長時間PCが人体に触れていても火傷などをしないようにクラレが開発した新素材を採用し、人体側の温度が42℃を超えないようになっている。企業導入にあたっては万一の場合の保障が問題になる場合も多く、ウェアラブルをビジネスとして成立させるためにはこういった点も考慮する必要があるという

    塚本氏は、今後もデバイスやシステムの開発と並行してPR活動にも力を入れていくとしている。中でも現在はファッションの分野に注力しているという。ファッション性を追求することで、また新たなコンピューターの利用スタイルが生まれる可能性に期待したいと述べている。

    (日高彰)

    WPC EXPO 2003レポート
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/special/2003/09/17/02.html

    真夏の炎天下、ウェアラブルPCも8時間を「完走」した今年の鈴鹿8耐
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/08/07/17.html

    チームつかもと
    http://www.teamtsukamoto.com/

    WPC EXPO 2003
    http://arena.nikkeibp.co.jp/expo/2003/

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