NECら、量子暗号で世界最長100kmの伝送に成功 - 実用化に向け前進

      [2003/07/04]

    NECと通信・放送機構(TAO)は、物理法則によって盗聴が不可能とされる量子暗号システムにおいて、既存の光ファイバと同性能のものを用い、単一光子伝送で100kmという伝送距離を実現した、と発表した。従来、世界最長は三菱電機の87kmだった。

    実験では、NECと科学技術振興事業団(JST)が昨年共同開発した雑音キャンセル回路を備えた低雑音光子受信器と、NECとTAOが開発したスペクトル波のよけいな部分を取り除き、光子を検知しやすくするフィルタを組み合わせた受信システムを採用。伝送には、既存の光ファイバ網で使用されているものと同じ損失・散乱特性を持つファイバを使用した。

    光学系を制御することにより、送信者において符号化を、受信者において復号化を行ない単一光子を伝送する。その距離が100kmに到達した。光ファイバは既存ファイバレベルのものを利用
    図・画像はNEC提供(以下同)

    実験に用いられたシステム

    量子暗号は、1個の光子に1ビットの情報を載せて伝送。たった1個の光子を検出する非常に高感度の受信器が必要で、受信器の感度が伝送距離に大きく影響するとされていた。

    今回の受信システムでは、信号対雑音比を従来と比べて50倍に改善。光子が存在しないのに誤検出したり、逆に存在を検知できないというような受信器の誤りをほぼなくした、とのことで、伝送距離が影響を受けないレベルまで受信器の性能を向上させた。

    伝送距離を伸ばすためには、光ファイバ内で光が散乱して精度が落ちることも考慮しなければならないが、今回の実験では、既存ファイバレベルの0.25dB/kmのもので、100km強という伝送距離を実現した。伝送速度は7bpsだった。

    受信システムが距離の制限とならないことから、光ファイバを低損失のもの(0.20dB/km)に変更すれば125kmの伝送が可能で、さらに0.17dB/kmの低損失ファイバを利用すれば、理論的には140~150kmまで距離を伸ばすことができる。さらにその他の技術を組み合わせることで、現在の技術でも200km程度まで伝送距離を延長することも可能だという。

    今回の実験(赤の実線)では100kmでファイバの散乱光リミットに到達。低損失ファイバ(赤の点線)を利用すると、125kmまで延長できる。今回用いた受信器はファイバ散乱光リミットを超えている(青の点線)ため、距離の制約にはならないことが示されている

    都市をカバーするような都市内光ネットワークには一般的に100km程度の伝送距離が必要とされており、今回、同社はそれを達成したことになる。今後は中継技術の精度向上などを図り、1~2年以内を目処に実用化を目指す。伝送距離を十分に得ることができるようになったことから、盗聴が不可能な安全性の高い光ファイバネットワークの実現がさらに1歩近づいた、といえるだろう。

    JSTとNTT、単一光子光源を用いた量子暗号の伝送実験に成功
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/12/20/08.html

    絶対盗聴不可能、三菱の量子暗号通信システムが87kmの長距離通信に成功
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/11/14/07.html

    NEC
    http://www.nec.co.jp/

    通信・放送機構
    http://www.shiba.tao.go.jp/

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