NHK放送技術研究所の「2003技研公開」2日目には、同研究所の研究成果に関する研究発表が行われ、今回展示されている開発物の一部について詳細な説明が行われた。中にはフレキシブル有機ELディスプレイや垂直記録型HDDなど、PCにも密接に関連してくる分野の発表もあり、会場はほぼ満員となる盛況ぶりだった。本稿ではその中から主な発表をいくつかピックアップしてご紹介する。
○ハイビジョンの高圧縮化は11Mbpsあたりが限界か
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大塚吉道氏
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最初にご紹介するのは、同研究所マルチメディアサービスグループの大塚吉道氏の発表。同氏は、地上デジタル放送で求められる高圧縮率のハイビジョン放送を実現する方法について研究成果を発表した。
元々地上デジタル放送では、エラー訂正に必要な情報量がBSデジタル放送に比べ多いという事情から、ハイビジョン放送に使える帯域幅が約15Mbpsと、BSデジタルの約22Mbpsに比べかなり少ない。またHDTVとSDTVを1つのチャンネルで同時放送するような状況では約11Mbpsまで帯域幅を落とすことが要求される。しかし現在の一般的なMPEG-2圧縮技術では、HDTVで15Mbps以下まで帯域幅を落とすとかなりブロックノイズが目立ってしまうという問題があり、各局はこの問題をどう解決するか頭を悩ませている。
実はHDTVを、現在MPEG-2の圧縮方法として放送局で使われているTM5(Test Model 5)方式で圧縮した場合、帯域幅を落としていくと画像の色情報などを伝達するDCT係数情報は減るものの、画像の動きを示す動きベクトル情報やそれ以外のヘッダ情報はほとんど減らず、これらのデータがDCT係数情報の帯域幅を圧迫することが画質低下の原因になっている。これに対し今回の研究では、このヘッダ情報や動きベクトル情報のデータ量を大きく削減することで、DCT係数情報に割り当てる帯域幅を一定量確保しつつ全体の帯域幅を減らし、低帯域幅でも十分な画質を確保することを狙ったとのこと。
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具体的には画像情報ヘッダの長さを極力短くできるパターンに圧縮法を決め打ちすることでヘッダのデータ量を削減したほか、DCT係数情報と過去の符号化結果をリアルタイムにエンコーダに学習させ、極力動きベクトル情報のデータ量が少なくなるような計算を自動的に選択させるなどの手法を取っている。この結果、新方式による圧縮ではTM5方式に比べ同一のビットレートでPSNR(Peak-Signal to Noise Ratio)が最高で4dB程度改善し、TM5方式の22Mbps(現行BSデジタル放送の方式)と同程度の画質を新方式の15Mbpsで得ることが可能になったという。
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ちなみにTBSなどは昨年の民放技術報告会での発表において、エンコーダバッファの容量を大きく取り、ある程度の画像情報を先読みすることで同様の結果を得る手法を発表しているが、大塚氏は今回「放送のリアルタイム性を考慮し、(先読みなどの)遅延が大きくなる手法を使うことは避けた」「遅延が大きくなってもいいというのであればまだ多少改善の余地はある」と述べており、遅延等の条件や技術が大きく変わらない限り、今回実験した11MbpsあたりがHDTV圧縮の限界ではないか、という見解を示した。
○4本のアンテナで地上デジタル放送を移動する車の中で受信
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土田健一氏
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続いてご紹介するのは、同研究所デジタルネットワークグループの土田健一氏の発表。同氏は、本来携帯端末向けではない、ハイビジョンによる地上デジタル放送を移動する車などの中で受信する試みについて発表を行った。
まず同氏はその前段階の基礎データとして、標準アンテナで地上デジタル放送の電波を受信した場合のエラー発生率に関して説明を行った。最初に名古屋で標準ダイポールアンテナを持ち歩いて電波を受信したところ、だいたい70~80dBuV/mを境に、それを上回ると全くエラーが発生しないのに対し、下回った場合にはエラーが出るという違いが出たという。また乗用車や新幹線での受信を行った場合も、変調方式がQPSKの場合にはかなり電界強度が低く、速度が速い場合でも正受信率(エラーなしにデータを受信できた率)が高いことが確認できたそうだ。
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そして問題の固定受信向け放送を移動する車で受信する方法だが、今回の実験では4本のアンテナを1m間隔で車に設置し、それぞれのアンテナから得られた信号を合成処理することで、受信レベルの変動が小さい安定した信号を得ることを狙ってた。結果は、正受信率90%(放送をほとんど途切れることなく受信できるレベル)を確保するのに必要な電界強度が、アンテナ1本の場合の65dBuV/mに比べ4本では48dBuV/mと大きく改善した。また放送を受信可能な移動速度についても、アンテナ1本では42km/h(UHF19chの場合)なのに対し4本では95km/h(同)と大きく改善している。
この結果を受けて、今回の発表では実際に同研究所の建物から試験電波を飛ばし、それを移動する車で受信した模様のデモが披露された。アンテナ1本のケースでは普通に車が走っているだけでも映像が頻繁に切れてしまうのに対し、4本のアンテナでは車がガード下をくぐっている間も映像が切れることなく放送が受信できており、その差は歴然としていた。
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これが実用化されれば、車の中でも気軽にハイビジョンによるテレビ放送を楽しめるようになるわけで、特にアウトドア派には非常に興味深い研究ではないだろうか。
【レポート】NHK技研公開 - PCユーザーにも興味深い研究発表が続々(2)
へ続きます
(佐藤晃洋)
【レポート】NHK技研公開 - 基盤整備は完了、新たな価値創造に全力を向ける地上波デジタル
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【レポート】NHK技研公開 - 24Gbpsストリームの映像やリアルタイム字幕作成システムなどが公開
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/05/28/20.html
通信と放送が融合した地上デジタル放送を携帯端末で - KDDIらが試作機開発
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NHK放送技術研究所
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