○ピュア・オーディオを志向した本格的PCシャーシ登場
CDに記録されたデジタルデータを、可能な限り完全な形で出力するハードディスクトランスポート。究極のデジタルオーディオ機器ともいえる「PCM-S1」。その正体は、高音質と優れた静粛性を実現できる異例なPC用シャーシだった。
オーディオの魂が息づくPCともいえるPCM-S1の実力を検証するため、PCM-S1(イケオンスペシャル)の試聴会へ取材を行った。PCの音は果たしてCDプレーヤーの音を超えるのか? その答えがここにある。
○1,000万円近いオーディオ機器とPCによる音楽再生 ~PC再生はここまで高音質で再現できる!
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| 試聴会のようす。使用する機材は合計1000万円近い |
PCM-S1は、一見するとオーディオ機器そのもので、PCとは無縁のデザインだ。しかし、PCM-S1はATX規格のファンレス電源と、865GチップセットのマイクロATXマザーボードを搭載するWindows PC用のシャーシだ(外部電源化するとATXマザーも搭載可能)。CD/DVDドライブ(DVD±R/RWドライブはリコー「MP5240A」もしくはソニー「DRU-510A」の搭載を推奨)を1基、ハードディスクは3.5インチドライブを2基搭載可能。これだけで判断するならば一般的なPC用筐体だ。
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試聴したPCM-S1(イケオンスペシャル)は、ピュア・オーディオ機器として「ハードディスク・トランスポート」と呼ばれる。このあたりにも、オーディオマニア心をくすぐるこだわりを感じさせる。PCM-S1では、音楽CDのリッピングを最初に行い、ハードディスク上のデータからオーディオ再生をするが、音楽CDのリッピングには「B's Recorder GOLD7」、WAVEファイルの再生にはオーディオ波形編集ソフト「Cool Edit Pro 2.1」が使用されていた。もちろん信号出力はデジタルのままDCD-S1のデジタル入力に接続されている。長江さんによれば、ノイズの無いWAVEデータを抽出するには、買ったばかりの傷が付く前のCDをリッピングすることが理想的だが、CD再生時の音質劣化原因は、じつはディスク自体のキズや劣化によるデータの欠落が原因ではなく、ポリカーボネート盤を回転させてピットとランドを読み出す時のジッターが原因なのだという。
さっそく、その音の実力を聴いてみた。マーラーの交響曲、バッハのトッカータとフーガのパイプオルガン演奏などを聴いたが、その空間表現の見事さにまず驚かされる。オーケストラの楽器の配置は、指揮者を中心に扇状に楽器が配置されているわけだが、手前側にいるバイオリンと後方にいるティンパニーの配置関係が手に取るようにわかる。この奥行き感と高さ方向の表現は並々ならぬものがある。まさしく立体的な音の再現だ。実際、比較としてDCD-S1を使ったCDプレーヤー再生では、その立体感は薄れ、平面上に各楽器が配置されるように感じた。念のために言っておくと、チューンナップされたDCD-S1を含め、前述の高価かつその音の表現力では定評のあるアンプ、スピーカーによる音は、すでに相当なレベルにある。
こうした空間的な音の表現は、オーディオでも最先端のもので、一般的にはスーパーオーディオCDやDVDオーディオのマルチチャンネル、映画のサラウンド再生などで再現されるレベルのもの。たった2チャンネルのステレオ装置から、これだけ立体的な音の再現を聴くことができるのは、驚くべきことだ。いわゆる空間の再現に優れた音楽の再生は、まさしく現場にいるような臨場感をともなう。目を閉じれば、そこにオーケストラが存在するかのような生々しさを感じることができる。また、20畳に満たない試聴室が、広々としたコンサートホールの空間へと変貌する様子はなかなかできない経験だと思う。
○PCのオーディオクオリティーは極めて高い ~優れたシャーシとパーツの選別で高音質を実現
その秘密は、ジッター低減による混変調歪みの低減だ。デジタル符号は0と1から構成され、標本化間隔は水晶発振器の精度によるため、理論上信号の欠落や時間軸のゆらぎが無ければ音質は変化しない。だが、ピックアップからピット・ランドにレーザー光が照射され、0と1を読み出す場合にはピックアップ位置制御のためのサーボ電流が水晶発振回路のグランドに流れ込む。当然、グランド電位の乱れは発振波形を汚し波形が乱れ、結果的に時間軸の揺れ(ジッター)が発生する。この基準クロックのジッターを軽減することは、現代のデジタルオーディオにおける最大の課題といってもいい。
では、PCM-S1では一体どんなことが行われているのか? デジタルオーディオ機器では、さまざまなジッター吸収のための技術が採用されているのだが、そういった点での対策は特に行われていない。あえていえばハードディスクドライブのリジッドマウントや、各社サウンドカードのジッターを計測している程度だという。つまり、良く考えられたPCによるWAVEファイル再生は、それ自体がきわめてジッターが少ないという事実だ。
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じつは、ジッターには機器内部で発生するジッターと、送信時に発生するジッターがある。試聴会では、同軸ケーブル1本を用いる一般的なデジタル伝送方式だったが、この方式では、D/A変換ユニット回路内のPLLによってクロックが抽出されるので、送信ジッター面では不利だ。しかし、試聴会で試聴したPCM-S1の場合には、内部ジッターそのものが低いので、音質面で有利だったということだ。実際、世界でも最高レベルのCDトランスポートと比較しても、そのジッターは1ケタ近く低い結果が計測されているという。PCパーツの選定によって、PCで最高級クラスのデジタルオーディオ機器に比肩しうる再生が可能だったことは、驚くべき事実だった。
(鳥居一豊)
【レポート】PCが最高級オーディオと肩を並べて高音質再生を行った! - デノンPCM-S1(2)
へ続きます
【特集】PCで楽しむ高画質・高音質の世界 ~AVに最適なPCを自作する~
PCM-S1(イケオンスペシャル)
デノン
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