【レポート】SARSと中国 - インターネットという視点から(1)

 

中国にとって、インターネットは相変わらず「諸刃の剣」である。奇しくもこの春、香港よりはじまり、世界を震撼させるに至ったSARS(重症急性呼吸器症候群)が、その巨大な意義をわれわれに示してくれた。

中国におけるSARSは、昨年暮れから明らかな兆候を示していた。南方の広東省で「悪性の流感が猛威」、そして、「予防効果があるとのことで酢が品切れ状態」であるといった報道が新聞紙上に載るようになっていたからである。

しかし、政治上、あるいは経済上の配慮からか、中国当局の初動はきわめて鈍かった。東アジアの交通ハブである香港で、当局は3月中旬には早くも「謎の肺炎感染者数が100人を突破」(日本経済新聞3月19日付)していたにもかかわらず、この報道の2日後には、「広東省内では2月15日以降、新事例はみつかっていない」(同3月21日付)などとしていた。

さすがに4月に入ると、中国当局も俄然顔色を変え始める。ウォールストリート・ジャーナル紙が「中国を隔離せよ」と、中国当局の情報隠蔽を手厳しく批判。ほぼ同時に、危機管理意識の高いアメリカ企業が続々と香港のオペレーション拠点を閉鎖し始める。

その後の動きは、すでに周知のところである。世界保健機関(WHO)が、香港ならびに広東省への渡航延期勧告を出す。世界の耳目が中国華南に集中する。ところが、中国の官製メディア -現在の中国では、あらゆるマス・メディアは「官製」である- は、なおも一斉に(中国は)SARSを効果的に抑制している、と報道していた。時の衛生部長(大臣)は張文康氏。ほどなく彼は解任されることになる。

SARSは、中国当局の必死の「安全宣言」をあざ笑うかのように、やがて首都北京を覆いつくすことになる。中国衛生部が北京市内の感染者数を従来発表の9倍に修正して発表したのは、「安全宣言」の舌の根も乾かない4月20日のことである。

市場経済体制が本格化すればするほど、中国でも<ヒトの移動>が活性化する。より豊かな地域へ、より豊かな都市へ、さらにはより豊かな国家へと向かうボーダーレスな流れが強まっていく。これは必然だ。

ところが、中国は、成長至上主義でひたすら突っ走る巨大な発展途上国である。ちょうどわれわれ日本人が70年代に通ってきた道を走っている。儲け第一、成長第一。庶民の生活環境など二の次、三の次だ。とくに、都市化がここ10年程度の間に急速に進み、おまけに農村からの出稼ぎ労働者を働き手と頼まざるを得ない広東省珠江デルタの諸都市で、この感染症が深刻化したのはまんざら偶然とは言えないような気がする。

つぎに中国当局がSARS蔓延の初期段階で、なぜそこまで情報隠蔽をおこなったかということであるが、これは、ひとえに、現代中国には未だ独立自立した報道機関が存在しない、さらには真の言論の自由が保証されていないということに尽きる。

私が中国におけるマス・メディアの自律性を批判すると、一部から少なからぬ反論が出るかもしれない。反論の根拠としては、たとえば、最近の中国ジャーナリズムが官吏の汚職であるとか、公安職員の暴力であるとか、違法な「童工(児童労働者)」雇用といった中国社会の暗黒面を多々描くようになっているではないか、「焦点訪談」(CCTV)のような本格的な報道番組も作られるようになったではないかといったところであろうと思う。

そうした意見にも、たしかに一理ある。現代中国が一歩一歩民主化・自由化への道程を進んでいることを、私はなんら否定するものではない。ただし、そうした前進を認めつつもなお、わたしは現状の中国ジャーナリズムが、真の意味合いでの「ジャーナリズム」とは似ても似つかないものであると評価せざるをえない。

その最大の理由は、中国の政治社会体制の在りようそのものである。

あらゆる報道を中国共産党が一元的に統制する現在の体制下では、メディアに重大な社会事象を独自に、かつ自由に追う権限などありようもないからだ。三面記事的な庶民情報はともかく、共産党の内部汚職や、対外的なイメージを大きく傷つける可能性がある今回のSARSのような問題を、メディアが独自に追いかける、報道するということは、残念ながら未だおよそ考えられないことなのである。

当然のことだが、新聞、テレビ、ラジオといった従来型マス・メディアは、今回のSARS問題で当局の情報隠蔽を暴く機能をほとんど持ち得なかった。ところが、インターネットが、その「竹のカーテン」を軽々と突き破っていたのだ。

(薄田雅人)

【レポート】SARSと中国-インターネットという視点から(2)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/06/17/10.html
に続きます

COMPUTEX TAIPEI 2003の新しい会期が発表に - 9月に開催予定
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/05/29/20.html

【レポート】台湾のSARSの状況について - 日常生活はいつも通りながらも漂う緊張感
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/05/26/07.html

SARSの影響は中国PC市場にも - 台湾調査会社調べ
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/05/21/10.html



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