【レポート】日本認知科学会特別講演 「将棋と認知科学」(1)

 

6月6日~8日の3日間、電気通信大学において日本認知科学会・第20回大会が開催された。今回の大会において目玉となったのが、日本の人工知能研究の第一人者である、はこだて未来大学 松原仁教授と、将棋界の第一人者としておなじみ羽生善治四冠王(名人・竜王・王座・王将)の両名による特別記念講演「将棋と認知科学」。内容は羽生氏の対局中における思考方法の話からコンピュータ将棋の現状に至るまで多岐に渡り、羽生氏の強さの一端がうかがえるエピソードも多数飛び出した。

○全ての可能性を全部先読みするのは無理

まず講演の冒頭では、松原氏からコンピュータによる解析対象として将棋を捉えた場合の問題点等に関して説明が行われた。

一般に広く知られているように、チェスや囲碁は終盤にかけて指せる手数が少なくなるのに対し、将棋は取った相手の駒を自分の駒として利用できるために終盤になればなるほど指せる手数が増えるという特性がある。そのため初手から終局までに指される可能性のある手数を数えるのは非常に難しく、松原氏も「正直なところ、どの程度のパターン数があるのか正確なところはわからない」のだという。

今回の講演では将棋のパターン数について10の220乗という数字が示されたが、これにしても過去のプロの対局における棋譜を解析した結果、1手ごとにだいたい80個ぐらいの選択肢があり、1局あたりの平均手数が約115手であるというところから出てきた数字だということで、理論的にあり得る選択肢となると、これをはるかに上回ることになる。とはいえ10の220乗という数自体非常に膨大な数であるため、「理論上、将棋にも必勝法は存在するはずだが、とてもこの数を全て解析して必勝法を探すなんてことは半永久的に無理」と松原氏は述べた。

また松原氏は、将棋において「金や銀といった駒の存在がチェス等に比べて局面の評価を難しくしている」と指摘した。チェスの場合は駒が1個動くたびに局面が大きく動くケースが多く、数値による局面の有利・不利の評価がやりやすいのに対し、将棋では金や銀を1手動かした程度では形勢にはほとんど変化がないことが多く、数値による評価が難しいのだとか。特に序盤の駒組みの段階では局面の有利・不利の差がほとんどつかないために数値による評価が困難であり、このことが「(コンピュータ将棋は)終盤、特に詰め将棋的な段階になるとプロ棋士以上に強いのに、序盤の終わりあたり(定跡が通用しなくなるあたり)は非常にもろい」という特徴につながっていると述べた。

○将棋は「マイナスになる手の方がはるかに多い」ゲーム

 羽生四冠王(左)と松原教授

以上の説明の上で、今度は松原氏が羽生氏に質問するという形で対談が進められた。まずは羽生氏がどのようにして次に指すべき手を読んでいるかという話題で、羽生氏が語ったのが「将棋とは、プラスになる手よりもマイナスになる手の方が圧倒的に多いゲームである」という話。

例えば、対局している双方が共に駒組みを完成した状態というのは、お互いにとってある意味「ベストな状態」であり、そこから手を指すということは自分のベストな状態を崩すことになってしまうほか、それ以外にも実際の対局中では「どの手を指しても現状より悪くなる」ということで指す手に困ることが結構多い、と羽生氏は語った。そのため「自分から攻撃する方が難しいし、攻撃に失敗したときのダメージも大きくなるので、先に相手に仕掛けさせてそれを受ける形にした方が指すのは楽」であることから、特に序盤戦では自分が有利になるように指すというよりは、むしろ相手が仕掛けてきた際にできるだけ対応できる可能性を広く保ち、動かせる駒をたくさん残すように気をつけることが多いのだそうだ。

 ゲームの種類別のパターン数

実際の対局中も、中盤戦以降になると最高で20手程度まで先を読むことがあるが、序盤戦は深く読みを入れてもあまり意味がないことが多いため、1手ごとに考えることが普通だという。ただ松原氏はこの意見に対し、「"マイナスになる手の方が圧倒的に多い"というが、一般人やコンピュータ将棋にはそれ(どの手がマイナスになるか)がわからない」と述べており、実際問題として羽生氏のこの感覚を一般人が真似するのは無理そうである。

(佐藤晃洋)

【レポート】日本認知科学会特別講演 「将棋と認知科学」(2)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/06/10/10.html
に続きます

【レポート】コンピュータ将棋選手権(1) - IS将棋(東大将棋)2年ぶりの栄冠
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/05/06/29.html

【インタビュー】コンピュータ将棋世界一、「激指」開発者インタビュー(1)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/05/17/26.html

日本認知科学会
http://www.jcss.gr.jp/



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