【レポート】空飛ぶ自動車「ミラクルビークル」(1) 空も飛べて道路も走れる工夫の数々

 

誰でも、一度は「自分で飛行機を操縦してみたい」と考えたことがあるだろう。それも自分の飛行機が持てたら…。自家用飛行機の盛んなアメリカならまだしも、国土の狭い日本では非現実的。しかし、そんな夢が簡単に実現する時代も、そんな遠い将来ではないかもしれない…。

その有力な候補といえるのが、岐阜県で開発が進められている「ミラクルビークル(MV)」。今年に入ってからも、「次世代カーとITホーム PartII」や「ROBODEX 2003」などのイベントにおいて縮小模型やパネルが展示されていたほか、昨年10月に丸ビルで開催された「After 5 years 近未来技術展」では、実物大模型の展示も行われていたので、これらを目にしたことがある方も多いかもしれない。

MV調査開発特別研究会の三橋会長とMV実物大模型。奥側の主翼は地上走行時の畳まれた状態
このMVは"空飛ぶ自動車"というだけあり、飛行することはもちろん、翼を折りたたんで一般道路の走行も可能という、空陸両用の乗り物だ。見た目はどちらかというと、"空飛ぶ自動車"というよりも、"道路も走れる飛行機"といった方が実態に近い。これが実現すれば、自宅から近所の滑走路(300m程度の規模)までは地上走行、そして滑走路に着いたらそのまま離陸するということが可能になる。全くの机上論ではなく、既に3分の1サイズの実証機の飛行実験にも成功しているというから期待も高い。

開発の中心となっているのは、同県のエンジニアリング系企業の集まりである岐阜県工業会。同会は、このMVの可能性と実現の見通しを研究することを目的として、平成9年10月に「MV調査開発特別研究会」を発足、機体の設計から評価、試作・実験などを行ってきたが、今回、同研究会で中心的な役割を担っている会長の三橋清通氏に直接会う機会を得ることができたので、本レポートではこのMVについて、紹介してみたい。

○MVの仕様概要

かかみがはら航空宇宙博物館。実機が多数展示されているだけあり、巨大な建物。それでも入らないYS-11などは屋外に展示されている
記者が訪ねたのは、MVの実物大模型が展示されている同県各務原市の「かかみがはら航空宇宙博物館」。博物館というと、一般的には歴史・記念的な展示品が室内に所狭しと並べられている印象があるが、同博物館にはSTOL実験機「飛鳥」や初の国産旅客機「YS-11」など、実機が豪快に展示されており、その数と大きさには圧倒される。その一角に、MVの実物大模型は展示されている。

MVの開発について、「なぜ岐阜で?」と訝しむ方も居られるだろうが、各務原市一帯は知る人ぞ知る、戦前から続く航空機産業の一大集積地。また、県内には実力のある企業も多く、昨年のロボカップでは、同工業会の「NAGARA」が見事ヒューマノイドリーグで総合優勝も果たしている。

前置きが長くなったが、まず、簡単にMVの仕様を紹介したい。全幅は6m、全長は4.45mで、離陸重量は450kg。もちろんそのままでは大きすぎて一般道路を走ることはできないが、地上走行時は翼を付け根付近で上側に折り曲げ、車幅を2mとすることで一般道路の走行に対応する。駆動系統はエンジンではなく直流モーターを採用し、電源は燃料電池とリチウムイオンバッテリのハイブリッド構成、連続して2~3時間の飛行が可能だ。速度は、巡航時が時速200km、また、地上での走行時は時速50kmとなる。

MVは1人乗りで、離陸重量の制限により、搭載可能な人間の重量は最大80kg程度。もっとも、コックピットの大きさから考えて、これ以上太っている人はそもそも乗れない気もするが、重量オーバーという人は今からダイエットした方がいいかもしれない。

○搭載する最新テクノロジの数々

MVの最大の特徴は、何と言っても「小型」であることだ。日本の狭い車道の走行を想定しているためだが、この小型化を実現するために、様々な工夫を施した。

これがその「ウィンググリッド」。小羽根が4枚使用されている
まず、翼幅の縮小に貢献するのが、翼端に取り付けられた「ウィンググリッド」。複数並んだ小型の羽が優雅に上空を滑空するトンビを想像させるが、このウィンググリッドは翼端で発生する乱流を減少させる効果があり、低速時の誘導抵抗の減少や、失速速度の低減が期待できるという。このウィンググリッドがない場合では、「翼幅は8~9mは必要になる」(三橋会長)とのことだ。また、機体全長を短縮するため、水平尾翼が主翼の前方に位置する「カナード翼」形式を採用している。

さらに、電動モーターの採用も、単に無公害、というだけでなく、機体の小型化に貢献している。MVの離陸時には60kWの出力が必要になるが、巡航時は20kWで十分だ。ガソリンエンジンの場合は最大出力にあわせた大きさのものを搭載する必要があるが、モーターの場合、短時間であれば電流を多く流し、定格以上のパワーを出すことができるので、より小型化に適しているという。実際に開発したモーターは、直径20cm、重量21kgで、定格出力40kWのところ、離陸時の5分間では60kWの出力が可能となっている。また、離陸時のバースト的な電力を得るために、燃料電池に加え、リチウムイオンバッテリを搭載している。

天然繊維複合材が使用されている側面。ちなみに、原料の紙は岐阜県の特産品
機体の軽量化には、紙の原料を使用した「天然繊維複合材」が貢献する。すでに、ポリエステル樹脂との複合材の開発を行っており、比強度120、引張応力158MPa、ヤング率5,000MPaという良好な成果を得ることができたという。実際に、実物大模型の側面の一部にはこの天然繊維複合材が使用されており、その感触も確かめることができた。

さらに特徴的なのが、搭載するナビゲーションシステムだ。そのコンセプトはまさに"飛行機版カーナビ"と言えるようなもので、GPS受信機を搭載し、地上走行時、飛行時のそれぞれのモードにおいて、地図データや速度・高度などの状況をグラフィカルに表示することができる。地上走行時には、通常のカーナビとほぼ同じような機能が利用でき、現在地周辺の地図の2D表示や鳥瞰表示が可能なほか、道路交通情報などもネットワーク経由で得ることができるようになるという。また、飛行時には、同様にGPSデータをもとにした2D表示・3D表示が可能だが、この3D表示では実際の山の起伏なども正確に計算されており、夜間や濃霧など、視界が悪い時にパイロットの操縦の補助となるだろう。そのほか、インターネットのWebブラウジングやメールなどの機能も搭載する。

フロントパネル周辺。大きな液晶ディスプレイが印象的
地上時の2D表示。機体の後部にカメラを設置し、モニターで確認できるようにもなっている
飛行時の3D表示。まさしくフライトシミュレータのよう
なかにはこんな画面も

また、安全性の面では、コックピット後部に緊急用パラシュートを搭載。ただし、これはパイロット用のものではなく、機体ごとぶら下げて地上に着地するためのもので、軽い機体を持つMVならではの特徴となっている。

(大塚実)

【レポート】空飛ぶ自動車「ミラクルビークル」(2) 決して平坦ではない開発の道のり
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/05/30/24.html
へ続きます

【ロボカップ2002レポート】最終日、各リーグ決勝戦開催(2) - 中型・ヒューマノイドで日本チームが優勝
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/06/25/20.html

岐阜県より2足歩行ロボット「ながら-1」が登場 - ロボカップ目指し産学官で
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/02/20/21.html

かかみがはら航空宇宙博物館
http://www.city.kakamigahara.gifu.jp/museum/

岐阜県工業会
http://www.industry-gifu.or.jp/



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