【レポート】コンピュータ将棋選手権(2) - IS将棋(東大将棋)2年ぶりの栄冠

○決勝はIS将棋とYSSの一騎打ちの様相に

5日の決勝では、事前予想ではやはり昨年の優勝ソフトである「激指」、そして過去3度の優勝を誇る「IS将棋(商品名:東大将棋)」の2チームが優勝候補の最右翼と見られていた。会場で配られていた東京農工大学・小谷善行教授による予想でも、優勝確率として「IS将棋41%、激指29%」といった数値が並んでおり、この2チームをいかに倒すかに会場の注目も集まっていた。

ところがふたを開けると、激指がいきなり初戦で、昨年秋の「第2回コンピュータ将棋王座決定戦」でもIS将棋と同点ながら優勝を飾っている強豪「YSS(商品名:AI将棋)」に負けを喫するまさかの出遅れ。その後も「ハイパー将棋9」と千日手で引き分け(大会規定により指し直しはなし)、「KCC将棋(商品名:銀星将棋)」に敗れる、と4勝2敗1分けで優勝争いから早々と脱落。一方でIS将棋は初戦から4連勝と好調で、同じく4連勝と波に乗るYSSと直接対決となった5戦目が事実上の優勝決定戦となった。

優勝したIS将棋チーム(棚瀬寧・後藤礼史・岸本章宏の3氏)

同局は、序盤から中盤にかけては後手のYSSが若干優位に立ち、解説を務めた日本将棋連盟・滝誠一郎七段から「やや不可解な駒組み」と評されたIS将棋が窮地に立つかと見られる局面もあったが、中盤以降はIS将棋の得意の粘りが炸裂し、滝七段をして「指し方がねちっこいを通り越してぬるぬるしている」と評した棋風で見事に逆転、終盤の寄せもきっちり決めてIS将棋が見事に5連勝を飾った。IS将棋は続く第6局でもKCC将棋を下して6連勝となり、最終局を待たずに優勝が決定。最終局では激指に一方的な将棋で敗れ全勝優勝はならなかったが、その強さを存分に見せ付けた。

2位には勝敗は同じく6勝1敗ながら大会規定(SB方式)による計算でYSSが入り、最終局でIS将棋を下した激指が3位と、この3チームが次回大会の決勝シード権を獲得。また優勝したIS将棋を開発した棚瀬寧・後藤礼史・岸本章宏の3氏には協賛の富士通からノートパソコンが、2位のYSS・山下宏氏には日本AMDからレザージャケットが副賞としてそれぞれ贈られたほか、初出場ながら決勝進出を果たした備後将棋の恩本明典氏には敢闘賞として日本AMDより粗品が贈られた。

2位のYSS・山下宏氏 
3位の激指チーム

ちなみに決勝当日はプロジェクタを使用した大盤解説が行われ、解説には前述の滝七段を始め、同じく日本将棋連盟から勝又清和五段、矢内理絵子女流三段、安食聡子女流初段が駆けつけ、これに静岡大学の教授でもある飯田弘之六段を加えた5人が軽妙なトークを披露し会場を沸かせた。プロジェクタには対局中の画面に加え、通常市販ソフトでは表示されないコンピュータ側の評価点数や読み筋(本来は作者がデバッグを行うために表示している)が表示され、中にはソフトの思考パターンや「どのぐらいの手数を一度に読んでいるのか」といったことが一目でわかるものもあり、来場者に好評だった。

○エキシビションマッチは見事IS将棋の勝利に

エキシビション対局を行う勝又五段(左)とIS将棋チーム

さて、今回の大会では決勝終了後表彰式までの時間を利用して、優勝したIS将棋と、解説のために来場した勝又清和五段によるエキシビション対局が行われた。対局条件は、さすがに平手で戦ってはまだまだコンピュータはプロには敵わないため、今回はプロが飛車・角の2枚落ちという条件。また持ち時間は双方25分切れ負けと、コンピュータ将棋選手権の対局と同じ持ち時間が採用された。果たして結果はどうだったのか。

対局終盤の様子。画面右に「詰将棋で詰んだ!」と出ておりIS将棋の勝利が確定した様子がわかる

対局は、序盤から勝又五段が「人間なら間違えるような指し方(同氏談)」で相手のミスを誘おうとしたが、IS将棋はその揺さぶりに負けず厳しい手を連発。勝又五段は「他のプログラマの方から『絶対負かしてほしい』と頼まれていたので…」ということで終盤粘りを見せるものの、最後はIS将棋がきっちりと寄せ切り、見事コンピュータが勝利を飾った。なお同対局の棋譜については、本大会の後援を務める情報処理学会・会場付調査役の湖東俊彦氏が閉会式で「学会誌で、松原(仁・公立はこだて未来大学教授)先生に分析してもらい論文とともに掲載したい」との意欲を語っていたので、うまくいけば今後公開される可能性もある。

この対局に限らず、本大会では決勝を解説するプロ棋士から「遊び駒がほとんどない」「以前なら明らかなミスがよく見られたものが、今回はそういったミスがほとんど見られなくなっている」といった声がよく聞かれ、コンピュータ将棋の強さにプロ棋士も驚きを隠せない様子が伺えた。ただ「人間だとある程度先入観が働くような局面でも、コンピュータは先入観がないだけに思いもかけない好手を指してくる」という声がある一方で、「コンピュータは局面を数値により評価するためどうしても駒得になるような手を選ぶ傾向が強く、逆に駒をたたく(相手にわざと歩を何枚も取らせて相手の陣形を崩す)ような手を指さない」などという鋭い指摘もあり、プロの目から見るとまだまだコンピュータには弱点も多いようだ。

閉会式で講評を述べる滝誠一郎七段

最後の講評では、滝七段から「今のコンピュータ将棋はアマ五段ぐらいの実力はあるのではないか」との声が聞かれたが、果たしてこれがアマではなく「プロ五段」の棋力に達する、あるいはそれを超えて「プロの名人を負かす」ようになる日が来るのか、またそれが可能だとしたらいつ実現するのか。いわゆる人工知能の観点からもコンピュータ将棋の研究は重要とされており、今後も本大会には注目が必要だろう。

(佐藤晃洋)

【レポート】コンピュータ将棋選手権(1) - IS将棋(東大将棋)2年ぶりの栄冠
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/05/06/29.html

【コラム】ハイテクウォーカー 第22回 執筆=佐藤晃洋 コンピュータ将棋選手権を振り返る
http://pcweb.mycom.co.jp/column/hitech/hitech022.html

日立、将棋を楽しみたい人すべてに贈る"将棋パソコン"「FLORA王将」を発売
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/08/06/07.html

【インタビュー】コンピュータ将棋世界一、「激指」開発者インタビュー(1)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/05/17/26.html

コンピュータ将棋協会
http://www.computer-shogi.org/



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