【レポート】未来のインタフェースの鍵はEmotionalなデザイン - ドナルド・ノーマン氏

ニュース
トップ

【レポート】未来のインタフェースの鍵はEmotionalなデザイン - ドナルド・ノーマン氏

  [2003/09/01]
ドナルド・ノーマン博士

8月21日、MIT、ペンシルバニア大学を経て、ハーバード大学、カリフォルニア大学で教鞭を執り、Apple、HPに在籍し、インタフェース研究で絶大な影響力をもつドナルド・ノーマン博士が来日、ヒューマンインタフェース学会の主催で、「Emotional Design」と題した講演会を行った。

○Emotionalなデザイン

現在のパーソナル・コンピュータを含む電子機器が、全体としてあまりにも使いにくいものである、ということは、いまさらことさらに言い立てる必要もないくらい自明のこととなっている。そうした中、これから電子機器をデザインしていく上で重要だと、ノーマン博士が主張するコンセプトが、今回の「Emotion」である。

Emotion、すなわち情動。

情動は強力で豊穣なものだ。その豊穣さがもたらす質感、多彩な表現力、価値観、そういうものを電子機器にも取り込むことができたら、それがEmotionalなデザインになるのだろう。


微笑みながらカシオのEXILIMを使う女性。ユーザーを微笑ませることのできる商品のもつ力は、すごい

ノーマン博士は、カシオのEXILIMを手にしている女性の写真を例にして話を続ける。その女性が、手にしたカメラを見て微笑んでいる。このような笑顔をもたらす製品作りこそ、次世代の製品作りだという。

○Emotionの3つのレベル

Emotionを感じる脳には、3つのレベルがあり、それぞれのレベルに応じたデザインのテーマがある。具体的には、生物学的な段階(本能的)、中間的な段階(行動的、機能的)、内省的な段階(魅力的)である。このうち、今後のデザインで重要になるのは、内省的なデザインであり、そのポイントは創造的で魅力的であること、とする。

例えば日本庭園などではポジティブなEmotionが刺激され、周囲に対して敏感になり、創造的になりうる。一方、東京の雑踏のなかなどは、ストレスフルでネガティブなEmotionがあふれてくる。


Emotional Designの3段階
Emotional Designと、その代表例として取り上げられたアレッシーのジューサー

内省的なデザインといっても、それは本能的なデザインや行動的なデザインと重複していることもあるし、相反することもある。たとえばスカイダイビングやジェットコースターは、本能的には恐怖をもたらすが、内省的には楽しめるものである。重要なのは、ユーモアのセンスを重要視することだという。たとえば、Googleの検索結果がGoooooooooogleとなっていたり、ロゴが変わったりするような表現である。

○機能よりも内省的なデザインが重要

ノーマン博士は、イタリアのアレッシー(ALESSI)のデザインにたいへん注目しているのだという。そして、浅草のランドマークとなったアサヒビールの「フラムドール」を設計したフィリップ・スタルク(Philippe Starck)氏のデザインによる24金メッキ製のジューサー「JUICY SALIF GOLD Limited Edition」(9,999個限定:2000年)を購入したのだが、じつはこれはジューサーとしては利用できず、説明書にもそう書いてあるという。理由は簡単。錆びてしまうのだ。

使えないのだから、機能的なデザインとしては、評価しえない。しかし、ノーマン博士に言わせると「金製であり、ジューサーとしては使えない」ことは、会話のきっかけを作ることができ、そのためにデザインされていると考えれば、内省的なデザインなのだそうだ。ソニーのAIBOも同じように、機能よりもエンターテインメント性を重視して作られているという。

工業製品の中には「うまく動くことよりも、うまく壊れるもののほうが好まれることがある」のだと指摘するが、はたして商品がきちんと動かないで、会話のネタになるだけでよいのだろうか、という疑問が強く頭をもたげてきた。動かない機械を見ても、筆者はあまり楽しくならないのだが。

笑顔をもたらすEmotionalデザインはすばらしいが、どうしようもなく動かないことでかえって愛着をもたらすことがある、という話は、筆者には承服しがたいところがあった。「ジューサーとして使用できないジューサー」があって、それでほんとうにいいのか? それはジューサーのイミテーションではあっても、ジューサーではないように、筆者には思えてならないのだが……。

○成熟のための時間のない電子機器

機械なら、動くことのほうが重要なのではないか。機能的なことが満たされた上ではじめて内省的な話をすべきではないのか。この点を質問すると「もちろん機械はちゃんと動くべきだと思うが、コンピュータに代表される電子機器の質が低いのは、消費者にも責任がある」とノーマン博士。「今のようにひんぱんにデザインが変更されたり毎年バージョンアップしたりすると、成熟するための時間が十分にとれない。ものがよくなるチャンスがなく、ちゃんとやる時間もない。その結果、壊れやすいものばかりになるのではないか」というのである。消費者が性急に新製品を求める点も問題だ、と言いたいのだろう。

むろん、「本能的で直感的」などというデザインが存在しないことは、インタフェースを少しでもかじってみれば、すぐにわかることではある。人間やインタフェースは、驚くほど複雑なので、一刀両断にあっさりと結論を出すことは、たいへん危険なのである。

例えば「鉛筆のように直感的」などということがあるが、人が鉛筆をもつために、幼い時からどれだけのエネルギーを費やし、時間をかけて学んだかを考えれば、鉛筆が直感的なインタフェースをもっている、などと、単純に言い切ることはできないのである。

会話が弾むのがいいデザインなのだとすれば、現在のGUIでもよいデザインといえる。なんか違うようにも思えて、インタフェースについて考える宿題をもらったような気がした。

今回の講演は、来年発売される書籍「Emotional Design」の前段的なものであり、その書籍を読むことによって、もっと考えを深めていく必要があるのだろう。たいへん刺激的な講演だった。

(美崎薫)

【レポート】ヒューマンインタフェース最前線(1) - メディアアートとインタフェース
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/07/30/09.html

【レポート】タクトをふるって実現する未来のインタフェース - CSLオープンハウス(1)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/06/16/10.html

【レポート】Beyond Being Digital -ニコラス・ネグロポンテ-(1)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2001/11/13/05.html

Don Norman's jnd.org
http://www.jnd.org/

マイナビニュースのセミナー情報

オススメ記事

マイナビニュースの集合特集

新着記事

転職ノウハウ

あなたの仕事適性診断
あなたの仕事適性診断

4つの診断で、自分の適性を見つめなおそう!

Heroes File ~挑戦者たち~
Heroes File ~挑戦者たち~

働くこと・挑戦し続けることへの思いを綴ったインタビュー

はじめての転職診断
はじめての転職診断

あなたにピッタリのアドバイスを読むことができます。

転職Q&A
転職Q&A

転職に必要な情報が収集できます

ドS美人面接官 vs モテたいエンジニア
ドS美人面接官 vs モテたいエンジニア

入室しようとしたら、マサカリ投げられちゃいました!?

特別企画

一覧

    人気記事

    一覧

    イチオシ記事

    新着記事

    【レポート】日本初上陸「pinkberry」のフローズンヨーグルトが爽やかでうますぎた!
    [00:27 7/26] ライフ
    温度湿度CO2が同時に1台で計測可能な「GMW90シリーズ」
    [00:00 7/26] エンタープライズ
    【コラム】Windows 8.1ミニTips 第48回 「ネットワークと共有センター」を活用する●つの方法 - ネットワーク名の変更など
    [00:00 7/26] パソコン
    【コラム】理系のための恋愛論 第527回 女の子を夏のイベントに誘うとき気をつけたいこと
    [00:00 7/26] 恋愛・結婚
    【レポート】SNSは会社の味方? 敵? - 社員の生産性向上に繋げるSNS活用法
    [23:54 7/25] エンタープライズ

    特別企画

    一覧

      求人情報