【情報処理学会レポート】ウェアラブルはファッションやコミュニケーションに革命を起こす(2)

      [2003/03/31]

    2001年に文化服装学院を退職し、情報とファッションが融合する「メディア・ファッション」の任意研究グループ「Cube-f」を設立した曽根美知江氏は、約6年前から、かっこいいウェアラブルコンピュータ・ファッションを提案できないかということで、メーカーや研究者などと2カ月に1回のペースでミーティングを行い、研究を重ねているという。

     「Cube-f」代表の曽根美知江氏デザインのメディア・ファッション

    曽根氏は、「元々、ファッションにはメディア的な性格がある」とし、ウェアラブルコンピュータとファッションのこれからの関わりについて、ファッションの中に、情報を発信していくツールとしてコンピュータを取り込んでいくのが、ひとつの自然な流れではないかと述べた。

    シースルーHMDはリュックサックの中のウェアラブルコンピュータ と接続されており、実空間にバーチャルデータを複合させて見ることができる

    胸元の有機ELディスプレイには、色々なコンテンツを表示できる。今後、イベントなどでの利用が見込まれる

    また、現在、コンピュータを取り込んだ洋服をデザインする際の最も大きなネックとなっているのが、重さの問題であるという。特にバッテリがもう少し小型・軽量になれば、デザインや縫製方法、服の素材などで解決できる問題はたくさんあるという。

    今回のパネルディスカッションでは、曽根氏がデザインした4種類のファッションも披露された。1つ目は、胸の部分に有機ELディスプレイをはめ込んだ男性用ベスト。ディスプレイは脱着可能で、例えば店舗のオープン記念イベントなど各種イベントでの利用が想定されるという。

    2つ目は、袖に部分に有機ELディスプレイをはめ込んだ女性用ジャケットで、映像を表示することが可能。今回、コンテンツはあらかじめROMに記録したものを表示させているが、受信アンテナをつければTVを見ることもできるという。GPS機能を付ければカーナビのような利用も可能。これら2つの有機ELディスプレイの開発はパイオニアが行っている。

    3つ目は、CCDカメラとシースルーHMDを装備したジャケットで、これはすでに、2005年に開催が予定されている愛知万博の建設予定地で、一般者へのデモンストレーションとして使われた実績を持つ。HMDを通して建設予定地を見ると、まだ建設されていないアトラクションなどをCGで見ることができるほか、搭載したCCDカメラを使って撮影を行なうことも可能だという。また、デモンストレーション時には、袖の部分に装着されている2つのボタンを使って、アトラクションに関するアンケートも実施された。HMDに表示された設問にボタンを押してYES/NOで回答すると、無線を使ってサーバに自動的に送信され、データが集計されるというしくみだ。

    回路とディスプレイはジャケットの中を通り有線で接続されてい る。アンテナやGPSを搭載すれば、TVを見ることや地図を表示し、現在地を確認することも可能。ここでは映像を予めROMに焼き、表示させている

    4つ目は、デイバックにコンピュータを搭載し、それと接続されたシースルーHMDを通して、屋外などで複合現実を見ることのできるというもの。例えば、屋外展示場などで、HMDを通して展示物を見ると、その展示物に関するデータなどがHMDに表示され、読むことができるというわけだ。

    CCDカメラとシースルーHMDを搭載したジャケット。腕にはボタンが 装備され、CCDカメラのシャッターとしても使うことができるほか、HMDに表示 された設問にボタンで回答し、それを自動的に無線でサーバに送信することも可能

    自由討論では、ウェアラブルコンピュータとファッションの融合や次世代ファッションについて、4人のパネリストたちが積極的に意見交換を行った。その中で、今後、考えられる次世代ファッションのひとつとして、現在、光ファイバーを糸として使って服を作るといったアイデアも検討されているという話も飛び出した。

    しかしながら、最新技術をファッションに取り入れるというのは、想像以上に困難で、商品として広く一般市場に投入していくためには、安定性や安全性がきちんと保障された技術であることが必須条件であるという。当然のことながら、すぐに壊れてしまう商品や人に害を及ぼす可能性のある商品を消費者に提供することはできないからだ。

    また、ウェアラブルコンピュータがインターネットに常時接続されることで、人間のアイデンティティの低下も懸念されるという。現在、人はリアルワールド(実生活)とサイバーワールド(バーチャル生活)を切り替えることで、アイデンティティを保っている部分が大きいと考えられる。しかし、ウェアラブルコンピュータがそのギャップを埋めることで、切り替えが難しくなる可能性が出てくる。そのため、「これまで以上に上手に、2つの世界を自ら住み分けていく必要があるだろう」(中津教授)としている。

    会場には、菱電商事が開発した両目で見ることができるシースルー HMDも。DVDプレーヤーと接続し映像を楽しむことができる。イヤホンも装備。 飛行機内など、長距離移動の際に活躍しそうだ

     

    (山田久美 k-yamada@pc.mycom.co.jp)

    【情報処理学会レポート】ウェアラブルはファッションやコミュニケーションに革命を起こす
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/03/31/09.html

    情報処理学会レポート
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/special/2003/03/27/01.html

    【レポート】融合しよりリアリティを高める仮想と現実 - 第17回ロボット工学セミナー
    http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/01/07/12.html

    情報処理学会
    http://www.ipsj.or.jp/

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