【レポート】ヒューマンインタフェース最前線(1) - メディアアートとインタフェース

  [2003/07/30]

メディア・アーティストで独立行政法人産業技術総合研究所の江渡浩一郎氏
2003年7月10~11日、岐阜県大垣市のソフトピアにおいて"マルチモーダルインタフェース"と"ウェアラブルは流行るか"のふたつをテーマにした「情報処理学会ヒューマンインタフェース研究会」と「HIP8(Human Interface Professional Vol.8)」が開催された。多数の議論が交わされ、最新の研究成果が発表された。

招待講演は、国内から2件。ひとつめは、産業技術総合研究所研究員の江渡浩一郎氏による「ネットワークとアート」であった。江渡氏は、ちょうど2年前の2001年7月にオープンした日本科学未来館において人気No.1となった館内展示である「インターネット物理モデル」を作成・展示したことで知られるメディア・アートの旗手である。


江渡浩一郎氏の作品の数々
インターネットの仕組みを目に見えるようにした「インターネット物理モデル」。お台場の日本科学未来館で見ることができる

「インターネット物理モデル」では、8個の球を並べてメッセージを作り、パケットにわけて送ることができる
8個の球が、こんな風に届く。球ひとつが1パケットに相当する

またあるときは、岩井俊雄氏、坂本龍一氏と共同で「RemotePiano」(1997年)をコラボレーション。ステージ上の自動演奏ピアノをインターネットにつないで外部から音のデータをとり入れ、坂本氏と人びとがインターネットを介して演奏するパフォーマンスをした。音は光に、光は音に変換される実験的なコンサートでもある。

岩井俊雄氏、坂本龍一氏とコラボレーションした「RemotePiano」
「RemotePiano」。ピアノからは音を光に変換した光が飛び出す

音と光をミックスし混乱させると、聴衆はメディアミックスでリッチな体験を得ることができる。文字に音や色を見る「共感覚」と呼ばれる不思議な感覚の持ち主は、自らが共感覚者でもあるパトリシア・リン・ダフィー氏によれば、成人では2000人にひとりの割合で存在するというが、メディアミックスの環境では、だれもが乳児の時にそうだったこの共感覚を体験できる。ライブが理性よりも、感性に訴えてくる理由のひとつは、このメディアミックス的な感覚刺激によるものなのかもしれない。

「RemotePiano」では、外部のユーザーはWebブラウザから8音ごとに音を入力し送信する。送信した音は、いっせいに会場の自動演奏ピアノ上に再現され演奏されるのだ。膨大な入力が同時に入るため、単なる騒音にしか聞こえないだろうと考えるのは早計。実際には音は8音ずつ入力され、きちんと1音ごとに区切って演奏されるため、リズムをもったなんともいえない複雑な音のうねりが聞こえてくる。メロディというにはやや辛いが、無秩序な騒音ではない。「8音ずつの入力でくり返し同じフレーズを入力する人がいたため、耳のよい人にはそのメロディが聞こえたのでしょう」と江渡氏は説明する。

参加者はブラウザを使って音を入力する
【動画】「RemotePiano」の模様(WMV8 22秒 424KB)

「RemotePiano」を含むコラボレーションパフォーマンスは、アルス・エレクトロニカ賞のインタラクティブ・アート部門で、グランプリを受賞した。アルス・エレクトロニカ賞は「トイ・ストーリー」のジョン・ラセター監督が受賞するなど、メディア・アートの分野でもっとも権威の高い賞である。

音楽関係では、ロボットを使った「SoundCreatures」(1999年)も制作した。これは、自律的に動く音楽演奏ロボットが空間上を漂い続け、他のロボットと接触すると、音楽フレーズを交換しあうものである。音楽フレーズを交換するさまは、まるで生物どうしが会話しているようなイメージを彷彿とさせ、全体としての音楽はゆるやかに変化し続けていく。

最近、人間の心は、脳のなかにあるのではなく、他者との関係にあるのではないか、という説が出てきているが、ロボットと人との間のインタフェースを考えると、心の問題に複雑な視点が見えてくるのを感じる。つまりは感情移入してしまうということだ。ロボットが人型に近ければ近いほど、相手を人だと感じ、あるいは相手に心があると感じるようになるのである。この「SoundCreatures」も、アルス・エレクトロニカ賞を受賞した。

ロボットを使った「SoundCreatures」
「SoundCreatures」の受賞履歴

Webブラウジングの軌跡を世界地図上に視覚化する「WebHopper」
またあるときは、Webブラウジングの軌跡を世界地図上に視覚化する「WebHopper」(1997年)を制作し、アルス・エレクトロニカ賞のグランプリを受賞した。インターネットとWebは時間と場所を超えられることが利用者にとっての最大の魅力だが、その場所をもう一度地図上にマッピングすることで、仮想的なWeb空間に、リアルな現実の手がかりである「いま・ここ」の感覚をよみがえらせることができるのである。

リンクをたどっていくときに、世界の中でいまどこにいるのかがわかるのは、たいへん興味深い体験である。

江渡氏は現在も、コンピュータやネットワークを用いることによって、人と人との間のコミュニケーションをいかにより良いものにしていくことができるかをテーマに、研究を続けているという。

【レポート】ヒューマンインタフェース最前線(2) - 死角のないカメラシステム
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/07/30/10.html
へ続きます

(美崎薫)

情報処理学会レポート
http://pcweb.mycom.co.jp/news/special/2003/03/27/01.html

情報処理学会 ヒューマンインタフェース研究会
http://www.ipsj.or.jp/sig/hi/

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